観光客には特に優しい!? 店主とほっこり話がはずむ路地奥のカウンター小料理店【秀屋食堂】
こんにちは、ビールが飲めないメシ通レポーターの松永ですが、今日は京都駅前にある居酒屋取材に行ってみたいと思います。
張り紙ばっかりの謎めいたお店だそうですが……どんな所だろう。
場所は、京都駅からほど近く、七条新町の交差点のすぐ近くにそのお店はありました。
京都タワーの北側ですね。
路地の向こうに提灯の明かりが見えてきました。
入り口までくるとこんな感じです。
張り紙、手書きの筆文字がとてもいい具合の、なんとも「知る人ぞ知る」という感じを醸し出しています。
秀屋食堂を「ひでやん」と読ませるのは、ちょっと大阪っぽいというか、もしかしたらとても怖い偏屈なマスターがいたりするのかも。
直前になってビビってしまいつつ、恐る恐るドアに手をかけ……行ってみます!
なんといきなり階段でした。
まさかの階段。手前に存在感のある置物が置いてあります。桶でしょうか。なんでこんなところにあるんだ。
階段を上ってみると、 カウンターが出現。店内は小粋な小料理店といった感じです。
ちょっと怖そうなおじさまが……かと一瞬ひるむと、「あっ、いらっしゃい。どうぞ」ととても優しい声で出迎えてくれました。 この方が店主の秀やんさん。穏やかでとても優しい調子です。ホッとしました。
お名前をうかがうと、「秀やんでいいです」とのこと。本名が秀徳(ひでのり)なので、その一字を取って秀屋食堂という名前にしたのだとか。「屋」をやん、と読ませるのが、訛りのような、地元感があり馴染みやすくもありますね。
ちなみに、BGMはソウルミュージックという、趣味にファンキーさを垣間見せるおじさまです。 お店は、カウンターが4席、4席のテーブルがひとつというコンパクトな空間ですが、居心地はいい感じ。
店内を見渡してみると…… 壁という壁にウワサ通りのたくさんの張り紙!半分は京都の観光スポットのチラシでしょうか、なんだか観光案内所みたいでもあります。
メニューはわかるんですが、どうして京都観光のポスターまで?
というのも、どうやらここは京都駅も近く、観光客の方が迷い込んでくるというケースが多いようです。外国の方も多く、その時にいろいろと名所やおすすめなどを聞かれるそうで、説明のために資料を集めていった結果なのだとか。ちなみに、今のおすすめは北野天満宮の梅園だそうです。
手書きのメニューは、もちろん秀やんさん直筆。
「それ(居酒屋)っぽいでしょ?」ということでした。
単なるお品書きだけではない、コメントや工夫が楽しめる感じにもなっています。 早速ビール……ではなく、おすすめの日本酒をうかがうと、滋賀の地酒を出していただきました。
湖弧艪(こころ) 800円
すっきりとしてとても飲みやすいです。すみません、ビールが飲めなくて……。
日本酒は地酒が約30種類ほど。9割が伏見のもので、他には奈良や滋賀のお酒も。こちらも観光客の方からの「京都の地酒を飲みたい」という要望で揃えられたものなんだそう。
メニューも適当にお願いします、ということで出していただいたのが、鴨のやわらか煮と、明太子と板わさ盛りです。
鴨のやわらか煮 500円(税抜)、明太子と板わさ盛り500円(税抜)
小粋な感じで美味しいです。少々味付けは濃いめですので、お酒が進みます。
料理を作っていただいている間に色々うかがってみると、どうやら秀やんさんは、出身は福岡で、大阪では20年以上、京都では8年、ラーメン店を経営したり、弁当屋さんなどで働いたりしてきたそうですが、「なんでも好きなものを作れるから」和食のお店をしたいと思い、縁あってこの場所にお店を出すことになったのだとか。オープンは2015年の2月なので、取材時でだいたい丸1年です。
「いやあ、料理は普通ですよ。ただ料理が好きなだけですから、大したことないです。料理店なんてね、明日からでもできますから」と言いますが、野菜は地のもので、その日に仕入れたものでしか作らなかったり、青森産のホタテを仕入れたり、ベーコンを燻したり、食材にもこだわりがありそうな感じで品数もとても多いのですが、あまり多くを語ってくれません。その全てを出さないところが逆に興味をそそります。
「続けるのが大事なんですよね、続けるのが」と秀やんさん。 さて、次の料理が出来上がりました。骨付き豚バラ煮込み、あさりの酒蒸しともに500円です。 豚バラはとても柔らかく、酒蒸しも塩味が効いていてなんとも美味。
骨付き豚バラ煮込み500円(税抜)
あさりの酒蒸し500円(税抜)
そういえば、入り口にあった桶はなんなんですか? と聞くと、 「私、アンティークとか、古いものが好きなんです」とのこと。 そう言われて再び店内を見渡すと、棚に置物に、なんだか古そうなものが並んでいました。
休日にはたまに古道具店などに行き、お店で使えるものを探しているそうです。この状態はまだまだで、もっと器なども揃えたいのだとか。
続けて、趣味は他にもあるんですか? と尋ねると、 「海に行きますね」との返事。海ですか? 「ええ、福井の海に車で行って、小浜の船宿に泊まったり、キャンプをしたり。鯖街道を抜けるとすぐですよ」。
夏は海に潜りに、冬はフグやカニと温泉だそうです。秀やんさんは、小浜に素泊まり数千円で泊まれるという古い宿を知っていて、月曜や火曜の誰もいない時を狙って月に数回、お店が休みの時はほとんど通っているという、かなりの福井好きなんですって。ますます底の知れないキャラクターだ!
ふと写真の上のカレンダーに目をやると、大量のメモ書きが!
「これはお客さんがどうだったかをメモしてあるんですよ。忘れちゃうんでね」
予約をした人数や、外国人ならどこから来たのか、どんな人たちなのか。横には来られた方の名刺や一緒に撮影した写真なども飾ってありました。体育会系なのかなと思ったけど、かなりの几帳面で、思いやりのある方なんだなぁ。優しい秀やんさんの一面を発見です。
というところで、隣にいた女性が、北海道から来られた観光客の方だと判明。
雑誌を見てこちらのお店に来られたそうです(入り口はちょっと入りづらかったみたい)。 「おすすめの場所はありますか?」という質問に、秀やんさんが流暢に話をしはじめます。雑誌も調べて15分ぐらい一気に、色々とアドバイス。
これまで観光の方を色々相手されてきた感じがわかります。
一息ついて、万願寺唐辛子と三元豚巻き焼きが登場。「京都といえば万願寺」というくらい、有名な京野菜ですね。この万願寺唐辛子、なんと種まで入っています。それがほどよい食感と甘さで予想外の美味しさ。メニューのアイデアも遊び心が利いてます。
万願寺唐辛子と三元豚巻き焼き 700円(税抜)
そろそろ締めに何かいただこうかと思ってメニューを改めて見ていると、中華そばの文字が! 以前にラーメン店をされていたと話していたのでこれは期待できる、と思って注文すると「今日は麺がないんですよ」 との回答が。なんと残念!
設備がないので、ラーメン店の時のようにはいかないそうですが、ラーメンの味には自信ありとのこと。実はラーメン店の時に買ったという業務用の製麺機は今も持っていて、それで作るととても美味しいのだとか。今のお店には置けないから出してはいないが、いつかは本格的なラーメンも出したいとお話しいただきました。それは楽しみです。
だし巻き 500円(税抜)
結局、締めは隣の女性からおすそ分けしていただいた、だし巻きを1切れいただき、ごちそうさまでした。
謎の張り紙のお店は、人懐っこく心優しい店主がいる、小料理店兼観光案内所でした。観光客にも人気がありつつ、地元の方にも支えられているとのことですので、観光がてらの晩ご飯にも、地元の人の一杯にもオススメです。
店舗情報
秀屋食堂
住所:京都府京都市下京区新シ町138
電話番号:080-4766-2164
営業時間:18:00~丑三つ時(翌2:00頃)
定休日:不定休(月2回休)
書いた人:
松永大地
1981年、静岡県生まれ。大学から京都に住み、早17年。出版社、大学勤務を経てフリー。唐揚げとミルクが好物です。お酒は極めて弱く、チューハイ2杯が限界ですが、酒場とアテは好き。
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