【公開直前レビュー】「エクスタシー!!」だけじゃない!?  鈴木亮平の怪演に刮目したい『HK/変態仮面アブノーマル・クライシス』

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90年代『週刊少年ジャンプ』連載作の中でも異色かつさまざまな物議をかもしたあんど慶周先生の『究極!!変態仮面』。2013年に『HK/変態仮面』として映画化された際に、上映館が27館にまで増やすなど大成功したのは、それだけ当時の『ジャンプ』連載時に楽しみにしていた読者が多かったことも理由として挙げられるでしょう。

とはいえ、2016年に続編となる『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』が制作・公開されるとは……主演の鈴木亮平さんは2014年のNHK連続テレビ小説『花子とアン』で村岡英治役で知名度を上げ、映画『俺物語!!』といった話題作の主演を務めるなど、俳優として確実にステップアップしている中での、再び色丞狂介。まずはこの仕事の選ばなさぶりが素晴らしいですが、前作で一年間かけて一度15kg増量し、そこから脂肪をそぎ落とすというストイックぶりは彼でなければ成し得なかった業。続投も当然です。
前作では高校生だった色丞狂介ですが、今作で清水富美加さん演じる姫野愛子とともに大学に進学。そこで際立つのが変態仮面を続けることの苦悩と葛藤です。愛子からは「変態な狂介くんよりも変態でない狂介くんのほうが好き」と言われてしまい、これ以上ないくらいのシンドそうな表情を見せますが、とにかく鈴木さんの顔が歪めば歪むほど、そのストーリーの可笑しさとの落差がとんでもなく激しくなり、その過剰な演技ぶりはもはや怪演の域に達していると言っても過言ではないのではないでしょうか。
また、鈴木さんの熱演に引っ張られるように、清水さん演じる愛子のお嬢様らしい潔癖さや、狂介の恋のライバル・真琴正役を演じた柳楽優弥さんの弱気な真面目青年ぶりが不自然でなく観たままで受容できます。これも作品世界のナンセンスさと共に鈴木さんのテンションのなせる業と判断せざえるをえないのです。恐るべし……。

本作を語る上で、もう一つ触れておきたいのは、福田雄一監督をはじめとするスタッフの映画愛・特撮愛でしょう。怪人の登場シーンにテロップが入るという様式美を踏襲していますし、戦闘員がバッタバッタと変態仮面にやっつけられるアクションシーンも「おいなりさん」に顔をくっつけられること以外はカンペキな“殺陣”と言っていいデキ。「完全に世界からパンティがなくなる」ことになる怪人との戦いでは、『スパイダーマン』もかくやというスピード感。「でも“変態“なんだよなぁ」と思いつつも感服させられました。いわば、B級映画なりの「映画」へのリスペクトといったところでしょうか。

徹頭徹尾、シリアスにおバカなストーリーを本気で作ってこうなりました、という印象の『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』。万人受けする内容でないのは間違いないのですが、90年代『ジャンプ』世代や特撮ファンの琴線に触れるシーンが随所に見られるのもまた事実。“変態”という言葉で全てを語ることなかれ、鈴木さんの怪演やスタッフのマジぶりを刮目して見るべき映画なのです。

『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』作品情報

5/14(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー!

配給:東映

映画『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』オフィシャルサイト
http://hk-movie.jp/ [リンク]

(C)あんど慶周/集英社・2016「HK2」製作委員会

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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