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ソニー、DeNA、リクルートが語る。産業構造を変えにいく、企業内新規事業の実態──『ベンチャーDive!2016 Spring』レポート【4】

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ベンチャーDive!最後のトークセッションは「産業構造を変えにいく、企業内新規事業の実態」。ソニー、DeNA、リクルートのキーパーソンが登壇し、大手企業の中で新規事業を立ち上げる醍醐味、課題などについて語り合った。

ソニー、DeNA、リクルートの新規事業立ち上げメンバーが登壇

登壇者は、ソニーの新谷眞介氏、DeNAの大見周平氏、リクルートホールディングスの平田淳氏。そしてモデレータはリクルートホールディングスの麻生要一氏が務めた。タイトルにもあるように、パネラーを務める3人はいずれも、産業構造を変えるような企業内新規事業を立ち上げている。

モデレータの麻生氏が兼務するニジボックスは、2010年にリクルートの実証実験機関「Media Technology Lab」から分社化されて生まれた新規事業開発会社、また「TECH LAB PAAK」はリクルートが運営するオープンイノベーションスペースである。

株式会社リクルートホールディングス Media Technology Lab. 室長、株式会社ニジボックス 代表取締役社長兼CEO/TECH LAB PAAK所長 麻生要一氏

ソニーの新谷氏が創立メンバーの一人として立ち上げた「harmo(ハルモ)」は電子お薬手帳サービスである。ICカードで一人ひとりの調剤履歴を管理することができるというもの。情報はすべてクラウドで蓄積されるが、クラウド側には氏名などの個人を直接特定する情報は持たないという。たとえクラウド側がハッキングに合ってもセキュアな状態が保たれる。「ほぼゼロベースの時期から立ち上げに関わり、5年間harmoに携わっている」(新谷氏)。現在、10都市で800ぐらいの薬局、医療機関で同サービスが利用されており、利用者も年々増加。「全国で5万人の方が使っている」と新谷氏は説明する。

ソニー株式会社 harmo事業室 事業企画課 統括課長 新谷眞介氏

大見氏はDeNA入社3年目からDeNA AUTMOTIVEに移り、カーシェアリングサービス「Anyca」を15年9月にリリースした。毎月20~30パーセントずつシェアが伸びているという。現在、1000台ぐらいが登録されているが、「まだまだビジネスの規模は小さい」と大見氏は語る。

株式会社ディー・エヌ・エー Anyca(エニカ) 事業責任者 大見周平氏

平田氏が展開している「うさぎノート」は、学校やお稽古教室、塾の先生から保護者への連絡を簡単、安心に届けるサービス。「現在、約270校で採用されており、保護者登録数は約1万人」と、平田氏は説明する。

株式会社リクルートホールディングス 「うさぎノート」プロダクトオーナー 平田淳氏

新規事業立ち上げに際して、どんな壁にぶち当たったのか

そんな新事業を立ち上げた3人とのトークセッションの最初のテーマは「産業構造の変革に当たって、具体的にぶち当たっている壁について教えてください」。

新谷氏は「薬局とのコミュニケーションに苦労した」と語る。医薬品業界は規制産業のため、店舗と1対1で話すだけでなく、薬剤師会などの業界団体、自治体など、ステークホルダーとのコミュニケーションも多いからだ。また地域性もあるため、地域ごとにカスタマイズして話さないといけないところが難しいという。

そんなステークホルダーがたくさんある中で、どのような営業をしているのかという麻生氏の問いに、新谷氏は「お薬手帳は何をするツールなのか。医療政策がこうだからharmoはこう役立つ、地域ではこう求められているから、harmoはこういうことができるというように、その地域に合わせたストーリーを描き実物を見せることを実践している」と語る。

harmoはすでに試験サービスを開始して2~3年が経過している。大企業のソニーとはいえ、それだけの間、投資し続けてもらうには理由がいる。それについて新谷氏は「実績を着実に挙げていくこと。投資したら、1年後にはこれぐらいになったという実績を見せる。

このサービスは川崎市宮前区の1薬局から始まった。それが今では10都市まで展開するまでに成長した。実績を持って話をすることを示していくことが納得材料になっている」と力説した。

続いて大見氏がぶち当たっている壁について説明した。
「1つは2014年9月に決裁が降りたが、法律面でボトルネックがあった。このサービスは事業者登録などの許可が不要になるよう共同使用という概念を適用し展開している。しかし共同使用の概念は明文化されていなかったため、国土交通省の方と認識あわせをしながらサービスに落とし込んでいった」と語る。

また保険についても同様に苦労したという。Anycaでは使用者が安全に使用できるよう、1日自動車保険を設置したかったのだ。

「そういうビジネスが保険会社になかったため、ルールを変えてもらわなければならなかった。そこが一番の壁だった」と大見氏は言う。

現在も、保険の保障面については「100%満足していない」と語る。平田氏の苦労しているのは、「大変なのは公立の学校がうさぎノートにアクセスできるようにすることです」と語る。

公立の学校ではホワイトリスト形式でインターネットに接続できるようになっていて、すべて教育委員会が一括して管理している例が多い。しかも教育委員会が新規サービスを採用することはほとんどない。採用されるためには、実績が必要になる。
「そこで今は私立の学校に導入してもらい、実績を増やしているところだ」と平田氏は語る。またデータの蓄積場所がクラウドというのも、壁になっているという。「教育委員会では、国内のデータセンターに置くこと」という意見が主流だからだ。

その壁を突き破る方法論とは?

2つめのテーマは「企業内新規事業として壁を突き破る方法論」について。大見氏は「新規事業といっても、事業目標数値を高めに設定される。そしてメンバーもそれを達成することに躍起になりがちだが、それだとユーザーが置いてきぼりになってしまう。Anycaのような個人間サービスでは、ユーザーの口コミをどう作っていくかが大事になる。もちろん目標と本質のギャップをどう埋めていくかも大事だが、会社は投資会社ぐらいに思い、いざとなればスピンアウトすればいいという気持ちで、リーンスタートアップ手法でやっている」と回答。

これに新谷氏は共感。「新規事業は既存事業と違い、トップマネジメントがすべてを把握できるわけではない。自分たちが諦めずにやりきれるか、それで壁を突き破っていくしかないと思う」(新谷氏)。もちろん、1年後の予測は出し、それを達成できるよう必死に頑張っていると新谷氏。「今、やっていることが世の中的にどのくらいすごいことなのかわからないが、自分がすごいと思い込んでやるしかない。常に24時間365日、仕事にのめり込んでいる」と新谷氏は語る。

平田氏は「うさぎノートはきついKPIが設定されている」と語る。クライアントもついており、先生からも「サービスを続けてください」と言われており、とにかくサービス終了のお知らせをしなくて済むよう、課されたKPIを達成できるよう地道に積み上げて行っていると回答。DeNAもリクルートホールディングスも非常にビジネスにはシビアで、1年間でかなりビジネスが伸びていることが証明できないと、サービスを続けるのは難しいからだ。

ベンチャーやスタートアップでなくても、チャレンジはできる!

最後に麻生氏は、3人にスタートアップに転職した方がよいか、企業内で立ち上げる道を選んだ方がよいかについて意見を求めた。

「大きめな企業でイノベーションが起きるチャンスは増えている。リアルな社会に影響を及ぼすサービスとなると投資額も相当なものになる。例えばDeNAが運営するロボットタクシー株式会社の投資規模も数百億円となっており、5年後には売り上げが立つことが想定されている。
このように投資規模が大きいものに携われるのが大企業での新規事業での醍醐味。ただ、企業内には失敗するトラップもたくさん仕掛けられている。大きな投資が必要のない事業であれば、独立した方が気持ちも乗るし、ゆくゆくのグロースに近づく最短ルートなのではと考える」(大見氏)。

「自分でこんなのを作りたい、こういうものを描きたいというのができるのであれば、どちらでもいいと思う。ただ、企業内で立ち上げる良さは、その会社の強みが生かせること。社内でやることで良いリソースが得られるのなら、社内がいいと思う」(平田氏)。

「テーマによると思う。社会課題と社会インフラを目指したものをテーマにするのなら企業内でやる方がよい。企業にはさまざまな専門部署があるので、迅速に対応できるからだ。もっとクイックにやりたいというのであれば、ベンチャーでやるほうがいいと思う」(新谷氏)。

「自分がやりたいことをやる」「自分をより成長させたい」そんな想いのある人は、まずはサンカクにアクセスすることから始めてみては。本当にやりたかったことに出会えるかもしれない。

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