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第59回 所内生活の心得(その8)

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 「賞罰」についてもきちんと規定がある。人命を救助したとき、逃走を防止したとき、火災・天災その他非常の際に功労があったとき、そのほか特にほめられる行為があったときに賞が付与され得る。
 懲罰と違って、賞の具体的内容が見えないのが残念である。受刑者であれば進級するということもあるかもしれないが(累進処遇で1級から4級まである)、未決では考えられずせいぜいお褒めの言葉か。
 まさか、刑務所長の名で、裁判所宛に、この人はこんな立派なことをしましたなどという上申書を書いてくれるわけでもないし。

 「逃走を防止したとき」とは具体的にどのような行為なのだろうか。
 独居ではちょっと想像しがたい。雑居で、事前に刑務官に密告することしか思いつかない。あとは、逃亡しようと塀などを乗り越えようとしている者を羽交い絞めするくらいか。

 懲罰の内容には興味があった。8種類もある。
 「叱責」「文書図画閲読の3月以内禁止」「請願作業の10日以内の停止」「自弁にかかる衣類臥具の15日以内の停止」「糧食自弁の15日以内停止」「運動の5日以内停止」「作業賞与金計算高の一部又は全部の減削」「2月以内の軽屏禁」となっている。

 保釈になってから六法をめくってみたが「軽屏禁」という言葉を探し出すことができなかった。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第151条1項6号に「閉居」との語句あるがこれであろうか。
 拘置所の規則によれば「戸外運動・入浴が制限され面会(ただし、弁護人面会を除く。)、発受信、調髪及びラジオ聴取は原則として許されません。ただし、面会や発受信については、訴訟上特に必要がある場合には許されます。」とその内容が明らかにされている。

 この文脈だと、面会については、弁護人面会は除外規定となっているが、発受信については弁護士とのやり取りの除外規定はなく、原則禁止となっている。しかし、先の刑事収容施設等に関する法律では発受信共に弁護士との間では除外されるとされている。
 弁護人との発受信を制限する規則は、それだけを見ると、弁護権保障との関係で違憲・違法となる。かろうじて、「訴訟上特に必要がある場合」に該当するとして、弁護人との間の発受信は許されかもしれないが、「訴訟上特に必要がある場合」の判断は、発受内容を「実質的に」検討して拘置所がなすのだから、秘密接見交通権を保障している憲法に抵触し違憲となるはずである。しかも、拘置所に実質的判断の能力があるとは到底思えない。

 心得には、「天災事変」の項目もある。施設ならではの定めがある。
 「居室にいるときは、扉が開くまで待つこと」とあり面白い。よほどのことで壊れない限り扉が開くことはないのだから、中で待つしかないのは当然のことであって、ほとんど無意味な規定ではないだろうか。
 また、刑務官が扉を開けた場合には当然出ていいよということだから、つまり通常どおり刑務官の指示によって出るだけのことで、そんなことを規定すること自体おかしいことで、とすると、この規定は扉が損壊して開いた場合は出てもよいとしか読めないことになる。
 しかし、さらに考えると、その場合であっても刑務官の指示なくして出てはいけないと思われるから、やはり無意味な規定だろう。

 「・・・解放されたときは、指定された場所に出頭すること。もし解放されてから24時間以内に出頭しないときは、逃走罪により処罰されるので注意すること。」とある。
 24時間が短いのか長いのかの判断は難しい。江戸時代においては、小伝馬町の牢屋敷が解放されると、まずは両国回向院に集められ点呼をとった上で解放され、再び回向院に集まるのは2日後又は3日後(該当日の日没まで)とされていたようである。
 しかも時代によっては自由に只で飲食ができたので、これを嫌った商店は、大戸を閉めて休業したなんていう記録もある。今では無銭飲食などとんでもないことである。

 刑務所や拘置所が損壊してあるいはそのおそれがあって解放されるなんてことは滅多にないだろう。「身を守る地震の心得」にも「兵庫県南部地震の際、多くの建物が損壊した中にあって被災地所在の施設が壊れなかったことからも、その安全性が分かると思います」とある。
 小さく仕切られた部屋がいくつもあり、それを頑丈な壁や出入り口で支えているのだから、安全性はかなり高い。(つづく)

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第59回 所内生活の心得(その8)

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