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長く受け継がれた正統派の味! 先斗町の路地奥にある老舗洋食店「一養軒」で昭和にワープだ

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いざ進まん、花街の路地奥へ!

こんにちは、メシ通レポーターの泡です。常々「茶色いもんは旨い」と思いながら暮らしているのですが、今回はその確信をさらに深めてくれた一軒をご紹介します。

京都の繁華街、四条河原町の交差点から東へすぐ。

河原町通と鴨川の間にある先斗町通は、もともとはお茶屋さんが並ぶ花街として栄えてきました。しかし時代と共にお茶屋さんよりも一般の飲食店が増え、現在は通りの両脇に居酒屋やレストラン、バーなどが並んでいます。

観光客がひしめくそんな通りから、路地(京都では“ろぉじ”と発音)へ入ったところにあるのが「一養軒」。

先斗町通から1本西側の木屋町通まで通り抜けできる25番路地の真ん中にあります。店の看板は、週末を除いてほぼ出ていないのでがんばって探しましょう。先斗町通の西側にある「25番路地」の看板を目印にしてください。

そして、一人がやっと通れるくらいの路地をずずいっと奥へ。

さて頼もう、茶色くてうまいもの!

住宅のような門戸の向こうにある扉を開けると、そこは時が止まったかのような飴色の空間が。意外にも正面には立派なバーカウンターがあり、パリッとバーテンダーコートを着こなしたご主人が迎えてくれます。

あらっ、洋食店じゃなくてバーに来ちゃった? と不安になりますが、ご心配なく。実はこちら、洋食店、バーと2つの顔を持つお店なのです。

これまた使い込まれてエエお顔になったお品書きには、オードヴルに始まり、ポタージスープ、ハムバーグステーキ、ハイシライスなどなど、表記もレトロな魅惑の洋食が50品以上も。

うう、迷う。これは迷いますよね。でも、メニューにあると必ず食べてしまう好物・ビフカツは外せません。もう一品はご主人のおすすめに従おうっと。

「昔から人気なのは、エビコロッキーやエビコキール、グリルドチキンあたりですね」

「じゃ、エビコロッキーください(キリッ)」

「……両方揚げ物になるので、コキールの方でいかがですか」

「(ハッ! 無意識に揚げ物を!ダブル揚げ物! )で、ですよネ~。コキール食べたいですっ」

思わぬところで気づきを得て、感謝に堪えない筆者でありました。ま、それはさておき、料理を待つ間に一杯いただきましょうか。

バックバーにはニッカのウイスキーがずらり。うん、ここはハイボールですな。

グラスの1/4ほどに琥珀色のお酒を注ぎ、ウィルキンソンの炭酸小瓶をシュワーッ。

透き通った氷の塊をそっと浮かべてこちらへスィー。強めの炭酸が喉を快く刺激し、ビターな中にほんのり甘みのあるウイスキーの風味がフワー。

ハイボール 760円~(税込)

カラダにすっとなじむキレイな味です。ご主人曰く、「ステアすると炭酸が抜けて爽やかさがなくなるのでうちではこのスタイルなんですよ」。ふむふむと頷いていると、エビコキールができあがりました!

よし泣こう、このうまさに!

エビコキール 980円(税込)

貝殻型の器にふつふつと湯気を立てるコキール、なんてソソる焦げ目をたたえているのだ君は。

ふぅふぅとひと口。真っ白なベシャメルソースの中でエビがプリッと存在を主張しています。とろ~りなめらかなソースは、ミルキーなコクがありつつ後口はすっきり。これ、なんぼでも食べられます。

そして、お待ちかねのビフカツ! いい茶色キターーー!

ビーフカツレツ 1,730円(税込)

見るからに油切れよく揚がった衣にデミグラスソースと、茶色・ザ・グラデーションがたまりません。

あまりにド直球ド真ん中の洋食。アップでご覧ください。

ハナイキも荒くナイフを入れると、まず手先に伝わる肉の柔らかさににんまり。断面はほのかにロゼ色を残したミディアムレア。

赤身肉の軽やかな旨みに、香ばしい衣とわずかにビターさを感じる芳醇なデミグラスソースが華を添えます。なんともしみじみとした美味しさ。

付け合わせの野菜ひとつにしても丁寧な仕事ぶりがうかがえる、正しき洋食がここにありました。

あ、ハイボールおかわりください。

ああ家族、その素晴らしき絆!

それにしても、とても重厚感のあるお店です。創業はいつ頃なのでしょうか。ご主人の矢野保夫さんにお話をうかがいました。

創業は1922(大正11)年です。実は、長いこと大正12年やと言ってきたんですが、大学の教授をなさっているお客さんがたまたま昔の新聞をご覧になった時、大正11年にうちの開店広告が載っていたそうで。もひとつ古かったいう話ですわ(矢野さん)

―:なんと94年め! ずっとこの場所で、ですか?

もともとは私の祖父が木屋町通に面したところで始めたんです。紅殻格子の二階建てで欧風料理を出すレストランでした。戦後からはお酒も出すようになって、1階が酒場、2階が食堂というスタイルでよう流行ってたと聞いてます(矢野さん)

―:いつ頃から今の場所での営業を?

1978(昭和53)年に、もとは住まいだったこの場所を改装して移転しました。木屋町の店の雰囲気をなるべく残そうと、このようなしつらえにしたんです。今は1階が客席、2階が厨房で、母と妹が料理を作っています(矢野さん)

―:これまた意外! コックさんがいるのかと思っていました。せっかくなのでお母さんにもお話を聞かせていただきたいです!(なかば無理矢理、厨房に押しかけました。すみません)

「そんな、私ら何も変わったことようしませんし、お話しすることおまへん」と、謙遜なさるお母さん。色白小柄でたおやかな物腰が素敵です。まさかこんなお方があのきっちりとした料理を作っているだなんて!

二代目やった主人が亡くなるまで私は家庭の主婦でしたんや。主人と義父が相次いで亡くなってしもて、私がコックさんに付いて料理を覚えんならんとなって、正直、真っ暗な気持ちでした。料理をしていく自信がないからもうやめたいと思ってたんやけど、息子(矢野さん)が『店の灯を消しとうない』って言ってくれてね……(お母さん)

以降、親子三人四脚で昔の味を守り続け、今に至るといいます。メニューもその当時とほとんど変わっていないというから驚き。

デミグラスソース、うちではなんでかドビーソースって呼んでますけど、これもスジ肉と野菜を焼いて焦げ目つけて……、毎日煮込み続けて完成まで半月以上かけてます。スープも全部イチからとりますしね(お母さん)

上品で優しい味わいの秘密はここにありました。長いこと家族のために料理を作り続けたお母さんが、その対象をお客さんに替えただけで手を抜くことなく、愛情込めて仕上げるからこそできる味。

木屋町時代から通う古いおなじみさんも、初めて扉を開けたお客さんも同じようにホッとした気持ちになれる幸せの味。

その証拠に、常連さんご家族のお嬢さんが、小学生の頃から来る度に描いてくれたという矢野さんの似顔絵がボトルに何枚もかけられていました。今や、そのお嬢さんも立派な成人。似顔絵はもう描いてくれないけれど、その分お酒を楽しまれるようになったそうです。

これからも路地の奥に、灯をともし続けてほしいと切に願います。

花街から観光地へと時代の流れとともに大きく様変わりした先斗町。その片隅には、時代の流れに消えてしまう事なく、昔ながらの味がしっかりと続いているのです。ぜひ、ここだけにしかない時間を味わってください!

店舗情報

一養軒

住所:京都府京都市中京区木屋町通四条上ル鍋屋町211

電話番号:075-221-4249

営業時間:17:30~22:00

定休日:木曜日

※丁寧に時間をかけて料理を作られるので、3名以上での食事利用は応相談。


書いた人:

泡☆盛子

ライター。沖縄出身、京都在住。京都の水というか食がカラダに合い、40kg肥えたのが自慢。立ち呑みと、おかずケース食堂での昼酒が好き。

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