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【堀江愛利×奥田浩美】シリコンバレーで注目の女性起業家アクセラレーターが語る、日本の女性リーダーに必要なストラテジー

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UberやAirbnbなどの注目スタートアップを生み出し、FintechやIoT、ヘルスケアなど、さまざまな最新ビジネスやテクノロジーを世に送り出してきたシリコンバレー。しかし、そのイノベーションの聖地・シリコンバレーにおいても、いまだビジネスやワークスタイルは男性中心なのだという。

そのシリコンバレーで「Women’s Startup Lab」を創業し、女性起業家を育成する堀江愛利さんと、海外の最新技術や数々のスタートアップ企業に携わってきた奥田浩美さんに、女性リーダーが抱える課題や対策について語っていただいた。


シリコンバレーで女性起業家養成所を立ち上げた背景

奥田:まずは、堀江さんがなぜシリコンバレーで女性起業家のアクセラレーター(短期養成所)「Women’s Startup Lab」を立ち上げたのかをお聞かせください。

堀江:私がスタートアップをやっていた頃に、私自身がもがいていたからですね。シリコンバレーは若い男性が多く、女性起業家の数がとても少ないんです。最初はそこに特別な問題意識はなかったんですけども、彼らは女性の出すアイデアに対しては、全然のってこない。「3時間しか寝ていないよ」みたいな会話が挨拶代わりになっていて、「そこまで捧げてこそスタートアップだ」みたいな勘違いばかり。ただでさえ女性が起業するには大変な環境なのに、子どもを育てながらでの起業は三重苦のようだと感じていたんですよね。

シリコンバレーはスピードが勝負だと言われますが、子育てしながらではキツいこともある。3か月でサービスを作り上げるスタートアップだけじゃなく、サポートを受けて6カ月かかってでも有益なサービスを世に出すやり方があってもいいじゃないかと。成功手段、達成モデルは一つじゃなくていいと思うんです。


Women’s Startup Lab 代表取締役 堀江愛利さん

1997年にカリフォルニア州立大を卒業後、IBMでのグローバルマーケティングの仕事を皮切りに、シリコンバレーのハイテク企業でマーケティングを手掛ける。2013年にWomen’s Startup Labを創業。最近では、CNN「10人のビジョナリーウーマン」や雑誌マリクレール「男女比を変える20人の女性」に選ばれた。(全米にて注目する女性40名の一人として“40over40 Award”に選ばれ、またSXSW Interactiveでは Featured Speaker 2015として活躍し、またSXSW V2V 2014 ではキーノートスピーカーを務め、ウォールストリートジャーナルやフォーチュン、ビジネスウィークなど多くの有力メディアに取り上げられている。

奥田:成果の出し方はみんな同じじゃなくていい、という意見にはとても共感できます。女性の起業家をサポートしたいと考えた、具体的なきっかけは何ですか?

堀江:スタンフォードで20年ぐらい看護師をしていた女性が考えたスタートアップのアイデアが最も印象的な出来事でしたね。看護師と医師、介護福祉士は、薬の量やその日の症状など、あらゆる情報をすべてシェアし合い、患者にもきちんとコミュニケーションをとらなくてはいけないのですが、実はうまくできていない。一番つらいのは患者さんだけど、介護をするほうも負担が大きい。それをプラットフォーム化して、最適化しようというのが彼女のアイデアでした。

私は、これは絶対必要なプラットフォームだと思いました。ところがそのアイデアに対して、誰もサポートしたいと言わなかったんです。彼女がすごくがっかりして帰る後ろ姿を見て、「ああ、こんなんじゃ新しい社会は生まれない」と勝手に責任を感じたんですね。そこで、女性に特化した起業家養成所「Women’s Startup Lab」を始めたんです。

奥田:私は自分で起業したウィズグループを含め、これまで25年間、シリコンバレーの最新技術やビジネスを日本で広める大規模カンファレンスの企画や運営を行ってきました。でも自分の両親が田舎で介護を受ける状態になったときに、そうした先端技術の恩恵を全く受けていないことに気づいたんです。お年寄り、女性や子供に必要なものが、シリコンバレーでは作られていないと。ITって本当はこうした人たちが幸せになるために生まれたものじゃないの?という疑問を抱きました。そこで2年前に、社会課題を解決するためのITの製品を生み出すための会社、たからのやまを設立したんです。事業背景としては、堀江さんとすごく似ている気がします。


▲株式会社ウィズグループ、株式会社たからのやま 代表取締役 奥田浩美さん

MacworldやWindows World、Interop、Google Developer Dayをはじめとする数々のIT系大規模コンファレンスの事務局統括・コンテスト企画などを行う株式会社ウィズグループ創業者。2013年には株式会社たからのやまを設立。2014年より、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の未踏IT人材発掘・育成事業の審査委員を務め、若い世代の新たなチャレンジを支援している。著書に『人生は見切り発車でうまくいく(総合法令出版)』『会社を辞めないという選択(日経BP社)』『ワクワクすることだけ、やればいい!(PHP研究所)』がある。

堀江:ニーズから始めるというスタイルですね。これを作って売りたいというエンジニアドリブンじゃなくて、“何が必要かという発想”。男性でも必要性から考える人はいるの思うのですが、“人が困っていることを解決して人の役に立ちたい”というより、結果として“人に役に立つもの、役に立ちたい”という思いから始めるビジネスの発想が強いように思います。したいことを表に出すより、するのは、女性ならではです。ITですぐ解決できると思われることって、現実社会では紙に書いた餅状態のことが多い。

奥田:シリコンバレーは何でもエコシステムができていて、女性もキラキラした人だけが報道されてくるじゃないですか。でも今日お話していると、みんな迷っていることや、飛び越えられないところって一緒なんですね。

堀江:日本もアメリカも一緒だと思うんですけど、やっぱり成功する人はそれを乗り越えられる力を持っています。でも、能力ではなく、生活レイヤーで悩む女性は多いんですよ。これは女性の問題じゃなくて、社会の問題なんですよね。

奥田:女性だけの問題じゃないというのは、私もいつもそう思っています。

堀江:だから女性の発想やビジネスをサポートすることで、より地域が活性化されたり、女性ならではの価値観や観点で社会を変えたりするのもいいんじゃないかと私は思っていて。

自分のベースを作れば、周りのペースも気にならない

奥田:私は26歳の時に社内起業して子どもを産んだんですけど、周りが結構優しかったんですよね。でも「早く帰っても大丈夫だから」って言われても、自分が思う存分やれないのがつらかった。「君は能力あるんだから、やりたいことをやっていいんだよ」とサポート体制を作ってもらっても、今まではできたことなのに半分しかタスクが終わらないことが、仕事からはずされるより悔しくて。

堀江:そうそう。周りからもういいと言われても、やりたいことはやりたい。ある意味で、ワーカーホリックなんですよね、慢性ワーカホリック。

奥田:一緒です(笑)。そういう女性起業家にはどんなアドバイスをするんですか?

堀江:とにかく無理をするのはやめよう、と言います。頑張ることを美徳とする日本ですが、無理をしても成果につながらないことが多いから。無理をして頑張るのではなく、いかに効率良く動き、成果を確実に1~2個出していくことを考えて見直す必要があると思います。頑張ることで周りに認めてもらいたい気持ちはわかりますが、それをあえて捨ててでも、成果を出すことを考える。

それはすごく難しいことだけど、必要なことだと思っています。また、我慢するんじゃなくて、身を任せる。今できることだけをやって、自分は40%で100点満点だと言ってしまう。その中で本当に大切のものへの時間や情熱を注げるものがみえてくるのではないでしょうか。そうでないと、英語でいう「My life doesn’t belong to me」という時期が乗り越えられない。それが嫌ならご主人とストラテジーを練っていくしかない。自分の仲間を作ることが、ストラテジーの大切な一つだと思っています。

奥田:私もそう思います。

堀江:その中で必要なのは、自分が何をやりたいかというベースを持つこと。ベースがきちんとあれば、あと3年間我慢することも、自分のビジネスを始めたりすることも選択できる。ブログで発信するだけでもいいんですよ。

奥田:企業の中にいてもそうですよね。とにかく少しずつでもアウトプットをしていくことができるかどうか。女性に限らず、企業の中にいると20代、30代とか年齢で区切ってこうならなきゃみたいな思い込みが多すぎるんです。私は年間50回ぐらい地方出張しているのですが、60代から起業した人やこんな人生があるんだって驚かされる人に会う機会が多くあります。ロールモデルを持っていれば自分の生活が変わったところで、何歳だろうと戦略を変えることができる。そうなると、すごく楽だなと。

全部頑張りすぎてはだめ。できることを一つに絞ってみる

奥田:「Women’s Startup Lab」は、女性にどんな起業家支援をされているんですか。

堀江:ラボ自体は起業家としての成果を出すためのものなので、「女性」というトピックでのワークショップは、30分くらいです。何をするかというと、最低限必要なピッチとかストーリーテリング、あとはビジネスモデルのレベニューモデルもそうですね。かなりコンサルティングをして、どんどん締めていく。ぎゅっぎゅと。

あとうちがすごく変わっているのは、リーダーシップのコーチングをつけるんです。エグゼクティブな人たちがもっとパフォーマンスが上がるように、リーダーシップのスキルアップにはかなり注力していますね。

奥田:日本人女性で、それを受けている人はいますか?

堀江:いますよ。受講した皆さんによく言われるのが、「ビジネスのことをするために行ったんだけど、自分の人生が変わった」ということ。かなり厳しく叩かれて、気づかなかったところで自信がついたとか、気づきがあったと言ってくれます。自分のしたいことがクリアになったことで、シェイプアップできたという感じですかね。目先のビジネスのノウハウなどはいくらでも情報が集まる時代なので、それを学ぶことより、起業家としてのマインドセットの特訓することで、より大きな自信につながり、今まで思いも寄らなかった行動と目標、また、自分にしか発想できない方法までが見えてくるようになります。それが結果としてビジネスの成功への加速化につながっています。

奥田:女性って、実はなかなか追い込まれないですからね。何かしら誰かが守ってくれることが多い。

堀江:やることが多すぎて、自分のチョイスがなされないまま頑張っちゃう人も多いですね。女性をすごくよく表している話があるんです。洗濯機を発明した人たちは女性の家事を少しでも楽にしたくて、洗濯機を作って市場に出したと。それで女性が楽になるのかなと思ったら、便利になったからもっと洗濯をし始めちゃったんです。女性は手を抜かずクオリティをどんどん追求しちゃうから、すべてにおいて頑張っちゃう。どこに無駄があるかっていう観点があまりないんですよ。

奥田:私なら、機械に家事を全部任せます。食器洗い機があれば食器洗いはしないし、洗濯機があれば洗濯しない。機械に置き換わってもらって全然OK(笑)。

堀江:楽になる追求って必要ですよね。何か一つだけ選んで頑張る。全部頑張るんじゃなくって、金曜日の朝ご飯だけは頑張るとか。私はあまり料理を作らないんですけど、週末の朝ご飯だけは作ると決めて、頑張ってます。ホットケーキぐらいなんですけど。

奥田:そうか、全部に頑張るのが女性のいいところでもあり。

堀江:全部頑張るのは無駄だからやめなさいと。家事育児をしっかりしてプライドを持ってやる人もいれば、仕事で自らの“ギフト(※持って生まれた特別なスキル)”を大いに発揮し活躍し、自分らしく生きる人生を大切にして頑張っている人もいます。褒められることだけが大切ではないんじゃないかと。もっと自分を大切にしても、世にも役立つワガママもおすすめですね。

奥田:実は女性がマネジメントに向いてないと言われることに、女性の思い込みがあると思っていて。そもそも事業やビジネスってどんどん新しいものが出てくるし、組織も新しくなっていく。女性は男性が作ったピラミッドの上を登るんじゃなくて、新たな環境や分野にガンガン入っていけばいいんじゃないかと。

「何をすべき」ではなく、「何がしたいか」が大事

奥田:シリコンバレーと日本で女性のリーダータイプの差というか、違いってありますか。こういう点で悩むとか、こういうところでつまずくとか。

堀江:向こうはすごくハングリーですね。伸びる女性というのは、頑張るだけじゃなくて、底力の明るさを持っています。明るさと楽天的というポジティブさを持ちつつ、自分の力も信じていて、絶対できると思っている。「やろう」というより、「できるんだ」という気持ち。奥田さんもあるでしょ?

奥田:できるというか、信じて進んでいるときは、できるまでやめないって思ってて(笑)。でも私、今愛利さんが言ったような「絶対できる」と思っている女性が、すごく少ないと思うんですよ、日本は。

堀江:そうそう。成功するって意味の「できる」じゃなくて、続けられる、アクションできるっていうほうで。私も17歳でアメリカ行ったときに、「What you like?」とか、「What you won’t?」って聞かれてました。「何をしたいか?」じゃなくて、「何をするべきか?」で日本人らしくトレーニングされてきたから、自分のアイデンティティがどこにあるかもわかんないような状態だったんですね。

その「べき」を取り除くことが必要なんです。自分が何がしたいのか、例えば小学生のときに消防士になりたいと思っていたとしたら、何に魅かれて消防士になりたいと思ったか。人を救うのがかっこいいとか、人に喜んでもらいたいっていう理由だったら、もっとその気持ちを大切にする。自分のアイデンティティを探すというのは、すごい重要で、それをしていないと、大人になってから、自分のしたいことは何かと言われても出てこない。大学とかでも自分がしたいことなんか聞かれたこともないし、ひたすら成績だけで評価される。

一番シンプルなやり方は、毎日何か「自分のしたいことを必ず一つやる」。それが正しいとか、成功につながらないとか一切考えない。いいとか悪いとかじゃなくて、何で私はこういう生き方をしているんだろうって考えて、自分が喜ぶことをすればいい。自分の気持ちを大切にするために、自分を聞き始める訓練から日本人はやらないと。自分で作っていくというのは、自分がないとビジネスは築けないわけですよね。

「なぜ、あなたはそれを始めたんですか?」という問いに、「いや、このテクノロジーが、何となく格好よかったから始めた」と答えてしまう。いや、そうじゃなくて、「何でそのテクノロジーをあなたは始めたんですか?」と。アメリカ人は自分のパッションに聞くけど、日本人は答えられないことが多い。

奥田:日本はビジネスを作るときに、既にこの分野が流行っているとか、ここに今お金が動いているとか、そういう理由でビジネスを始める人が多い気がします。前例主義というか。そこは変えていきたいですね。

自分を大切にすることが、何かの結果につながる

奥田:堀江さんがすごいのは、女性のキャリア形成支援をこれだけやっているのに、女性の枠を超えた姿があること。その取り組みによって、人間全体がレベルアップすると思います。男性だけの土俵にやっと女性が乗ることができましたみたいな。それを日本の女性がやっていることがすごく誇らしいなと思いながら、お話を伺っていました。

堀江:ありがとうございます。先ほども言いましたが、自分を大切にするということをもっと自分に問いかけてほしい。自分を大切にするということは、どういったかたちで社会に貢献するかということでもあります。それがビジネスで表現される人もいれば、子育てというかたちで表現される人もいます。いずれにしても素晴らしいことだと思います。

1.自分をセルフコントロールするというコンセプトで毎日問いかけをする

2.ビジョンを持って周りを巻き込む

3.それが何かの結果になる

ぜひ、この3ステップで、自分の方向性を作っていってください。


取材・文:馬場美由紀 写真:延原優樹

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