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第4のがん治療として期待 がんペプチドワクチン療法

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 免疫療法とは、人間が本来持っている治癒力を利用する治療で、一般的に副作用が少ない。約20年前に登場し、手術、化学療法、放射線治療に続く第4の治療として注目されている。以前から、免疫細胞治療や樹状細胞(じゅじょうさいぼう)治療など様々なアプローチが試みられてきた。

 その一つとして、がん細胞表面に目印として発現する、がん抗原から作ったペプチドを投与するがんペプチドワクチン療法の開発も進んでいる。細胞を加工して投与する治療とは異なり、ワクチンに用いるペプチドは比較的安価で大量に合成できる。しかも特別な設備を必要とせず、長期保管もできるため、多くの施設で使用可能だ。

 神奈川県立がんセンター、がんワクチンセンターの笹田哲朗センター長に聞いた。

「ペプチドは、がん細胞の表面にある、10個前後のアミノ酸が繋がったもので、これを目印に免疫細胞の一つであるT細胞が、がんを認識します。ペプチドは合成可能で、人工的に製造したペプチドを患者に注射するとT細胞が活性化され、がん細胞を攻撃するようになります。これが、がんペプチドワクチン療法です」

 現在、肺がん手術後の再発予防の臨床試験が始まっている。肺がんは手術後も約50%の確率で再発するため、手術後に抗がん剤治療を行なうことが多い。今回、臨床試験に参加できた対象は、手術後に抗がん剤を補助化学療法として実施している患者だ。5種類のペプチドを混合したカクテルワクチンを毎回1ccずつ3か月間、毎週1回皮下注射し、その後、隔週の投与で2年間実施する。

 また、再発した治療抵抗性前立腺がんに対するペプチドワクチンの臨床試験も先進医療として実施されている。治療前の患者の免疫状態を調べることにより、12種のペプチドワクチンから4種を選び、ワクチンとして注射する。

「免疫療法は、特異性と記憶が特徴です。はしかなどの感染症では、ワクチンを打って免疫細胞に記憶ができると発症することはありません。がんワクチンも、免疫細胞に一度記憶ができて効果が見られたら、長期的に持続することができます。ただし、効果がある人とない人がいるので、効く人を選ぶ、あるいは効く人を増やすことが今後の課題です」(笹田センター長)

 がんワクチンセンターでは、がん細胞が遺伝子変異により発生することに着目し、遺伝子変異由来の抗原の研究を行ない、新たなペプチドワクチンを開発している。

 例えば、肺がんの分子標的薬のイレッサやタルセバは、がん細胞の増殖にかかわる因子(EGFR)の働きを阻害する薬として開発され、投与当初は非常に効果があった。

 ところが平均1~2年で耐性ができてしまう。これは、がん細胞に遺伝子変異が起こり、効かなくなるためと考えられている。そこで新しいペプチドワクチンを使うことで、こうした変異に対する免疫細胞を活性化し、がん細胞を攻撃できる可能性も研究中だ。

 今後の成果に期待したい。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2016年7月1日号

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