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歴史に刻まれた意志はいつでも、未来のために参照されるべきだろう。~エリカ・バドゥ出演MVも話題のマイルス×グラスパー『エヴリシングス・ビューティフル』(Album Review)

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 “俺の音楽をジャズと呼ぶな”。マイルス・デイヴィスの生誕90周年を記念し、さまざまな企画が発表されていたが、伝記映画『マイルス・アヘッド』のサウンドトラック盤(マイルスの表現の進化を駆け足で追いつつ他アーティストの新録曲も散りばめ、常に変化しようとしてきたマイルスの精神性を立体的に捉えた一枚だ)の中では、冒頭に挙げたマイルスの言葉が、音声として刻まれていた。

 そして、マイルス・デイヴィス&ロバート・グラスパー名義でリリースされたアルバム『エヴリシングス・ビューティフル』である。グラスパーは『マイルス・アヘッド』サントラを監修する立場でもあったが、本作では1991年に他界したマイルスとあたかもコラボレーションするかのように、米コロンビアに残された膨大なマイルスのマスター音源をリミックス、或いはリワークする形で、多くの仲間たちと共にマイルスをトリビュートしている。“すべてが美しい”という表題のフレーズは、マイルスがエレクトリック・ピアノに出会ったときの言葉であり、アルバムの冒頭「Talking Shit」の中のサンプリング音声として確認することができる。最も現代的かつポピュラーなピアニストの一人であるグラスパーが、マイルスの残したそんな言葉をピックアップするさまは、なんともドラマティックではないだろうか。

 “俺の音楽をジャズと呼ぶな”。そして“すべてが美しい”というふたつの言葉は、新しい表現スタイル、新しい楽器、新しいヴィジョンと、常に変革を求め続けてきた音楽家マイルス・デイヴィスの姿勢を、ふたつの異なる角度から映し出しているわけだ。『エヴリシングス・ビューティフル』序盤、ビラルがシルキーなヴォーカルを披露する「Ghetto Walkin’」は、『In A Silent Way』のボックスセット『The Complete In A Silent Way Sessions』に収められていた「The Ghetto Walkin’」をベースに、現代的なリズムトラックやエレクトリック・ピアノが加えられている。

 エリカ・バドゥやキングといったネオ・ソウルのシンガーたちや、J・ディラの実弟ラッパーであるイラ・J。そしてUKのローラ・マヴーラにオーストラリアのハイエイタス・カイヨーテと、ポスト・ヒップ・ホップ時代に活躍するアーティストたちが名を連ねている。『A Tribute to Jack Johnson』のようなファンク・ロック作や、ヒップ・ホップに接近した最終アルバム『Doo-Bop』など、いつでも時代に敏感だったマイルスの精神を汲み取った作風だ。ジョージア・アン・マルドロウが、自身のオリジナル作にまったく引けを取らない呪術的なグルーヴの中で歌声をリフレインさせる「Milestones」は強烈である。

 「I’m Leaving You」では、80年代カムバック後のマイルスを支えたギタリストのジョン・スコフィールドが参加しているのが面白い。そして極め付きは、最終トラック“Right On Brotha”に参加したスティーヴィー・ワンダー。雄弁にして華麗なブルースハープの演奏で、マイルスの心を汲み取っている。『エヴリシングス・ビューティフル』はマイルス・デイヴィスの史実ではなく、現代的な解釈の一つに過ぎないかも知れない。ただ、歴史に刻まれた意志はいつでも、未来のために参照されるべきだろう。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『エヴリシングス・ビューティフル』
2016/5/25 RELEASE
SICJ117 2,200円(tax out.)

◎公演情報
ビルボードライブ大阪
2016年7月20日(水)~7月21日(木)

ビルボードライブ東京
2016年7月25日(月)~7月27日(水)

詳細:http://www.billboard-live.com/

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