愛知県安城市が誇る、玉子ふわトロのソウルフード「北京飯」ってナンだ!?

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愛知県はローカルフードの宝庫であることは『メシ通』読者のみなさんもご存じだろう。名古屋市内を中心に食べられているものは「名古屋めし」として注目を集めるが、市外が発祥のローカルフードは県内に住む人でも知らないほどマイナーな存在なのだ。

思わぬミスが「北京飯」誕生のきっかけに

愛知県西三河地方にある安城市に「北京飯」なるご当地メシがある。地元では知らない人はいないほど有名だが、名古屋や尾張エリアではまったくの無名。私も名前を聞いたことがある程度で食べたことがなかった。

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「北京飯」の全貌については後からのお楽しみとして、発祥のお店は新幹線の三河安城駅近くにオープンし、今年で創業55年を迎える「中国料理 北京本店」

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現在は三代目の店主、杉浦充俊さんが厨房で腕をふるう。

店名が「北京」だけに料理のジャンルは北京料理なのだろうか? だとすると「北京飯」も北京料理がベースなのか?

戦争に行っていた祖父が戦後、神奈川県川崎市で中華料理店を営んでいた兄弟のもとで働いていました。その店が「北京」という名前だったことから、同じ名前にしたそうです。(杉浦さん)

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7年ほど前にお店を改装して、外観も店内もレストランのような雰囲気だが、その前はどの町にもある大衆的な中華料理店だった。

「北京飯」が誕生したのは、開店してまだ間もない頃です。祖父がまかないで玉子料理を作ろうとしたところ、誤って別のタレを玉子の上にこぼしてしまいました。捨てるのももったいないと思い、食べてみたら美味しかったそうで、それが「北京飯」のヒントになったと聞いています。(杉浦さん)

ふんわりトロトロの玉子に、豚肉の唐揚げが!

おっと、話を聞いている間に厨房ではすでに調理が進行中。f:id:Meshi2_IB:20160520121649j:plain

これは豚肉を唐揚げにしているところ。

豚はヒレ肉を使っているのかと思いきや、脂身の少ない内モモ肉だそうだ。それに塩と醤油で下味をつけた後、溶き卵にくぐらせて、食感を良くするために小麦粉ではなく、片栗粉をまぶして揚げるのがポイントだとか。

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初代店主は試行錯誤を重ね、醤油と砂糖がベースのタレで味付けしたトロトロの玉子丼に豚肉の唐揚げをのせたボリューム満点のメニューを完成させた。

メニュー名は店のオリジナル料理であることから、店名を冠した「北京飯」と名付けられた。

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これが「北京飯」。

正式名称は「究極の北京飯 600円」。このビジュアルを目の当たりにしたら、食べずにはいられないではないかっ!

何が究極かは後ほど説明するので、しばしお待ちを。ってことで、まずは実食!

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おおっ! 玉子がふわふわ&トロトロだ!

あまりにもやわらかすぎて、甘辛いタレとともにご飯の下の方にまで流れている。だから玉子とご飯の一体感はハンパない。

さらに、豚肉の衣がサクサクで肉がとてもやわらかい。揚げるときにラードを使用しているので、香りが良く、肉の旨みを引き立てているのだ。揚げ具合が絶妙なのでいくらでも食べられてしまう。

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ちなみに同じ豚の唐揚げを使った「スブタ 850円」も人気。これも食べてみたが、鼻から抜けるほのかな酸味がたまらない。町の中華料理店ならではのご飯がすすみまくる味つけだ。

地元食材を中心にリニューアルした「究極の北京飯」

さて、「北京飯」に話を戻そう。

「北京飯」を食べていて気が付いたのは、鶏ガラスープを使っているわけでもなく、天津飯のようにあんかけにしているわけでもないこと。つまり、中華料理としての要素がほとんどないのだ。にもかかわらず、かなり中華っぽい。広東や北京、四川、上海と中華料理もジャンル分けされるが、この「北京飯」はそれらを超えた、“ジャパニーズ中華”と言ってもいいだろう。

「食材も調味料もとくに変わったものを使っていませんので、家庭でも簡単にできると思いますよ」と杉浦さんは言うが、玉子のとろみ加減や唐揚げのサクサク感を再現するのは無理ですから!

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前にも書いたが、杉浦さんは三代目の店主として店を切り盛りしている。先代である父親が急逝し、店を継いだのはなんと19歳のとき。先代は生前に「店を継いでほしい」とは言わなかったので、杉浦さん自身も考えていなかったという。

途方に暮れていたとき、父がレシピを書き残したノートが見つかったんです。それを基に、見よう見まねで作った料理を出していました。当然、お客さんから「前と味が違う」と言われましたよ。それでもお客さんは父と同じ味が出せるまで根気強く通ってくださいました。3、4年経って初めてお客さんにほめられました。(杉浦さん)

「北京飯」はお店を継いだ杉浦さんと長年通い続けている常連客によって復活を遂げたと言っても過言ではない。

そして店を改装した7年前、杉浦さんはある決心をする。それは、看板メニューである「北京飯」を「究極の北京飯」としてリニューアルさせることだった。食材の一つ一つを見直すことでもっと美味しくなると確信していたのだ。

「北京飯」は、安城で生まれて安城の人々に長年愛されてきました。だからこそ、地元の食材を使ってみようと。お米は地元産のブランド米「あいちのかおり」にしました。このお米は香りが強い反面、店で使うには味が今ひとつ物足りない。だから、7.5分つきで精米をして、米そのものの味が楽しめるようにしました。肉も地元のブランド豚「三河ポーク」を使用しています。くさみがなく、味もしっかりしているのが特徴ですね。卵は養鶏が盛んな豊橋市から新鮮なものを取り寄せています。(杉浦さん)

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こうして完成したのが「究極の北京飯 600円」。ご飯と卵、豚肉、それぞれが“三味一体”となって広がる。その渾然一体感は、まさに究極といっていい。

あんかけ&台湾ミンチを使った“進化形”も

現在、北京本店では、以前よりもさらに一体感を増した「北京飯」をお客さんの要望にこたえて、さまざまな形で提供している。

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それが通常唐揚げが3枚のるところを倍の6枚に増量し、食べ応え十分な「デラックス北京飯 700円」だ。肉好きにはたまらない一杯だろう。

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こちらは玉子を1.5倍増量したのが「厚玉子北京飯 650円」。卵のふわトロ感も1.5倍楽しめるとあって根強い人気を誇る。

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「究極の北京飯」はそれ自体が一つの完成形であるがゆえに、これ以上ほかに何も足す必要はない……。そんな常識をもこの一杯はいともあっさり覆してくれた。大胆にもあんかけにした「あんかけ北京飯 750円」である。

あんかけのベースは、高級料亭が椀物に使うほど上質な三河産の白醤油。あられと梅干しもトッピングされ、従来の味とはまったく異なる、進化形の「北京飯」だ。

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ピリ辛の「台湾ミンチ」をのせた「台湾ミンチ北京飯 750円」も進化形。老若男女問わず愛されるやさしい味わいの「北京飯」にニンニクと唐辛子をきかせたミンチがのるだけでスタミナ満点の男メシになるから不思議。この一品に「北京飯」に潜む無限の可能性を垣間見たような気がする。

ほかにも「北京飯」からご飯を抜いて、酒の肴として楽しめる「北京半の上 500円」もある。

また、ランチタイム(11:00~14:00)には、「北京飯」にバンバンジーとスープ、漬物が付く「お値打ちランチ Aランチ 730円」や、「北京飯」と半ラーメン、漬物がセットになった「王道ランチ 北京飯セット 850円」もある。

中華料理店ですので、チャーハンや天津飯などのメニューも用意していますが、お客さんの8割以上は「北京飯」を注文します。今後もクオリティを高めていくとともに、新たな味を追求して進化形の「北京飯」も作っていきたいです。(杉浦さん)

愛知県には「名古屋めし」人気の陰に隠れたローカルフードがまだまだ沢山ある。今後も、そんな“隠れた宝”を追いかけていくのでお楽しみに!

お店情報

中国料理 北京本店

住所:愛知県安城市三河安城本町2-4-1

電話番号:0566-75-0230

営業時間:11:00~14:00(LO 14:00) 17:00~21:30(LO 21:00)

定休日:月曜日

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書いた人:

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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