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東京のいい店旨い店 山手線の外側に増加している

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 最近、東京の飲食店の出店が変わりつつあるという。どのようなお店なのか、どんな楽しみがあるのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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 東京の飲食店の地図が変わりつつある。この数年、銀座や六本木といった盛り場だけでなく、都心から15~20km圏あたり、山手線の外側に出店する個人店にいい店が増えている。

『dancyu』の5月号の東京特集では、立石や武蔵小山など食いしん坊や呑んべえならおなじみの町に加えて、初台(渋谷区)、亀戸(江東区)、六町(足立区)などが取り上げられていた。『食楽』の最新号でも「錦糸町・亀戸・小岩 人呼んで”3K”が熱い!」なる特集が組まれている。これらのページで紹介されているのは、いずれも”都心”から15~20km圏のエリア、山手線の少し外側にある店舗だ。

 都心ど真ん中ではなく、かといって郊外というほどでもない。このエリアに、続々と地力のある個人店が出店している。目立つのが、もともとスナックや小料理屋の跡地に異業種が居抜きで入るパターンだ。

「1960年代のスナックブームや、1970年代の脱サラ喫茶店ブームで開業した人たちも、この10年ほどでずいぶん店を畳んでいますが、銀座や港区となるといくら小規模店でも個人で手が出せる金額ではない。一方、15~20km圏の居抜き店は、値ごろ感もあって人気が高いんです」(都内の不動産店店主)

 店の立場からすると小規模店なら従業員も少なく、宣伝や原価のかけかたにも工夫の余地がある。TwitterやFacebookなどといったソーシャルツールによって、情報発信もやりやすくなった。古びた外観でも、自信のあるメニューを伝えることはできる。

「おいしいもの」の定義もずいぶんと変わってきた。高度成長期までは、おいしいものとの出会いはめったにないごほうびであり、ごちそうだった。ところが、バブル期以降、「おいしいもの」は「他人に自慢できる程度の非日常」へとスライドした。そしてSNSがインフラとなったいま、おいしさはInstagramなどの「いいね!」の数で測れてしまうかのような印象すら受ける。もはやその皿の存在が、食べ手のためなのか、SNSのコュニケーションのためなのかわからないような趣の皿もある。

「いい店」の料理が盛られた皿はSNS上ではなく、客の目の前に置かれたときに最大の効果を発揮する。誰もが口走るような賞賛はさらりと受け流し、淡々と客の舌を支配する。冒頭に挙げた、都心から15~20kmあたりのエリアに、外観からだけではその正体がわからない、いい個人店が増えてきているのだ。

 誰もが知る良店には出会うには、大量の情報を丹念にさらっていけばいい。だが、いわばそれはネタバレのようなもの。大当たりを引いたとしても感動はいかばかりか。当たりとはずれの混在した町で「イチかバチか」を繰り返してこそ、大当たりを引くことができるのだ。

「習うより慣れよ」「百聞は一見にしかず」ということわざがある。そういえば、いま日米の野球界で話題のイチローが、以前テレビの対談番組でこんなことを言っていた。

「無駄な事って結局無駄じゃないっていう言葉が大好き。(中略)無駄に僕は飛びついているわけじゃないですけど、後から思うと無駄だったという事はすごく大事なこと」

 無駄足を踏んでこそ見えてくるものがある。最近、都心から少し離れた町の店の前に、外観とは趣の違うメニューが書かれた黒板が置かれていると、つい扉に手をかけてしまう。意外と当たりが多い。

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