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安易なクレームの弊害 真の被害者の声が届きづらい状況に

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 インターネットとSNSが普及したことで、企業やサービスへ直接、意見を届けることが容易になった。ところが、手段が手軽になったことで、事態を混乱させるだけのクレームも目立つようになった。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、安易なクレームの弊害が何を引き起こしているのかについて解説する。

 * * *
 クレームという行為は、損害発生時にそれを補してもらうためのものだと思っていたのだが、どうもそうではないらしい。最近ツイッター社の公式ツイッターIDがデマをまき散らかす人間に対し「お願い」をしたところ、なぜか同社が罵倒された。

〈Twitterの有料化というツイートを流されている方がいらっしゃるようです。定期的に出てくるうわさですが、他の方のご迷惑ですので、おやめくださいね。〉

 至極丁寧な物言いだし、主張も真っ当なのだが、こんな声が寄せられた。

〈なんで止めなきゃいけないの?表現の自由でしょ? TwitterJPは馬鹿なの?〉
〈この頃のクソみたいなアップデートやめろ。まず星に戻せ。いいから星に戻せ。このクソが〉

 もちろん、「便利なので有料にしても使い続けます」という声が多数だが、よくぞここまで強い言葉で文句を言えるものだ。ちなみに2つ目の意見にある「星」とはかつて「お気に入り」を意味する「fav」という機能が星印だったが、今は「いいね」に変わりハートマークになったことを言っている。まぁ、些末なことで個人的嗜好でしかない。

 デマ発生の背景には、同社の89億円の赤字が発表されたこともある。ちなみに2014年の消費増税のタイミングでは「1ツイート108円」というデマも登場した。ユーザー離れに繋がったり、株価に影響を与えかねないだけに、デマの打ち消しは必要なのに、クレーマーはその事情さえ理解しない。

 私もこれまで無料のネットサービスに携わってきたが、こうした罵倒は頻繁に寄せられるものだ。曰く「重い」「デザインを元に戻せ」「コメント機能を復活させろ」など様々で、運営側の判断や懐事情を慮る気持ちは一切ない。あくまでも自分にとっての利便性の追求のみを考慮に入れている。

「要望」や「提案」であれば、運営側にとってもありがたいものだが「馬鹿」「クソ」などと罵られるほどのことはないだろう。

 バーベキュー会場近くのコンビニでは、ゲロまみれになるなどあまりにも使い方が汚いこともある。そのため便所を使えない措置を取ると、便所を利用したいだけの者から「なんで使えないんだ」とクレームを受けるという。余剰のサービスを親切心から提供すると、カネを払った客以外の「無料クレーマー」につけこまれる。

 クレームをつけるにはそれ相応の資格(大金を払った、損害を被った)が必要という矜持はもはやなく、「オレ様の貴重な時間を使ってやったのに満足できなかった」ということぐらいしか根拠はない。

 正直、無料クレーマーにかける時間は運営としては無駄である。だから、電話問い合わせは廃止し、問い合わせフォームは複雑化させ、意見を届けづらいようにする措置を取っている。

 無料クレーマーの横行により、真の被害者の声が届きづらい状況になってしまったのだ。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2016年5月27日号

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