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「体外」で、55種類の人の大腸がん腫瘍を完全培養することに成功。

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国内における大腸がんの死亡者数は、2015年度に女性一位を記録、年々増加の一途にあり、2020 年には男性で 2位に上昇すると予測されています。

大腸がんは今、大きな社会問題となっています。進行し、手術不可にある大腸がんには根本的な治療法が確立されておらず、新しい治療薬の開発が現在も精力的におこなわれています。

これまでの治療薬の開発には、体外での培養が容易な「がん細胞株」(※)を利用した研究手法が用いられてきましたが、これは患者の腫瘍の性質と大きく異なることから、がん細胞株で開発した薬剤の多くは臨床応用ができず、開発効率の低さが大きな問題となっていました。

(※)これまでおよそ 50 年間の研究により、約 60 種類の大腸がん細胞株が、様々な研究や創薬に用いられている。しかし、通常の細胞培養で育つ“がん細胞株”は、患者腫瘍の性質を必ずしも反映していないことがわかっている。

今回の研究概要

慶應義塾大学 医学部内科学(消化器)と、東京大学医学部 腫瘍外科研究グループは、患者から採取した腫瘍組織を 6種類の異なる増殖因子の組み合わせで培養し、ほぼ全ての種類の大腸腫瘍を「オルガノイド」(※)として、効率的に長期間培養できることを突き止めました。

(※)たった 1 つの幹細胞から生体内の組織に似た構造を培養皿の中で作り出す技術。こうしてできた組織様構造を、オルガノイドと呼ぶ。オルガノイド技術により、胃、小腸、大腸、肝臓など、様々な組織の幹細胞を無限に増やすことが可能になる。

この新しい培養技術を用いて、55 種類の様々な大腸腫瘍オルガノイドを作りました。作成された大腸腫瘍オルガノイドは、患者体内の腫瘍と同様な遺伝子発現パターンや、組織構造を再現することができます。

大腸腫瘍はさまざまな“かたち”(組織構造)を示していて、その組織構造は腫瘍の悪性度や、患者の予後と大きく関係することが分かっています。

現在の治療においても、患者から採取した腫瘍を病理検査することで、治療法の決定や予後の推定をおこなっています。最近では、採取した大腸腫瘍の遺伝子の変異を調べることも可能です。

こうした腫瘍細胞の“動かぬ性質”を元に 医師は、血液検査や CT スキャンなどの画像検査をおこない、腫瘍の進行を予測します。しかしながら、これまでは患者の体内で起こる細胞レベルでの腫瘍の動きを完全に捉えることができていませんでした。

本研究成果により、患者の腫瘍からオルガノイドを作ることで、その腫瘍が体内でどのように振る舞うか? 例えば、転移能などをマウスの中で観察することができるようになりました。

作成されたオルガノイドを マウスの体内に移植すると、患者の腫瘍の性質をそのまま反映します。患者の腫瘍組織の形だけではなく、患者の体内にあったときの転移能力なども再現することが可能です。

このように、患者の腫瘍を培養皿の中やマウスのような小動物の体内で“ミニチュア化”して再現させることで、がんの病態や、新しい治療薬の研究への応用が期待できます。

(本研究成果は、米国科学誌「Cell Stem Cell」オンライン版に2016年5月19日午後12時(米国東部時間)に掲載されました。)

出典:

A Colorectal Tumor Organoid Library Demonstrates Progressive Loss of Niche Factor Requirements during Tumorigenesis

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