アディティア・ソフィアン ベッドルームから飛び出した新たな一歩『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』(Album Review)

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アディティア・ソフィアン ベッドルームから飛び出した新たな一歩『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』(Album Review)

 暑い夏の日。エアコンがキンキンに冷えた部屋で、アコースティック・ギターを爪弾きながら囁くように歌う。アディティア・ソフィアンといえば、そんな印象の強いシンガー・ソングライターだ。灼熱の国インドネシアのジャカルタ出身ながらも、クールでクワイエットな歌の数々は、“ベッドルーム・ミュージック”と呼ぶにふさわしいたたずまいを感じさせてくれた。

 2008年に発表したファースト・アルバム『クワイエット・ダウン』が、日本で紹介されたのは2011年のこと。じわじわと口コミで広がり、セカンド・アルバムの『フォーゲット・ユア・プランズ』とともに、その個人的な世界観が受けてロングセラーとなった。そして、2013年に発表した3作目『ハウ・トゥ・ストップ・タイム』から、彼の紡ぎ出す歌に広がりが出てきたと思っていたら、3年ぶりの新作『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』では、ついにベッドルームを飛び出した傑作となった。

 もちろん、彼特有の優しいメロディやオーガニックな質感のサウンドは健在だ。アコースティック・ギターの音色は変わらず繊細で美しいし、そこに乗せた歌声もひたすらやさしく心地いい。しかし、往年のジェイムス・テイラーを思わせる歌声は、いつも以上に外を向いている。リズム・セクションやピアノといったバンド・サウンドが加えられているのも、そういった開放感を演出する要素だ。これまでの3作に比べると、あきらかにグルーヴが増しているし、宅録ではないアグレッシヴな質感は新境地といえるだろう。

 かといって、この方向性が彼の魅力を削ぐものでないことは保証する。パーソナルな歌世界はそのままに、よりプロフェッショナルな音作りへと移行していったということだろう。新しい一歩であると同時に、アレンジに変化があっても彼の音楽が普遍的なものであることを証明している。相変わらずクールでクワイエットではあるし、親密さもそのままだ。きっとこの夏も、涼しく過ごしたい時は、アディティア・ソフィアンの新作をベッドルームでリピートすることだろう。

Text:栗本 斉

◎リリース情報
『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』
アディティア・ソフィアン
2016/04/27 RELEASE
2,484円(tax incl.)

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