“御用学者”と呼ばれた北大教授 「第二次大戦とまったく同じ」

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「ネット上には私の悪口が7000件あった」

 「御用学者」とは、政府や権力者の利益となる説を述べる学者をいう。その「御用学者」のレッテルを貼られたと自ら語る北海道大学の奈良林直教授は2011年10月14日、北海道大学の学生向けに行われた特別講義を行った。奈良林教授はこの講義で、福島第1原発事故後の日本社会について、「第二次世界大戦のときとまったく同じ状況」が現れていると述べた。これは、大本営発表に依拠したマスコミ報道が国民を戦争に駆り立てたことと、震災後のマスコミ報道が「原発をすべて止めても大丈夫」だと国民に思い込ませていることとの類似性などを指摘した発言だ。

 この特別講義は北海道大学とニコニコ生放送、そして朝日新聞が運営する言論サイト「WEBRONZA」が連携して行うもので、第1回の10月14日では東芝の元社員で現在は北海道大学大学院工学研究院教授の奈良林教授が「福島第1原発事故の分析と教訓」をテーマに講演した。

 奈良林氏はまず、1986年にソビエト連邦で起きたチェルノブイリ原子力発電所事故の教訓として、「健康被害も環境被害も当初恐れられていたよりはるかに少なく」、一方で、「事故により失業したり、住み慣れたところから離れなければならなくなったことで無気力になった」といった精神的被害が大きかったと語った。加えて、放射線の影響で奇形児が生まれる可能性が高まると当時のマスコミが報道したことによって、「お腹の中の赤ちゃんが心配になって、堕ろしてしまったお母さんがヨーロッパ全体で6000人」いたという。奈良林氏は続けて、

「こういう悲劇があった。私はこれを知っていましたから、テレビに出るときはそういうセンセーショナルな言い方や事実を過大に説明して恐怖を煽るような言い方は避けなきゃいけないと思って、冷静な説明や解説をした。ところが、街中にあふれている週刊誌などはものすごい恐怖を煽るような、お母さんたちにとってはいたたまれないような記事になっています」

と言い、マスコミ報道が「原子力の風評被害を煽る方向にシフトしていて危険な状態だ」と指摘した。

 奈良林氏はまた、マスコミ報道の影響で、「(原子力行政については)10年間かけて議論しなければ結論が出ない問題にもかかわらず、いま”脱原発”をしても日本は立ち行くのだ、大丈夫だとみんな思い込んでいる」とも指摘。日本が第二次大戦に突き進んだ理由として、大本営発表に依拠したマスコミ報道により、国民が「神風が吹けば日本が勝つ」と思い込まされたことと、現在の状況を重ねた。奈良林氏は、

「(当時、)『戦争は危ない』と言っていた人を”非国民”と呼び非難した。それが日本の社会だった。いま、『原子力は大事です。安全性を高めなければならないです』と言うと、”御用学者”だと非難される。私はいま、第二次世界大戦のときとまったく同じ状況ができてしまっていると思います」

と強い調子で述べた。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 「チェルノブイリの教訓」部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv67029202?po=news&ref=news#0:32:48
・北海道大学公共政策大学院(HOPS)
http://www.hops.hokudai.ac.jp/
・WEBRONZA
http://webronza.asahi.com/

丸山紀一朗

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