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ジョイス・モレーノがピアノと真正面から向き合った極上のダイアローグ(Album Review)

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ジョイス・モレーノがピアノと真正面から向き合った極上のダイアローグ(Album Review)

 まるで風物詩のように、夏になると聴こえてくるジョイスの歌声。ブラジルを代表するシンガー、ジョイス・モレーノは、芸歴50年を数えるほどのベテランだ。しかし、今もなお誰もが認める現役であると同時に、常に新しい作品に挑戦していることでも知られている。しかも、コンスタントにニュー・アルバムを発表することもあって、目が離せない存在なのだ。

 そしてこの度発表された新作『ポエジア』でも、新しいトライを行っている。本作は、ジャズ・ピアニストのケニー・ワーナーとの完全デュオ作。ケニー・ワーナーは、ニューヨーク出身で、ジョー・ロバーノやマーク・ジョンソンなどとの共演でその名を轟かせた凄腕だ。ジョイスとは90年代初頭に共演し、家族ぐるみの親交をあたためてきたという。しかし、がっつりと四つに組んだ作品は今回が初。まさに、熟練同士で息をぴったりと合わせた親密な作品なのだ。

 聴きどころは、リリカルな表現が見事なピアノと艶やかな歌声の融合だろう。歌とピアノ以外の楽器は一切入っていないだけに、呼吸や間合いまでも音楽へと昇華されている。そして、オリジナル、ブラジルの名曲、世界中のスタンダードといったバラエティに富んだ選曲ながら、すべてが同じトーンでしっとりと聴かせてくれるのだ。ブラジルの楽曲は、アントニオ・カルロス・ジョビンの「オーリャ・マリア」やエドゥ・ロボ「さよならを言うために」といった通好みのナンバーが中心。もちろん、いずれもジョイスらしいクールな雰囲気で歌い上げていく。

 しかし、さらに興味深いのはよく知られたスタンダードだ。「マッド・アバウト・ザ・ボーイ」や「サム・アザー・タイム」といったジャジーな作品はケニーのピアノが安定の輝きを見せるし、ジョアン・ジルベルトのヴァージョンでお馴染みの「エスターテ」のノスタルジックな世界観も絶品。そして、誰もが知っているチャップリンの名曲「スマイル」やスコットランド民謡の「ザ・ウォーター・イズ・ワイド」といったメロディを、デュオで奏でることによって新鮮な響きを作り上げている。ブラジルらしいリズミカルなジョイスもいいが、ピアノと真正面から向き合ったダイアローグもまた格別で、いつもとは違う彼女の魅力に気付く美しい逸品だ。

Text:栗本 斉

◎リリース情報
『ポエジア』
ジョイス・モレーノ&ケニー・ワーナー
2016/05/25 RELEASE
2,592円(tax incl.)

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