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五輪収支が「黒字」になると恩恵はどこにいく?

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2016年8月5日の開幕が間近に迫ったブラジル・リオデジャネイロオリンピック。2020年には我が国・東京での開催も控えている。今でこそオリンピック(以下、五輪)は、開催国にとってビッグビジネスになることが当たり前になったが、かつては黒字どころか、大赤字になった大会もいくつかあるという。世界的ビッグイベントなのに大赤字が出るとは意外だが、これは五輪そのものの運営構造に起因するところが大きかったようだ。

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「五輪は今も昔も開催国にとっては国家事業ですが、かつての五輪は会場設営などのインフラ整備も含め、大会運営にかかる大部分の費用を開催都市および開催国の税金でまかなっていたため、開催都市にとってはとにかく“カネのかかる代物”でした。その五輪がビッグビジネスとして成立することを知らしめる転機となったのが、大きな黒字を生み出した1984年のロサンゼルス五輪です。この大会で組織委員会(LAOOC)の委員長を務めたアメリカの実業家ピーター・ユベロスが、民間の収入、言い換えれば組織委員会のビジネス活動による収入だけで、五輪の開催および運営が成り立つことを証明したんです」

そう説明してくれたのは、五輪事情に精通するスポーツライターの小川 勝氏。それまでの五輪では、大会組織委員長や委員は官僚が務めることが一般的で、ユベロスのような“やり手”ビジネスマンが委員長を務めることなどなく、赤字になることも珍しくなかったそうだ。その最たる例が1976年のカナダ・モントリオール五輪。

「1973年に起こったオイルショックで世界的にインフレとなるなど不運も重なりましたが、結果的に会場の建設費などが膨らみ損失は9億9000万ドル、当時のレートで日本円に換算すると約2900億円になりました。オリンピック史上、空前の大赤字となった大会ですね」(同)

結果、この莫大な赤字はモントリオール市とケベック州で様々な増税などで補填していくことになり、なかでも、2006年に赤字の返済が終わるまで、タバコ税は30年間上がり続けたという。

「モントリオール五輪は極端な例ですが、それまでは今のように企業がスポンサーに付いて協賛金を払うなんて発想自体がなかった。IOC(国際オリンピック委員会)ですらわかっていなかったわけですよ。その点、ユベロスは、五輪の放映権料しかり、公式マスコットの商品化による収入しかり、すべてを徹底的に商業化していったんです。現在、五輪のワールドワイドオリンピックパートナー(4年契約)は、コカ・コーラやマクドナルド、韓国のサムスンなど12社。日本企業だとパナソニックとトヨタ、ブリヂストンですが、1社100億円くらいは協賛金を出していますから、IOCはスポンサー収入だけで1200億円は集めているということになります」(同)

また、現在では会場設営費などインフラ整備にかかるお金は、開催国(および開催都市)の公共事業として行われるのが慣例となり、五輪の大会収支のなかにインフラ整備にかかったお金は含まれていない。それゆえ、見かけ上の五輪の収支は黒字になりやすくなったわけだ。では、大会収支で組織委員会が得た余剰金はどこにいくのだろうか?

「これは『スポーツ振興に役立てる』と五輪憲章で使い道が定められていて、スポーツ関連施設の建設を助成するとか、その地域のオリンピック競技の開催に対して資金を出すなどのかたちで使われています。身近なところでは、1998年の長野五輪(冬季)の黒字分は、軽井沢で年に1回開催される『軽井沢国際カーリング選手権大会』の開催費などに使われていました」(同)

ロス五輪を転機に、まさにビッグビジネスとなった五輪だが、一方で大会収支の黒字・赤字だけでいい大会だったかどうかを判断するのは、難しい面もあるという。

「例えば野球が正式種目だった2004年のアテネ五輪では、野球場が2つつくられましたが、そもそもヨーロッパで野球は浸透していないし、ギリシャの場合はヨーロッパの中でも野球は盛んではありません。結果、野球場は今も野ざらしのままです。一方、1964年の東京五輪のときに、大会のために建てられた代々木第一・第二体育館や日本武道館などは、スポーツや音楽のライブなど様々な用途に使われてきました。だから、未来も見据えた投資ができているか、ということが大事なんですね」(同)

商業主義と揶揄されることもある昨今の五輪。2016年リオ、2020年東京五輪がともに、開催国にとって有意義な大会になることを見守るばかりだ。

(青柳直弥/清談社)
(R25編集部)

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※コラムの内容は、R25から一部抜粋したものです
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