納豆王国・茨城で絶大な人気を誇る「舟納豆」の秘密に迫る【ネバうまアレンジ付】
地元の人々にとって「ごちそう納豆」的な立ち位置
納豆の生産量全国一といえば、茨城県。
水戸を中心に、納豆は県内で広く生産されています。
水戸発ブランドとして有名な「くめ納豆」や、創業100年を超える老舗ブランド「天狗納豆」などは全国的にも定番の商品ですね。
納豆づくりの中心都市、水戸に行ってみました。
駅周辺のおみやげショップに並ぶ納豆商品の充実ぶりには、びっくり!
そして街を歩けば、飲食店や居酒屋に納豆メニューがあるわあるわ。
納豆キムチや「納豆×刺身」などは基本中の基本。
納豆オムレツや納豆春巻き、納豆のから揚げに磯辺揚げなど、あるもんですねえ。とある店では納豆料理だけで15種類もあり、うならされました。
そんな納豆ワールド、茨城。私はふと、疑問に思いました。
「納豆名産地で育った地元の人々に人気のメーカーって、どこなんだろう?」
と。地味な聞き込み調査を続けたところ、よーく聞かれた答えが、「舟納豆(ふななっとう)」だったんです。
今日はおいしい納豆が食べたい、と思ったときの”ごちそう納豆”です。
ささやかな自分へのごほうびに。
詰め合わせを、お使い物や差し上げ物にもします。
そんな声が実によく聞かれた、「舟納豆」。
東京でも、銀座にあるアンテナショップ『茨城マルシェ』や、ごく一部の百貨店でも買えるんです。さっそく試してみたら、これが評判どおり、おいしい。粒立ちがよくて食感がしっかり。なにより、香りがいいんです。
「茨城マルシェ」では常に人気商品ランキングの上位というのも、納得!
※茨城マルシェでは売り切れのこともあります。訪問前に確認を!
サイトをみれば、まだまだ様々な商品があり、いろいろな納豆の楽しみ方が考案されているよう。メシ通レポーターの白央篤司、大の納豆好きであります。さっそく舟納豆の製造メーカーへ取材に行ってきました!
やってきました常陸大宮市、山方(やまがた)。
上野駅から特急「ひたち7号」に乗って水戸で下車、水郡線「山方宿駅」で降りて徒歩7分程度。ちなみにこちらの山方、あの山形県と読み方が同じという縁で、秋には本場さながらの芋煮大会も開かれるところ。
舟納豆が生まれる現場に潜入
こちらが、舟納豆をつくる「丸真食品株式会社」の販売店。
その裏手には……
久慈川が流れ、山がその対岸にありました。
取材日は4月の初旬、土手には菜の花が咲き、ツクシやヨモギが茂り始めていましたよ。こんな風光明媚なところで、舟納豆はつくられているんだな。
さあ、お店を訪れるとしましょう。
迎えてくださったのは、 マネージャーの会沢 智(あいざわ・さとし)さん。
きょうは遠いところを、よくいらっしゃいました!
どうぞよろしくお願いします!
会沢さんは早速、舟納豆がつくられている現場に連れていってくださいました。
工場の入り口で白衣と帽子をかぶり、入念に手洗い、足裏の消毒をしてから、内部へ。
ああ、豆を蒸している香りがする!
この大鍋で、豆類が一気に蒸しあげられていきます。
ほのかに甘く、生命力あふれる豆の香りが工場内に満ちていました。
大豆はまず水に浸して、それからスチームで一気に蒸すんです。豆の産地や状態、そして季節によって浸す水温と時間、圧力、蒸し時間は微調整します。(会沢さん)
蒸し上がったばかりの大豆。 蒸されたばかりの豆のにおいって、甘いんだなあ。
左の人が大豆をかき出し、右の人が専用の器具で納豆菌を吹きつけています。大量の豆をかき出すのはけっこうな力仕事。
筋肉つきますよ!
納豆菌ならぬ「これがホントの納豆”筋”だ」なんていって、みんな笑ってますけどね。
と、現場のみなさん。
大型の蒸し器がずっと稼働しているので、当然のことながら暑い!
帽子と白衣が体をぴっちり覆っているので、なおさらだと思います。慣れるまでは、さぞかしくたびれるだろうなあ……。
「夏なんかそりゃあ暑いですよ! もちろん冷房もきかせますけどね(笑) 」と、現場を案内してくださった、製造部工場長の廣木和弘(ひろき・かずひろ)さん。
こちらでは蒸しあげられた黒大豆に納豆菌を吹きつけ、パック詰めが行われています。
このあと発酵室に入れられて、豆は発酵し、納豆へと育っていくのです。
豆の種類にもよりますが、18~20時間ぐらい発酵室で寝かせます。気温や湿度はすべて季節や豆の発酵状態によって微調整します。発酵が終わったら、その後冷却して、包装。これで納豆のできあがりです。(廣木さん)
黄金色に輝く納豆は、弾力も粘りも申し分なし
すべての工程をこなせるようになるまで、丸3年はゆうにかかったという廣木さん。「舟納豆」が支持される理由を、率直にうかがってみました。
やっぱり、納豆のおいしさは豆の良さに尽きると思っています。「舟納豆」はすべて茨城県産の大豆100%でつくられています。この小粒の大豆は、納豆菌の繁殖にとても適しているんですよ。そして納豆づくりはまず浸水から始まりますので、水の良さも大事です。水道水を使用していますが、源流は地元の伏流水。この水がおいしいんです。機械化も最小限におさえて、人の手と目でチェックしながらつくっていることも、おいしさにつながっていると思います。(廣木さん)
そして「とにもかくにも、食べてみてください!」と案内してくれたのが、先ほどの店舗内に設置された試食スペース。こちらが充実でした!
「どうぞお試しくださーい!」
すべての商品を試食できる太っ腹なスペース。これがうれしいんだなあ。専任の店員さんがアテンドしてくれるのです。まずは看板商品の「舟納豆」(1パック 141円)からスタート!
なんときれいな黄金色!!
色ツヤがいいなあ。食べてまず感じるのは豆の食感の良さ、その弾力。噛んでいて気持ちがいいほどです。粘り具合も実にしっかり。
うまいっ!
ありがとうございます。豆のおいしさを存分に味わっていただきたいと思っております。従いましてわが社のタレは薄味で、量も少なめなんですよ。そして「経木(きょうぎ)」という松の薄く切ったものを納豆とパッケージの間に挟んであるのですが、それも香味アップにひと役買っているんです。(会沢さん)
まさに納豆天国! おすすめ商品一挙紹介
納豆商品はこれ以外にもたくさん!
バリエーションの豊かさと企画力が「舟納豆」の魅力でもあるんです。以下、一部をご紹介しますよ。
こごいら納豆&黒船
個人的におすすめがこの2つ!
まず写真右が「こごいら納豆」(1パック 281円)といって、切り干し大根と、刻んだ大根の葉が入ったもの。
これ、茨城の郷土料理で「そぼろ納豆」といわれるものなんです。
ただ一般的な「そぼろ納豆」は、切り干し大根と納豆を醤油で味つけして、混ぜて寝かせたもの。ここで大根の葉もさらに混ぜこむのが、「舟納豆」のオリジナル。
ぽりぽりとした大根の食感が加わることで、納豆に新たなおいしさが加わります。
この「こごいら納豆」、ごはんにのせて、熱々のだしをかけて茶漬け風にするとまたおいしいんです。ぜひ試してみてください。(会沢さん)
※人気商品なので品切れのこともあり
そして写真左の「黒船」(1パック 216円)は黒大豆を使った納豆。
これ、すごく食べやすい! 粘りはしっかりとあるのですが、味わいすっきり。黒豆らしい香りの良さもあって、私はおやつ感覚で食べてしまいました。茶々丸
山形県の川西町というところでとれる「紅大豆」を使用した「茶々丸」(1パック 389円)は、大粒の赤豆を使った納豆です。
これが蒸される前の紅大豆。
この納豆のふっくら加減、実に見事でした。ほどよく炊かれた煮豆を食べているような気になるほど。豆自体のおだやかな甘みをも楽しめる納豆なんです。
お酒のつまみにおすすめ「ワイン de ナットーネ」
大の酒好きの私としては個人的にイチオシなのが、こちら!
「ワイン de ナットーネ」、トマト&バジル味とチーズ味(各216円)。
開けてみると、こんなふうにチーズ風味のペーストが入っていて、それを納豆につけて食べるもよし、全体にからめるもよし。豆はさきほどの「紅大豆」が使用されています。意外な相性の良さにびっくりすること、うけあい。
クラッカーにのせて軽く黒コショウをひいたら、これがまたうまいんだ!
ワインはもちろん、ビールや日本酒のつまみにもいいんですよ。ゆでたてパスタにからめてもいいだろうなあ。
社員さん直伝のアレンジ料理 ア・ラ・カルト!
さて、納豆といえば私は断然「白めしと一緒派」なのですが、ここでマネージャーの会沢さんから「待った!」が入りました。
やっぱり納豆は単品で食べたいですねえ。納豆のおいしさを純粋に味わえるじゃないですか。(会沢さん)
うーむ。
そりゃあ納豆メーカーとしては、純粋に単体のおいしさを味わってほしいだろうけれどなあ……。
いやいや、それだけではないんですよ。うちで働くみんなは、かなり自由にアレンジして楽しんでますもん。(会沢さん)
えっ!
それ、すごく知りたい みなさん、どんなふうに納豆を食べているんですか!?
というわけで、「舟納豆」が誇る販売担当のみなさんに聞いてみました。
興味深いアレンジがいっぱい!
◇納豆バゲット
まずよく聞かれたのがこちら。切ったバゲットに納豆をのせ、とろけるチーズなどを加えて軽く焼くのだそう。朝ごはんにもいいそうです。やってみたら確かにおいしい。ピザソースを足してみれば、これまた好相性!
◇唐辛子&ニンニク&ゴマ油
刻んだニンニク、ゴマ油、唐辛子で納豆を和えるというレシピ。「酒のつまみに最高!」とのことで、やってみたら確かにうまい。唐辛子ではなく七味でやるとさらに手軽にできますよ。
◇納豆汁
山形や秋田南部の郷土料理としても知られる、納豆汁。
味噌汁に軽く叩いた納豆をのせたものですが、とある店員さんから、
「すった豆腐を入れてもおいしいんです。もうどれだけ大豆好きなんだって感じですね(笑)」
とのお話を聞いて、早速ためしてみました。うーん……う・ま・い!
味噌と納豆と豆腐、それぞれの大豆のうまさが交互に押し寄せて、実に飲みよいものでした。一緒に入れる具はなんでもいいようですが、里芋やニンジンなどを入れて豚汁風にしてもおいしい。
ちょっと胃が弱ってるとき、食欲のないときなど、具無しのみそ汁をつくって、このやり方で食べたら体にも良さそう。味が薄いときはちょっと醤油を垂らしてもおいしい。
そのほか、
「アボカドを刻んで納豆をのせて、好みのドレッシングをかける」
「トマトと玉ネギを細かく刻んで、納豆に混ぜて、好みのドレッシングをかける」
といった、ドレッシングとの合わせ技が聞かれました。サラダにトッピング感覚で納豆が使われているようですね。
いやー、納豆アレンジ料理……奥深いなあ。いろいろ教えてくださった「舟納豆」のみなさん、本当にありがとうございました!
ちなみに、私からも一品、納豆アレンジテクを。
スジコ on 納豆
これ、新潟の親戚に教えてもらって以来、ハマっています。うまいんですよ!! コクのあるもの同士が相乗効果でうま味を高めあう感じ。一度やってすっかりやみつきになりました。ぜひおためしを!!
さて、2016年茨城納豆の旅もそろそろ終わり。取材帰りに常陸大宮市のスーパーに寄ってみたら、なんと……
納豆用の小粒大豆が売られていました。さすがに自宅で作る人はあまりいないようですが、販売されてるのがすごいですね。思わず買ってしまいましたよ(笑)。
茨城の納豆文化の深さ、厚さ、感じ入りました! 【最新情報】
7月10日(日)納豆の日にちなんで、ねばーる納豆レシピコンテスト開催中。最優秀賞は納豆1年分!
お気軽にご参加ください。詳細はこちら。
お店情報
丸真食品株式会社
住所:茨城県常陸大宮市山方477-1
電話番号:0120ー042ー770
営業時間:9:00〜18:00
定休日:元日のみ
ウェブサイト:https://www.funanatto.co.jp/
撮って書いた人:
白央篤司(はくおうあつし)
フードライター。雑誌『栄養と料理』などで連載中。「食と健康」や郷土料理がメインテーマ。著書に「にっぽんのおにぎり」「にっぽんのおやつ」(理論社)「ジャパめし。」(集英社)がある。 facebook:atsushi.hakuo ブログ:独酌日記
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