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「自分はなんの役にも立たない人間」そんな想いを変えてくれたおじいさんの話

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こんにちは。クラウンアンバサダーの金本です。熊本の震災で被害に遭われた方を思うと胸が痛みます。1日も早い回復を祈るばかりです。

今回は、7、8年前に熊本の施設で出会った男性を通して感じた、笑顔の大切さについてお話いたします。

私たちクラウンは、病気を治すことはできません。しかし、人々の心に灯りをともすことや、その人らしく生きること、豊かな時間を過ごすお手伝いができると信じて、日々活動しています。

前回記事:クラウン的コミュニケーションに学ぶ!シリアスな場面での話し方

ケアリングクラウン、水俣の施設を訪問

8月の終わり、まだまだ暑く、日が照りつけるような中で、水俣にある高齢者施設を訪問しました。かつて水俣湾で問題となった、水俣病(※)の患者さんが入居されている施設でした。

私たちクラウンは色とりどりの衣装をまとい、楽器を鳴らしたり、シャボン玉を吹いたりしながら、にぎやかに施設の中に入っていきました。

施設の奥まったところにホールがあり、一歩踏み入れた途端、「うわー!」という歓声や拍手が聞こえてきました。病気の影響か、手や脚が曲がっている方が多く見られました。

日本の化学工業会社のチッソの熊本県水俣市にある水俣工場が水俣湾に流した廃液による水銀汚染の食物連鎖で起きた公害病である。 そして、環境汚染の食物連鎖で起きた人類史上最初の病気である。 1956年(昭和31年)に発生が確認された。
引用元:Wikipedia

まるでお祭り!入居者さんとの楽しいひととき

初めてみるであろう私たちクラウンを、施設のみなさんは大歓迎してくださいました。あちこちで歌を歌ったり踊ったりと、まるでお祭りのようなにぎやかな空間が広がりました。

身体を揺らして、踊りに参加している車いすに乗ったおじいさん、顔をしわくちゃにしながら、曲がった手で拍手しているおばあさんの姿がありました。本当に楽しかったです!

しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎていきます。1時間ほどすると、施設を出発する時間になりました。名残惜しい気持ちをこらえ、みなさんと握手をし、玄関に向かおうと歩いていると、とある部屋に男性の姿がみえました。

笑顔の力を教えてくれた

70歳すぎぐらいの坊主刈りの男性が、うつぶせでベッドに横たわっており、身体はエビのように曲がって硬着しているようにみえました。ホールではお見掛けしなかった方でした。

「もしかしたら、私たちクラウンが来た事を知らなかったかもしれない、挨拶だけでもできたら良いなぁ」と思い、部屋の中に入っていきました。「なんて声をかけようか?」と考えながら、ゆっくり、ゆっくりと。

その男性は私の事に気づいたのか、ふっと身体をもちあげると次の瞬間「にこっ!」と私のほうを向いて笑いかけてくださったのです

あれ?                       
突然のできごとに私の方がびっくり!!

え?!
私が変な格好だから笑ったの?

まるで、ひまわりが咲いているかのような素敵な笑顔で、私を迎えてくださったのです。その笑顔からは優しさが溢れ出ていて、私の心も身体もどんどん元気になっていくようでした。

「自分は役にたたない人間」という思いが変わった瞬間

ベッドサイドに近づき言葉をかけると、言葉にならない声で「うー」と応えてくださいました。お互いに気持ちが通じ合う瞬間でした。言葉を発することは難しく、日常生活を送るには誰かの助けが必要かもしれない。でも、気づかせて貰ったんです!

笑顔ひとつで人をこんなにも喜ばすことができるんだ
笑顔ひとつで人を幸せにすることができるんだ

実はクラウンの活動を始める前、私は欝の症状に悩み、どこかで「自分になんかできることない」「自分はなんの役にも立たない人間だ」と思い込んでいました。しかし、その男性に出会ってから、たとえ笑顔ひとつでも誰かの役に立てることがある、誰かを元気づけることがあると思えるようになったのです。

さいごに


私たちがやっているクラウニングは、大掛かりなパフォーマンスをみせるような派手さはありません。行く先々で出会った方と、時間や空間を共有する事を大切にしています。

笑顔は誰もが持っているものです。最初にもお伝えしましたが、私は病気を治すことはできません。しかし、笑顔が持っている力を知っています。クラウニングの活動を通して出会った方の笑顔に、私たちは元気や勇気をいただきます。そして、今度は私たちが他の施設で笑顔をプレゼントするのです。

最後に、1日も早い熊本の回復と、再び楽しいひと時をともに過ごせることを願っています。

撮影:細川隆行

この記事を書いた人

金本麻理子

東京都港区生まれ。幼稚園教諭、在宅訪問介護士を経て現在はケアリングコーチとして医療・福祉従事者、教育者を中心にサポートしている。その他、美容専門学校、医大生、NPO団体、医療・福祉従事者向けの「ケアリングクラウンの観点から考えるコミュニケーション」の講演会、ワークショップなどを開催。子育て中のお母さんたちへのグループコーチングのファシリテーターも行っている。
2003年11月アメリカ映画「パッチ・アダムス」のモデルとなったDrパッチに逢ったことが転機となり、彼と共にロシア、中国、チベット、イタリア、エクアドル、アメリカなどの施設や病院などをクラウンとして訪問し、日本でもケアリングクラウンの活動を広めている。現在Clown one Japan というケアリングクラウングループの代表を務め、全国の高齢者施設、病院、児童養護施設、被災地などを訪問している。◆ブログ「パッチ・アダムスからもらったギフト you are great!」◆Clown one Japan Facebookページ

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