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定年後再雇用と賃金

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 5月13日に、東京地方裁判所は、運送会社を定年退職した後、同会社に再雇用された男性社員が、正社員との賃金格差は違法であるとして、正社員との賃金差額の支払いを求めた事件で、仕事の内容は正社員と同じであって、特段の事情のない限り、同一業務内容で賃金格差を設定することは労働契約法20条に反するとして、男性社員の請求を認容した判決を出した。

 正直いって驚いた。定年退職した後の給与は下がるものであると思い込んでいた私が非常識で、労働契約法を理解していなかったせいかもしれない。
 しかし、定年退職後は給与が下がるというのが社会常識ではないだろうか。行政もその社会常識に立脚して、高年齢雇用継続給付の制度を設けているのであるから。
 仮に、この判決が確定したとすると、実務上は、賃金体系の見直しなどの混乱が起こることは必至で、実務に与える影響は多大である。

 さて、私が疑問に感じたのは、判決の是非そのものではなく、この勝訴判決を受けた男性社員が上記の高年齢雇用継続給付金を受領していた場合、どうなるのであろうかということである。

 高年齢雇用継続給付制度について簡単に説明すると、60歳到達等時点に比較して賃金が75パーセント未満に低下した状態で雇用される60歳以上65歳未満の労働者に、低下した賃金の15パーセントを補助するもので、まさに賃金低下を前提として、その低下分をいくらかでも補填しようという制度である。

 さて、くだんの男性社員がこれを受領していたとするならば、判決によって満額(低下前の賃金全額)を受領することになるのであるから、国から支給された高年齢雇用継続給付金は、そもそも支給条件の「60歳到達等時点に比較して賃金が75パーセント未満に低下した状態」という条件を充足せず、まさに、国の損失によって不当に利益を得たということとなり、不当利得となることは明らかだと思われる。

 給料を50万円受領していた者が、再雇用後37万4000円の給与となった場合、その新給与の15パーセントに該当する5万6100円が不当利得ということになり、これを国に返還する必要があるということになる。

 もし、東京地裁判決が確定したとするならば、その返還作業だけでも、国も企業も大混乱となるであろうが、それに加えて、会社の賃金体系の見直し、それに伴う就業規則や賃金規定の改定なども行わざるをえず、そのような結果を招来する判決が果たして社会常識を踏まえた正当な判決といえるのかは疑問である。

 労働事件においては、東京地裁は労働者寄りであるが(言葉は悪いが左がかっているともいわれる)、社会の実態、常識、判決がもたらす影響等々も考慮すべきではなかろうか。

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定年後再雇用と賃金

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