「地震保険」は使いよう。未加入者は今一度検討を

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「地震保険」は使いよう。未加入者は今一度検討を

平成28年熊本地震による家屋の全半壊が8万棟を超え、地震被害が明らかになるにつれ、人智の及ばぬ自然の驚異を思い知らされる。それだけに可能な限り、災害への備えは万全を期しておきたい。日本損害保険協会は、地震保険加入者への保険金支払いについて、迅速な対応をしている。東日本大震災に続き、今回の熊本地震をきっかけに、地震保険未加入者は、今一度検討してほしい。

火災保険には加入しても地震保険は未加入が多い

地震災害が起きるたびに、話題に上る地震保険だが、実際の加入状況は意外と低いというほかない。日本損害保険協会が発表している地震保険の加入率と付帯率を年度ごとにグラフにした。加入率は、年度ごとに住民基本台帳に基づき、地震保険に加入している世帯数を割り出したもの。付帯率は、その年度に加入した火災保険に地震保険が付帯された割合を示している。【図1】阪神淡路大震災が起きる前年1994年度の加入率はわずか9.0%。1995年度は11.6%に増加し、東日本大震災の2011年度には26.0%(前年23.7%)になったものの、2014年度で28.8%にとどまり、未加入世帯は多い(出典:損害保険料率算出機構)

【図1】阪神淡路大震災が起きる前年1994年度の加入率はわずか9.0%。1995年度は11.6%に増加し、東日本大震災の2011年度には26.0%(前年23.7%)になったものの、2014年度で28.8%にとどまり、未加入世帯は多い(出典:損害保険料率算出機構)

まず、世帯加入率だが、2014年度の全国平均は28.8%。阪神淡路大震災以降、地震に対する意識が高まったとはいえ、長く20%を切る状況が続いていた。東日本大震災を契機に2011年度の加入率は高まったが、それでも2014年度時点で30%を切るという結果である。

都道府県別にみると、住宅再建が進む宮城県が50.8%と約半数が加入。火災保険とセットで加入する付帯率も高く85.3%と全国平均を大きく上回る。加入率は、2位以降ぐっと下がり、愛知県で38.7%、東京35.6%、神奈川33.8%と続く。阪神淡路大震災を経験した大阪で30.0%、兵庫で24.5%にとどまる。今回の熊本では28.5%、大分で22.1%の加入率だった。

一方、付帯率では、全国平均が59.3%で、やはり東日本大震災以降、地震保険加入が進んだと言えるが、それでも火災保険には加入するが、地震保険は付けないとする人が約半数いるのが実情。

住宅購入時、新築時に火災保険への加入は意識するものの、地震保険の付帯については保険料負担が重いと感じて加入しないケース、免震・耐震構造だから大丈夫と地震保険を付けないケースもあるだろう。

しかし、地震災害については、火災保険に加入しているだけでは保険金がおりないことをどれだけ理解しているだろうか。今回は、あらためて地震保険の仕組みについて説明しよう。

基本は火災保険とセットで加入する地震保険。損保会社による違いはない

現在、地震保険は単体で加入することができず、火災保険とセットでの加入となるため、新規で火災保険に加入するときのみと思いがちだが、火災保険の契約途中でも地震保険を付帯することができるので、その点は間違えないようにしてほしい。

損保会社によって契約・補償内容が異なる火災保険と異なり、地震保険は、法律に基づき、政府と損保会社が共同で運営する保険で、保険料や補償内容に違いはない。

地震保険の契約は、火災保険の保険金額がベースとなり、火災保険の30~50%の範囲で保険金額を決める。例えば火災保険で建物の保険金額が5000万円であれば、地震保険の保険金額は1500万円~2500万円、火災保険で家財が1000万円であれば300万~500万円となる。ただし、建物は5000万円、家財は1000万円が契約の上限額となる。

保険料は、建物の構造と所在地によって異なる。建物の構造に関しては、大きく分けて木造かコンクリート造かによるが、建築年数による割引、免震、耐震性能に応じて割引率が設定されている。所在地については、やはり地震が起きる可能性の高いとされる地域では保険料が高くなるよう設計されている。

新築木造住宅(東京都)の場合で試算すると、火災保険の契約が建物5000万円、家財1000万円の場合、地震保険の契約を建物2500万円、家財500万円とすると、年間の保険料は8万7900円(建築年割引10%を適用)となる。また、地震保険に関しては、保険契約期間が1年または5年で、1年契約よりも5年契約のほうが保険料は割安になるので、加入する際は、まとまった資金が必要にはなるが、5年契約も視野にいれたいところだ。

我が家の場合、保険料がいくらになるのか、気になる人は、日本損害保険協会サイト内の保険料試算を行ってみるとよい。

地震保険の補償範囲は、地震による火災(延焼を含む)、家屋の倒壊、埋没、噴火による損壊、津波による流出が挙げられ、全損、半損、一部損に区分され、全損の場合は契約金額の全額、半損の場合は50%、一部損は5%が支払われる。

実は、地震保険に関しては、2014年7月に保険料率が改定され、全国平均で15.5%引き上げられている(引き下げられた地域もある)。さらに、来年2017年1月にも再度見直しが予定されており、保険料率の改定(全国平均で5.1%)のほか、補償範囲の区分が細分化される(前述の区分のうち、半損を2区分に分け、契約金額の60%支払い、30%支払いに改定)予定だ。保険料が上がる前に、未加入の世帯は、検討してみるべきだろう。

マンションの地震保険は共用部分と専有部分の2つなので注意を

もうひとつ、地震保険で注意したいのが、マンションの場合だ。マンションの管理組合で地震保険に加入しているから、個人で加入する必要はないというのは間違い。管理組合で加入しているのは、あくまでもマンションの主要構造部への被害が補償対象となり、地震で個別の部屋の壁が崩れたといったものは対象外となる。家財に関しても同様。マンションであっても、自分の部屋を守るためには、個人で地震保険に加入する必要がある。

まずは、マンション管理組合で共有部の地震保険に加入しているか、確認することが大事で、万一、未加入の場合は、住民総会などで決議が必要となる。最近のマンションは免震・耐震構造で、共用部の地震保険は不要と考えるところもあるかもしれないが、十分、住民間で協議することが重要だろう。

専有部分に関しては、巨大地震の被害に遭った場合、個別に修繕・再建というわけにはいかないが、地震保険に加入していれば、新しい住まいへの転居費用や再建までの住居費などに保険金を充当することもできる。築年数の古いマンションは保険料が高くなるものの、いざというときの備えがあるなしで、被災後の生活は変わってくるだろう。

加入の仕方は、前述したとおりだが、契約金額の設定については、保険料との兼ね合いもあるだろう。地震後も同じ場所で同じ家を再建しようと思えば、上限額で契約すべきだが(それでもすべては賄えない)、当面の生活再建のための資金と考えれば、過剰な契約金額は不要だ。家財も同様に、同じものをすべて買い直しするのにいくら必要なのか、という考え方もあるし、当面生活に不便がないようにと考えれば、契約金額を抑えてもいいだろう。

保険はなんでもそうだが、保険ですべてを賄おうとすれば、保険料は高くなる。自分にとって何が必要なのか、地震保険で何を補いたいと考えるかで、保険の加入の仕方は変わるだろう。●参考

・日本損害保険協会/保険料試算
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