意思決定のスピードが劇的に上がる米軍式「OODAループ」とは?

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意思決定のスピードが劇的に上がる米軍式「OODAループ」とは?

『米軍式 人を動かすマネジメント』(日本経済新聞出版社刊)で提唱されている「OODAループ」について知っている人はあまり多くないだろう。

「OODAループ」はアメリカ空軍ジョン・ボイド氏が開発した意思決定プロセスで、観察(Observe)、方向付け(Orient)、決心(Decide)、実行(Act)の頭文字を取ったものである。周囲をよく観察し、方向性を決め、実行に移す。個人の意思決定のスピードを飛躍的に速め、組織の機動力を高めることを可能にするOODA。

コンサルタントで公認会計士の田中靖浩氏はこの「OODAループ」を、「PDCAサイクル」の限界を補うものとして紹介している。では、「PDCAサイクル」の限界と「OODAループ」の力とはどのようなものなのだろうか? お話をうかがった。

■不正会計や偽装を引き起こすPDCAサイクルの功罪

――PDCAサイクルが多くの企業で採用されている今、本書はマネジメント層にとって必読の内容だと思います。この本はPDCAを信じ込むことに対する警鐘から入っていますね。

田中:PDCAは分かりやすいモデルで、業務効率を上げるためにも非常に有効であることは事実ですが、やはり弱点や限界があります。

私は公認会計士としてPDCAの枠組みに沿って会社のサポートをしてきました。しかし、経営におけるメインのツールである予算組みや経営計画を作ることにおいて、少なからず違和感があったんです。というのも、経営を管理する上で、中期経営計画だとだいたい3年くらいのスパンで計画を作り、それをさらに落とし込んで向こう1年の予算を立てます。しかし、景気が悪くなってから、どうもPDCAでは立ち行かなくなっていることが多いんですね。

――それはなぜでしょうか。

田中:PDCAは、変化が少なく先が読みやすい環境では有効なのですが、急速に状況が変化する環境においては、時間の経過につれて計画の前提が大きく変わってしまうため、立ち行かなくなります。

――経営企画で立てられた計画が行き過ぎていると、その数字を達成するために従業員たちが社会的な倫理に反するような行動を取ってしまうこともありますよね。

田中:この本を書いている段階で東芝の不正会計が発覚し、またこういったケースが出てくるということを懸念しながら書きあげたら、すぐに三菱自動車の燃費偽装問題が表に出ました。

具体的な数字目標は凶器になる危険性を孕んでいて、無理な数字を設定された現場は、その数字を達成するために嘘をつくことになりかねません。経営層は業績をより伸ばそうとするために、高すぎる目標をPDCAの「P」に置いてしまいがちで、その弊害が日本中で噴出し始めたのだと思いますね。

――この本で提唱されているOODAループは、変化の速い時代に即したスピーディーな意思決定を可能にするモデルです。

田中:OODAループは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐がドッグファイト(機動しながらの空中戦)からヒントを得て考案したものです。刻々と戦況が変わるなかで、目の前の状況観察からはじまり、その観察を通して直観重視で意思決定し、実行するというプロセスですが、これを知ったときにPDCAの限界を補うものではないかと思いました。

――業界によっても異なるのかもしれませんが、例えばIT業界はトレンドが一瞬で変化するので、計画を立ててPDCAをまわしても、世の中のニーズと合わないところがでてきますよね。そういう意味ではOODAループは合うように思います。

田中:IT業界をはじめとした情報サービス産業全般に効果的だと思います。人が重要である組織は、このOODAループが良い形で作用するはずです。あとOODA経営は中小企業に効果的で、成功事例は大企業よりも中小企業の方が早く登場するでしょうね。

――「OODAループ」は観察(Observe)、方向付け(Orient)、決心(Decide)、実行(Act)という4つのフローがありますが、この中で最も重要なものはなんですか?

田中:「方向付け」です。これまでOODAループについて説明している本を見ると、「Orient」を「状況判断」と訳していることが多かったのです。今回は、「状況判断」より一歩強い意味を持たせたいということで、「方向付け」と訳しました。

戦闘機のパイロットは、方向づけを自分で決定した瞬間に、操縦桿を動かします。確かにその後に「Decide」(決心)という段階があるのですが、大組織で「Decide」は、会議の手順を踏まねばなりません。観察し、状況を判断して動こうと思っても、個人の一存ではできない。そうなると行動のスピードが遅くなるわけです。スピードを上げるためには、「方向付け」と「決心」を同時に行わねばなりません。

――つまり、「OODAループ」は個人の裁量が大きくなるプロセスであるわけですね。

田中:そうなんです。みんなの合議で決めずに、ある程度権限を分散して個人に任せる。つまり、OODAによって多くの企業が苦手としている「任せる」ことが可能になります。

(後編へ続く)

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