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認知症高齢者の社会活動参加は認知機能の低下防止に効果あり!

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こんにちは、理学療法士・介護福祉士の中村です。認知症高齢者にとって、「できることを取り上げられる」ことは、とても悲しくやるせない気持ちにさせます。介護とは、全てのお世話をすることではなく、できることをする場合は見守り、できないことの場合はちょっとのお手伝いをすることだと考えています。

今回は、認知機能上昇がみられた男性の話を含めて、高齢者の社会活動への参加についてお話いたします。

前回記事:「最期は自宅で迎えたい」認知症高齢者の在宅終末期について考える

社会参加が脳機能に与える影響

私の出身は鹿児島の離島で、そこに住む高齢者は夕方になると、どこからともなく集まってはお喋りをして帰っていたのを記憶しています。

また、沖縄で生活していたこともあるのですが、「マチグワー」と呼ばれる小さな商店にオジー、オバーが集まって地域の情報交換や物々交換なども行っており、「社会交流」さながらふれあい活動を行っていたのです。

夕方という時間の概念(見当識)を持ち、商店までの道のりを歩くことで有酸素運動が行えます。会話をする事で言語野の活動が活性化し、商店で買い物をする際に行う計算では、前頭前野が活性化します。地域の社会交流だけでも、脳機能の多くを使うことが分かります。

「社会の役に立ちたい」と考える高齢者は半数以上

2006年に行われた内閣府の「社会意識に関する世論調査」によると、70歳以上の52.1%は「社会の役に立ちたい」と回答したとのことです。1983年に同調査を行った際は31.9%だったため、20ポイント以上上昇したことになります。
※1994年は該当する質問項目なし、1999・2001・2003年は調査を実施せず

社会の役に立ちたいと答えた方に、「どのように役に立ちたいか」という問いには、「町内会などの地域活動」が47.2%でトップ、次いで「社会福祉に関する活動」の29.3%、「自然・環境保護に関する活動」の25.1%と続く結果になったようです。このことからも、高齢者自身も社会と関わりを持っていたいと考えていることが分かります。


参照元:内閣府による「社会意識に関する世論調査」(2006年)

社会参加で認知症発症リスクが70%減

動物は脳を有し、その脳の指令により身体を動かします。人間の脳には、他の霊長類と比較しても非常に発達している、「大脳新皮質」と呼ばれる部位があります。これは社会の複雑さがあるがゆえ、大脳新皮質が発達したと考えられています。

現在、人間関係の多様化によるストレスから、精神疾患の発症が多く報告されています。しかし、その一方で、友人が多くいる等、社会参加が行えている人は、認知症を発症するリスクが70%減といった報告もあります。
参考元:TIME紙

認知症高齢者の孤立を防ぐ地域マップの活用

認知症高齢者を支える地域マップは、住み慣れた地域で、顔見知りのご近所の中で生活することで、社会から孤立するのを防ぐひとつの手段であると思います。

さらに、地域マップから発展させた「ご近所福祉計画」などがあれば良いかと思います。近所に住む認知症高齢者を社会資源として活かし、支え合っていくことが大切だと思います。

社会活動参加により認知機能上昇がみられた男性の話

以前、私はある認知症高齢者(以下「山田さん」:仮称)を診ていました。毎日、施設の外にある畑を眺めては1日中ぼんやりと過ごし、収穫期になると廊下をウロウロする事が日課でした。農業に関する知識が非常に豊富で、色々な事を饒舌に語る姿はとてもカッコよく見えていました。

野菜がうまく実らない…

ある時、私の住んでいた地域の会合(お酒の飲み会)で、農業を営んでいる知人から、「育てている野菜がうまく実らなく困っている」という話を聞きました。翌日、早速山田さんに相談すると、「そこに連れて行け」と一言。一時的な外出ということで、車に山田さんを乗せ農場に向かいました。

到着するやいなや、山田さんは畑の土を口の中に入れたのです!「異食行為をしてしまった!」と、私は慌てて止めようとしたところ、「塩分が足りない、軽く塩を撒けばいい」と一言。「作物に塩分なんて…」と誰もが思っていましたが、試しに1列だけ塩を撒いてみました。

山田さんのアドバイス通りに行った結果

後日知人から、「すごく甘いものができました」と報告を受けました。現在、山田さんはグループホームに転所されましたが、農業に関する知識は相変わらず豊富で、私の知人ともアドバイザー契約を結んでいるとの事です。知人には認知症サポーターの勉強をするように伝えました。ちなみに、山田さんの入所直後の日常生活自立度はⅡb、アドバイザー契約後はⅠと改善しているようです。

さいごに

認知症だから地域社会に出られないのではなく、その方に応じた地域社会への参加方法があるのではないでしょうか。認知症高齢者の行動は、ただ単に無意味に行動しているのではなく、本人にとっては意味のあるものです。

「これをやってはダメです、動き回らないで、今忙しいからじっとしていて」などのような説得ではなく、「どうしてその行動をとるのか」という共感が大切なのではないでしょうか。何より、認知症高齢者の方が欲しいのは「説得よりも共感」だと考えています。

その上で、意味のある行動を、病院や施設にいる専門職だけが理解するのではなく、地域に住まわれている方々も理解し、そして認知症があっても、その方自身が持つ経験や知恵を資源として、活かす事が大切なのではないかと考えます。

この記事を書いた人

中村洋文

鹿児島県沖永良部島出身
介護福祉士 / 理学療法士 / 実務者研修教員/その他
病院、知的障害者施設、デイサービス管理者、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム等の医療・福祉施設にて勤務。現場だけではなく、行政側の立場としても市役所勤務の中で介護保険にも携わる。介護保険認定審査委員も歴任。現在、福祉系専門学校での講師及びクリニックでの理学療法士として活動中。介護医療現場、また行政側の様々な経験をもとに認知症高齢者本人とその家族の想いを教育現場や全国各地での講演会等で発信しています。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
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