「シニアに優しい街 北九州」をちゃんと知れるお試し居住[前編]

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「シニアに優しい街 北九州」をちゃんと知れるお試し居住[前編]

24時間スーパーやアーケード商店街。今では全国的に当たり前になっている施設が実は北九州が発祥、と言うことをご存じだろうか。そう、何気に生活の利便性が“ちょうどいい”まちとして知る人ぞ知る、福岡・北九州市。そのまちが最近、アクティブシニアの移住検討者に向けて「お試し居住」をスタートさせたという。一体どんな取り組みなのか、その内容を聞いてきた。

高齢者に優しい政令指定都市

北九州市は政令指定都市のなかでも最も高齢化が進展しており、全体の28.2%(平成27年4月)が65歳以上と多い。実際、まちを見渡してみてもシニアの方々が商店街で談笑している姿や広場でスポーツを楽しんでいる光景をよく目にした。

そんな地域性もあってか北九州市は介護・医療機関の体制が手厚く、人口10万人当たりの病床数が20政令指定都市のなかで熊本市に次ぐ第2位、また救急車要請後の病院到着までの時間も大都市のなかで福岡市に次ぐ第2位となった。日常の健康管理はもちろん、いざというときのサポート体制が全国のなかでもトップクラスに入っており、シニア層やその家族にも心強い。

また物価や家賃、水道代などの生活に必要不可欠な支出平均額も全国3位以内という安さを誇り、暮らしやすさも相まって政令都市でありながらもシニアにも優しいまちが実現できているのだ。【画像1】20政令指定都市のなかで病院病床数、一般診療所病床数は熊本市についで2位(出典:北九州ライフ) 【画像1】20政令指定都市のなかで病院病床数、一般診療所病床数は熊本市についで2位(出典:北九州ライフ)【画像2】さらに大都市のなかで119番受信から病院到着までの時間は何と東京の約半分。病院数も多いので、患者をたらい回しにされることがほとんどないそうだ(出典:北九州ライフ)

【画像2】さらに大都市のなかで119番受信から病院到着までの時間は何と東京の約半分。病院数も多いので、患者をたらい回しにされることがほとんどないそうだ(出典:北九州ライフ)

数週間の滞在で住まいや職の状況を深く知れる「お試し居住」

シニア層に優しいまちづくりが出来ている北九州市。であれば、このまちの特色を全国的に発信し、アクティブシニア層への移住を積極的に行おうと、昨年末より「北九州市版CCRC(※)構想」を掲げ、シニアの移住促進に向けて「お試し居住」をスタートさせた。

※Continuing Care Retirement Community(継続介護付きリタイアメント・コミュニティ)

CCRC構想とは、地域住民や多くの世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくりを目指す考えのこと。北九州市は、アクティブシニアが培ってきた経験や技術を活かして地域社会で生き生きと活動する場となるよう「お試し居住」を通じて市への移住をすすめ、より多くのアクティブシニアの定住化を目指す。

お試し居住は50歳以上の男女が対象。滞在期間は2〜4週間で、担当者との事前面談にて日数を調整。期間中は市が提供するウィークリーマンション等で生活しながら、グループまたは個別で観光名所や介護施設、地元企業などを訪問し、北九州市がどんな街なのかを体感してもらう。

第1回目のモニターは東京で開催された移住相談会にて決定、全部で8組9名がお試し居住を利用したが、メンバーの目的はさまざまで、ついの住みかを探す人や職探し等、自分たちが気になる施設や会社、コミニュニティスペースなどを担当者と相談しながら決めていき、1日平均2〜3件ほど訪問先を回った。

滞在中はコーディネーターが同行し、訪問先の詳しい説明や質疑応答はもちろん、参加者の希望になるべく沿える様に滞在プランの見直し等も随時対応してくれるので、訪問先が画一的でなく自由度が高いのが一般的なお試し移住と異なる大きな魅力だ。参加者のなかには知り合いづくりのためにと地元の人が集まるコミュニティに参加し、お試し居住が終わった今でもSNSでやりとりをして会話を楽しんでいるそうだ。【画像3】八幡の老人介護施設「ふらて会」を見学したときの様子。入所者の元気の良さに参加者からも笑みがこぼれる(画像提供:北九州市) 【画像3】八幡の老人介護施設「ふらて会」を見学したときの様子。入所者の元気の良さに参加者からも笑みがこぼれる(画像提供:北九州市)【画像4】北九州の台所と呼ばれる「旦過市場」。新鮮な食材を安く食べられることも魅力のひとつ(画像提供:北九州市) 【画像4】北九州の台所と呼ばれる「旦過市場」。新鮮な食材を安く食べられることも魅力のひとつ(画像提供:北九州市)【画像5】北九州市はリノベーションが盛んなまちでもある。コワーキングスペース「秘密基地」は、以前はビリヤード場だったそうだ。この場所でお試し居住を終えた参加者たちが市長を交えて報告会を実施した(写真撮影:フルカワカイ) 【画像5】北九州市はリノベーションが盛んなまちでもある。コワーキングスペース「秘密基地」は、以前はビリヤード場だったそうだ。この場所でお試し居住を終えた参加者たちが市長を交えて報告会を実施した(写真撮影:フルカワカイ)【画像6】企画調整局 地方創生推進室・岩田健さん。お試し居住の企画立案から説明会開催、訪問先のアテンド、参加者のフォローまで担当。地元の企業訪問や介護施設には知り合い同士の繋がりで紹介した場所も多かったとのこと。「個人的ネットワークが強いまちなんです。困ってると

【画像6】企画調整局 地方創生推進室・岩田健さん。お試し居住の企画立案から説明会開催、訪問先のアテンド、参加者のフォローまで担当。地元の企業訪問や介護施設には知り合い同士の繋がりで紹介した場所も多かったとのこと。「個人的ネットワークが強いまちなんです。困ってると”何とかしよう”と手を貸してくれる人も結構多いですよ」と語る岩田さん(写真撮影:フルカワカイ)

「北九州の良さは住まないと分からない」

参加者からは「今まで製鉄所のイメージが強かったが、緑も多く、海も近い。水も綺麗で食べ物が美味しい。適度に都会で適度な田舎がちょうどいい」といった声も聞かれ、印象が変わった人も多かったようだ。

その理由を北九州市役所・企画調整局 地方創生推進室の岩田健さんはこう語る。

「実際のところ、北九州の良さは住まないと分からないことだらけなんです。物価が安い、移動が便利、公園が広い、孫と遊べる施設もたくさんあるってことをデータばかりに頼ると、どうしても首都圏や地方との違いが打ち出しにくい。けれど実際に住んでみたらこのまちの総合的なバランスの良さを肌で感じるはずです。

そもそも移住って、都会か田舎のどちらかを選択するって傾向が強いですけど果たしてそうなのかな?って思うんですよね。環境云々より自分がこのまちに来たらどんな役割で社会に関われるか、そのイメージを実現したいかどうかを判断基準として設けるべきなんじゃないかな。

そういう価値観を持って北九州市に住んでみると、まちの規模や人との繋がりは、きっと”ちょうど良い”と感じていただけるのではないかなと思います」

移住をしようと考えたときに、地方に行けば首都圏よりは収入は落ちる。仕事も自分の希望する職種が必ずあるとは限らないのが現実だ。だからその分、自分が何を優先して移住をするのか主体的に物事を考えて決断する必要があるのかもしれない。

「第二の人生というより第一の人生で出来なかったことを北九州でやる。そんな可能性を感じてまずはお試し居住に参加してもらえたら理想的です。北九州市は便利な割に人との距離がとても近い。そんなアナログの関係を楽しみながら新しい何かを生み出してくれるようなパワーのある方に来て欲しいですね」

結果、第1回目のお試し居住では参加した8組のなかで2組が移住を前向きに検討し、現在は北九州市内で物件情報を集めている最中だ。

説明会はこれからも首都圏で定期的に実施していき、第2回目の参加者を募集する予定だそうだ。次回は第1回のお試し居住参加者の生の声をレポートする。●参考

北九州市に移住・定住するための北九州市公式情報サイト「北九州ライフ」
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