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きっかけは音楽だった!感情のコントロールが難しい認知症高齢者には気づきのケアを

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ご高齢者や認知症が進んだかたにも楽しんでいただける音楽会、「音楽の花束」を主催しておりますGOTOです。

GOTOは現在デイサービスの中で、認知症のかたのケアに効果的に音楽を取り入れる方法を研究しています。研究はまだ途上ですが、GOTOが経験してきたいくつかのエピソードを書いてみます。

音楽の時間だけではなく、常に寄り添うことを心がけています

GOTOのデイでのスタイルは、ほかの介護スタッフと一緒に朝からスタートします。「音楽の時間だけ提供する」のではなく、ご利用者さまひとりひとりにしっかり結びつくサービスをするため、まずは「スタッフとしてそこにいること」が大切だと考えたのです。

送迎やバイタルチェックでも常に会話し、顔を合わせ、手を取りあいます。これは「ものがたり診療所」の松嶋大医師の講演で、ひとりひとりの患者さまの「人生のものがたり」に寄り添う姿勢に感動したことや、「educareplanet」佐久間由香氏と「きらめき介護塾」渡辺哲弘氏の企画による「心がみえると心がつながる~認知症の人の気持ちとコミュニケーション実践講座」で、認知症の進行を遅らせるには「安心できる環境づくりが大切」と痛感し、これらをデイの生活で実践したものです。

例えば体温計できちんとした数字が出ないときは、ご利用者さまの腕を両手でそっと抑えます。「あら、なんだか嬉しいわ」とニッコリなさって、信号音が鳴るまで笑顔で見つめ合いながら過ごしたこともあります。

入浴のお世話もします。慣れないので、ひとつひとつ聞きながらお手伝いします。少々の手際の悪さは笑ってくださり、「あなたはいろんな歌を知っているわね、それじゃあこんな歌を知っているかしら」と浴槽で歌ってくださったかたもありました。

不慣れなケアを音楽がカバーしてくれた

どのエピソードも有難さを感じると同時に、もっと介護の技術や知識を持たなければと思った出来事ばかりです。

あるときひげそりのお手伝いが上手くできず、ご利用者さまから「ほかの手際のいいスタッフから勉強しなさい」と諭されたことがあります。すると、隣にいた方が「この人の歌を聴いたかい、この人は音楽のプロなんだ。すごいんだ。ヒゲがそれなくても、すごいんだよ」と話してくださり、涙が出るほど有り難く、感激しました。前述のかたは現在ご自分でひげそりができるところまで機能回復され、このときのことは笑い話になっています。

こうしたエピソードの中でGOTOは改めて、音楽をケアにつなげることをもっともっと、極めていかなければと強く思いました。

筆者が経験した音楽の活用方法

認知症の女性で、少々気難しいと感じられるご利用者さまがいらっしゃいます。感情のコントロールが容易でなく、楽しそうであってもいつお怒りになるかわからずハラハラします。会話は長く続かず、いったん感情的になると施設から出て行きそうになったり、大きな声を出されたりします。こうした時はスタッフの話すことも意味が伝わらなくなってしまうようです。

ほかのご利用者さまとのコミュニケーションも難しく、皆、神経をすり減らしていました。

少しの変化も見逃さないようにする

その方に出会った最初の日、感情的になっていらっしゃった時にピアノの演奏を始めると椅子に腰掛けてじっと聴き入り、体をゆらしてリズムをとり始めました。実は音楽がお好きだったのです。歌を歌うとにこやかになり「いい歌ね」などと話をされました。

だんだんに、日本歌曲や高峰三枝子の歌などがお好きであることがわかってくるなど、スタッフとの会話が少しずつ増えてきました。

音楽は手段ではなくきっかけ

別のある朝、BGMにオカリナ演奏をかけてみました。険しい表情が瞬間的に和らぎ「アラ、いい音楽をかけている」「これは何」と聞かれましたので、楽器の写真がCDケースをお見せしたところ、「あんまり知らないけど、綺麗な音だ」とじっとそれを見ながら、何度もそのCDを聴かれました。それからはBGMにもときどき注意を向けるようになり、いろいろな音楽を楽しみながら周囲のかたと会話をされるようになりました。

より良いケアが実現

デイの生活でのキーポイントのひとつに、「帰りの時間」があります。スタッフも慌ただしく、人が少なくなれば寂しい気持ちも出てきます。このかたも落ち着かなくなり、席から何度も立ち上がったり、大きな声を出されたりすることが多くありました。

この時間にも音楽をご提案してみました。すると穏やかな表情になりピアノの前や横に椅子をもって来て、ピアノをじっと見つめたり、一曲ごとに拍手をされ、ほかのご利用者さまも交えて曲についての話をしたりされました。

曲の途中で送迎時間が来ると、「あらもう帰るの?歌の途中なのに」「時間ですのでお送りします」などというやり取りまで起きるようになりました。「わたしはこういうのが好きだから、ありがとう。楽しい時間だった」と言ってにこやかに帰られる姿を見送りながら、スタッフ一同「今日も楽しく過ごしていただけてよかった」と語り合うことが増えました。

気分が安定し、会話が増えたことで、当然アセスメントが取りやすくなります。その日の体調や好きなもの、好きな話題がわかってくるなど連鎖的にそのかたのQOLを高めるための情報が充実していきました。

ほかのご利用者さまとの関係も以前に比べると良好になり、現在はデイでの生活がかなりスムーズに動き始めています。笑顔が増え、ご家族様からもご自宅で何か気分を損ねるようなことがあった日は、「デイで気分を直して」と伝言付きで送り出されるようになりました。音楽とスタッフとの連携で、ひとりの方の生活をここまで支えることができている、貴重な経験です。

音楽がきっかけでケアの方法が明確に

認知症のかたのご様子は日々変わりますので、スタッフ同士で様子をみながらどう接するか、どんなご提案をするか考えて対応していきます。この方について音楽がお好きとわかった当初、スタッフからは度々「今ちょっとお顔が険しいから、ピアノ出してください」と声がかかっていました。

しかし、現在はこの方に関する情報がとても多くなり、スタッフ全員がそれを共有できているため、どのスタッフからも「ちょっとお顔が険しいからお手洗いに誘導してみますね」「図鑑を出してお話ししてみましょう」など、具体的な方法が出てきます。「音楽でなんとかして」と言われることは激減しました。

GOTOのデイでの模索はまだまだはじめの一歩。
次回も引き続きお付き合いくださいませ。

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この記事を書いた人

後藤 京子(GOTO)

「音楽の花束」代表。星美学園短期大学講師。東京音楽大学卒、同大学第2副科オルガン専攻修了、邦楽演奏コース長唄三味線専攻修了。1986年日本ピアノコンクール全国大会第3位、受賞記念演奏会出演、1987年読売新人演奏会出演。NHK邦楽技能者育成会に学ぶ。短大西洋音楽史講師、小学校音楽科教諭を経て2004年より「音楽の花束」のプロデュース活動を始める。2015年きらめき認知症シスター(きらめき認知症トレーナー協会認定)取得。カトリック東京カテドラル関口教会オルガニスト。デイサービス「空の花 高井戸」取締役副社長。>>公式サイトへのリンクはこちら「音楽の花束」

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