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タクシー配車アプリUberは「本社・地球」で成功

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 4月上旬に大前研一氏が上梓した『「0から1」の発想術』(小学館)が大きな反響を呼び、発売わずか1週間で増刷となった。大前氏は、「いま、新しいビジネスを生み出すチャンスは誰にでも広がっている」と語り、新ビジネスの代表格であるUberは、従来の企業とまったく違った経営システムで成功していると指摘する。

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 ビジネスを取り巻く環境は、この1~2年で激変した。それは改革や変革という言葉で表現できるような生やさしいレベルではなく、「革命」あるいは染色体の「変異」と言うべきものである。

 かつて私は、急成長を遂げたグーグルやアマゾンを従来の企業とは染色体が異なる「ゴジラ企業」と呼んだが、いま出現している21世紀型の世界最先端企業はさらに染色体が変異して形態そのものが20世紀型企業とは全く異なる。成長スピードがゴジラ企業をも凌ぐほどなのだ。

 上場していないものの、短期間で評価額が10億ドル(約1100億円)以上に急成長した企業を「ユニコーン(一角獣)企業」と呼ぶ。めったにお目にかかることがなく、投資家に巨額の利益をもたらす可能性がある夢のような企業だからそう呼ばれるが、珍しいはずのユニコーン企業がこのところ急激に増え、世界で少なくとも140社くらいあるとされる。

 代表的な例は、スマートフォンのアプリを使ったタクシー・ハイヤー配車サービス「ウーバー(Uber)」だ。創業後わずか5年でグローバル化して推定時価総額が5兆円を超えた同社には、従来の企業のような組織や経営システムの概念は存在しない。生まれた時から“本社・地球”である。

 つまり、最初から「タックス・プランニング」(法人税の仕組み、特徴、計算方法などから合法的な節税計画を立てること)を全地球ベースで行い、法人税を最も軽減するためにはどうすればよいか、という観点から会社の仕組みを構築している。

 サンフランシスコで創業した会社だが、アメリカは法人税率が39%で世界一高いため、法人税率25%のオランダに世界の事業を統括する本社を置き、それにタックス・ヘイブンのバーミューダを組み合わせて節税しているのだ。

 たとえば、日本でウーバーのタクシーを利用した乗客がスマホ決済で運賃を支払うと、その瞬間にサイバー上でオランダ本社の収入になる。運転手に対してもオランダ本社から運賃の80%が取り分として支払われる。利益はオランダ本社ではなくバーミューダに蓄えられ、アメリカのウーバー・テクノロジーズ本社はわずかなロイヤリティしか受け取らない仕掛けになっている。ウーバーは国別・地域別の現地法人や代理店といった従来型の組織は持っていないのである。

 これはスマホセントリック(スマートフォン中心)のエコシステム(生態系)を使うからできることだ。スマホは国別ではなく、世界中どこへ行ってもOS(基本ソフト)は実質的にアップルのiOSかグーグルのアンドロイドしかない。つまり、スマホベースの全世界共通プラットフォームが出来上がっているわけで、それを活用すれば、ウーバーのように生まれた時から都市別の世界展開ができるのだ。

 今後の企業に必要なのは、改革や変革ではない。ましてや日本企業お得意のアナログ的な「カイゼン」でもない。今までのビジネスの延長線上で1を1.2とか1.3にするよりも、0から1を生み出したほうが手っ取り早くて多くの果実を得られるのだ。

 その時に重要なのは、すべて自社でやろうとしないことである。具体的に言えば、時間をかけない、カネをかけない、自前の人手をかけないことである。今はクラウドに何でもあり、ビジネスシステムのあらゆるフェーズに“お助けマン”がいるので、そういうものを自分で構築する必要は全くないのである。

 たとえば家電製品の場合は、プリント基板の回路設計図面をはじめ、ほとんどのものはネットからダウンロードできてしまう。だから今は技術者が1人で家電製品を作って販売する「ひとり家電メーカー」が可能になっている。回路設計などを自社で行わなければならないというのは、もはや古い考え方なのである。

※SAPIO2016年6月号

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