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脳動脈瘤破裂を防ぐ「多変量解析」で治療の選択が可能に

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 脳動脈瘤は、ごく小さいものまで含めると40歳以上の100人に2~3人は見つかるといわれている。脳動脈瘤は家族性のほか、高血圧や喫煙、性別が重なって発症する。致死率が高いくも膜下出血は、その原因の多くが脳動脈瘤の破裂である。

 近年CTやMRIの普及で、未破裂のまま発見される脳動脈瘤が増えている。未破裂脳動脈瘤の治療を開頭手術やカテーテルを用いた脳血管内手術など積極的治療を行なうか、経過をみる保存療法を実施するか、治療方法の選択に悩む人が多い。

 宇佐美脳神経外科(東京都大田区)の宇佐美信乃院長に話を聞いた。

「かつて破裂脳動脈瘤189例中で、術後に追跡調査のできた109例を分析した結果、3%以上の確率で別の部位に再度脳動脈瘤が発生、再破裂しました。未破裂脳動脈瘤を手術せず、血圧のコントロールや禁煙など保存的療法を選択した場合、脳動脈瘤の直径が5ミリ以下では破裂が1%未満となっています。しかし、15ミリを超えると約25%の確率で脳動脈瘤が破裂します」

 7ミリ以下の未破裂脳動脈瘤があった場合、積極的手術をすべきか、保存療法かの選択となる指標があると治療方針が決めやすい。そこで宇佐美院長は多変量解析(たいへんりょうかいせき)という手法を使い、未破裂脳動脈瘤の破裂やこぶが大きくなるリスクの指標を割り出した。使用したデータは、患者の症例以外に米国の論文データを使っている。

 それによると7ミリ以下の未破裂脳動脈瘤が破裂する確率は(1)高血圧があるとリスクが4倍、(2)脳動脈瘤の場所(後頭蓋窩=こうとうがいか)ではリスクが6倍、(3)診察時の年齢が高いほどリスクが上がるという結果になった。

 また、脳動脈瘤が大きくなる確率は(1)女性の方が男性の2倍、(2)喫煙者は4倍、(3)年齢が高いほど大きくなりやすいという結果が出た。このようにリスクを点数化することで、どの治療を選択するかの目安になる。

 仮に破裂リスクが高い場合の治療としては開頭手術か、カテーテルによる脳血管内手術の選択がある。

「私は未破裂脳動脈瘤の治療デバイスとして、カテーテル治療用の離脱式バルーンや電気離脱式コイルの開発を行ないました。ですが、どれも破裂リスクの軽減にはつながっていません。アメリカの報告では、7ミリ以下の脳動脈瘤にコイルを留置しても、10年間に27%破裂との結果が出ています。そこで私は、新たにiCLIPというデバイスを開発しました」(宇佐美院長)

 iCLIPは、動脈瘤の首のところにひっかけ、血流が入り込まないようにして動脈瘤を縮める画期的な治療だ。20年以上前に開発され、それを直径50ミリという超大型の脳動脈瘤に対し、臨床研究として留置したところ、破裂もなく患者も元気に過ごしている。

 現在、保険承認に向けた準備が行なわれており、メイドインジャパンの新しいデバイスとして、臨床現場で使用できる日が待たれる。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2016年6月10日号

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