マンション理事会のお悩み[1] 管理費が赤字!? 一体どうすれば…

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マンション理事会のお悩み[1]管理費が値上げ?! いったいどうすれば……

築20年近くになる、とあるマンションでは、定期総会で修繕積立金を30%値上げすることを決議しました。一方、駐車場の空きが増えて、管理費会計も赤字一歩手前に……! これ以上負担を増やしたくないと、管理組合からご相談がありました。【連載】マンション理事会のお悩み相談

マンションは、いろんな価値観をもった人たちが住む集合住宅。直面する問題もさまざまです。でも理事会では経験豊富な人が少なく、解決が難しいこともあります。

今回は、日々、理事会から多くの悩み相談を受けているマンション管理士が、そのなかでもよくある問題をご紹介し、解決方法を提案します。

管理組合を悩ます「2つの値上げ」問題

マンションの管理組合は、一般的に「管理費会計」と「修繕積立金会計」という2つの財布を管理しています。前者は、清掃や設備点検などの日常管理に必要な経費を賄うためのいわば「消費用の財布」、後者は将来の大規模修繕に使う資金を確保するための「貯蓄用の財布」です。

ほとんどの分譲マンションでは、新築時の修繕積立金が本来必要とされる金額の半分以下で設定されているのが実情です。このため、経年的に積立金の改定を迫られ、新築当初の3〜4倍まで増額しなくてはならないケースが珍しくありません。

ところが、その値上げが修繕積立金だけにとどまらないマンションが増えつつあります。その原因として多いのが「駐車場の空き問題」です。管理費会計の「第2の収益源」として、駐車場の使用料に依存しているマンションが少なくないなか、昨今の車離れや高齢化などの影響で駐車場の稼働率が低下するにしたがい、収支も次第に苦しくなります。この管理組合でも、駐車場のおよそ2割が空いてしまったためついに赤字スレスレの状況になっていました。

このまま問題を放置したら、修繕積立金だけでなく管理費も値上げの憂き目に……。こうした状況に危機感を覚えた管理組合の役員さんから、解決に向けて相談を受けることになったわけです。

現状の管理委託費は適正か? まずは契約内容をチェック

相談を受けて、まず管理会社に毎月支払っている管理委託費の負担が適正かどうかを診断しました。その結果、共用設備の保守点検費用が割高なため、現状比で2割のコスト削減が可能であることが分かりました。

さらに精査すると、管理仕様として過剰と思われる点がありました。このマンションは30戸と規模が小さいにもかかわらず、管理人の勤務が週5日(月〜金)は各7時間、隔週土曜日は各4時間/日という設定になっていました。しかも、このコストが月々の費用全体のおよそ半分も占めていたのです。

しかし、この規模ならゴミ出しや日常清掃、事務作業等を考慮しても1日4時間あれば十分こなせると判断しました。そして、この見立てをもとに管理人の勤務時間を適正化すれば、現状に比べて3割以上のコストが削減できると報告しました。(下図参照)【画像1】契約内容を精査すると費用削減の余地がこんなに……(出典元:マンション管理見直し本舗)

【画像1】契約内容を精査すると費用削減の余地がこんなに……(出典元:マンション管理見直し本舗)

診断結果の報告を受けた理事会役員さんは、コスト削減の大きな可能性を知ってみな「目からウロコ」。ただちに管理会社と交渉すべしと、当社とコンサル契約を締結するための臨時総会の開催を決議したのです。

管理会社との交渉がスタート! でも、そうは問屋が卸さない……

総会の決議を経て、正式にコンサルタントとして起用されるとすぐに管理会社との減額交渉を開始しました。ところが、「竣工以来管理委託費の減額にもしばしば協力してきたこと」を理由に減額はできない、という回答が……。ただ、管理人の勤務時間については過剰であると認識していたらしく、縮減案を提案してきました。

しかし、管理委託費は、管理人の勤務時間を短くするだけでは適正とはいえない状態でした。そこで、割高なエレベーターや消防設備等の保守点検費についても現状比20%の減額検討を要請しました。

しかしながら、その3週間後に出てきた結果は、たった5%の減額回答にとどまりました。交渉開始から2カ月も費やした挙句の結果に、残念ながら交渉は不調と言わざるを得ませんでした。

管理会社の変更で委託費を38%削減

現在の管理会社との交渉がこれ以上できない場合、「管理会社の変更」も検討します。当初は管理会社を変えたくない意向だった役員さんたちも、管理会社の対応姿勢に失望し、管理会社を変更することにも前向きになっていきました。

そして、管理会社の候補先として3社を検討し、物件見学会のセッティング、見積書の提出依頼、フロント担当者候補との面談を含むプレゼン会の段取りを行い、およそ1カ月後には後継管理会社を理事会で内定することができました。実際に担当するフロント候補者と事前に面談したことで、役員の皆さんも安心されたようでした。

その結果、管理人の勤務時間を1日4時間に変更したこともあり、管理委託費は現状比で38%の削減が実現し、年間211万円の余剰金が生まれることになりました。30戸のマンションですから、1世帯当たり年間7万円もの節約ができたことになります。

管理費会計の余剰金で修繕積立金の値上げリスクまで解消

管理委託費が大きく削減できたことで、管理組合の財政事情も大きく好転しました。管理見直し前の段階では、長期修繕計画で見込まれる修繕費を賄うには、今後30年間でなお4500万円の資金不足が生じる見込みとなっていました。【画像2】管理コストの削減で生まれる余剰金でリスクは解消(出典元:マンション管理見直し本舗)

【画像2】管理コストの削減で生まれる余剰金でリスクは解消(出典元:マンション管理見直し本舗)

ところが、管理会社の変更で毎年211万円の余剰金が生まれたおかげで、新たに6000万円を超える貯金ができる見通しとなったので、積立金の再値上げのリスクはほぼ解消することになりました。

修繕積立金だけでなく、組合財政の悪化で管理費の負担増にも直面する管理組合は少なくありません。この問題の解決策として管理委託契約の見直しを検討してみることをおすすめします。●国交省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要

●株式会社マンション管理見直し本舗
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