“好立地でも割安” 定期借地権付きマンションの動向とメリデメ

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“好立地でも割安” 定期借地権付きマンションの動向とメリデメ

50年などの一定期間だけ借地契約を結ぶ「定期借地権」。日本住宅総合センターでは、1994年以降継続して、定期借地権付住宅の分譲事例についてデータを収集し、分析を行っている。2015年度の最新動向では、マンションは1件当たりの販売戸数が増える傾向が見られたという。今回は、定期借地権付のマンションについて、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】

「定期借地権事例調査(2015年度)」の結果を公表/(公財)日本住宅総合センター

2015年度の定期借地権の分譲マンションは、1件当たりの販売戸数が増える傾向に

「定期借地権」が創設されたのは、1992年のこと。通常の借地権では土地の借主を保護する観点が強く、貸主が一度土地を貸すと契約の解除が難しいなどの課題があった。定期借地権であれば、貸した土地が必ず返還され、建物を解体して更地に戻して貸主に返還するのが前提なので、返還時に借地に建った建物を買い取る必要もないことから、土地を貸しやすくなると考えられている。

「定期借地権事例調査」によると、2015年度 (2015年4月~2016年3月)に収集した定期借地権付住宅の分譲事例は、一戸建て住宅が51件93区画、マンションが8件236戸。累計では、一戸建て住宅5610件3万1784区画、マンション638件2万1182戸となった。2015年度の動向としては、一戸建て住宅では土地面積で200m2を超える規模のものが少なくなり、マンションでは1件当たりの販売戸数が増える傾向が見られた。【画像】年度別収集事例数(マンション)(出典:日本住宅総合センター「定期借地権事例調査(2015年度)」)

【画像】年度別収集事例数(マンション)(出典:日本住宅総合センター「定期借地権事例調査(2015年度)」)

好立地でも価格が安いのがメリット、期限があり地代などがかかるのがデメリット

さてここからは、定期借地権付マンション(以下定借マンション)について詳しく見ていこう

年度別の収集事例数を見ると、1994年度から2002年度で特に戸数が多い。このころは新築マンションのブームに該当する。バブルが崩壊して地価が長期にわたって下落する中、都心回帰現象が起きた。好立地の福利厚生施設跡地などにマンションが建てられ、手が届く価格で販売されるようになると、マンション需要が一気に拡大したからだ。

この時期に話題となった定借マンションが「銀座タワー」だ。東京都中央区銀座1丁目に位置する、25階建て総戸数180戸のタワーマンションだ。当時の価格で70m2が4000万円台という、「所有権」の場合(定借を含む借地権ではない分譲マンション)より3割程度安い価格設定だったために、人気を博した。当時、このマンションを買ったシニア世代に話を聞いたことがあるが、「子どもに残すつもりはないし、銀座の一等地に50年間住めるなら十分」と話していた。

このように、好立地で広いマンションが比較的手ごろな価格で買えるのが、定借マンションの最大のメリットだ。特にここ数年、新築マンションの価格が上昇しているので、好立地の割安な定借マンションは魅力的に見えるだろう。

一方、定借マンションの最大のデメリットは、期限が来たら更地で返還しなければならないこと。また、所有権では生じないコストがかかることも注意点だ。イニシャルコストでは、土地を借りる権利金や保証金(退去時に返還される)がかかり、ランニングコストでは、地代や解体準備積立金が毎月かかるなどだ。ただし、毎年納税する固定資産税・都市計画税では、土地は借地なので建物分についてのみ納めればよい。

イニシャルとランニングコストをトータルに見て、納得できるか検討を

具体的に見ていこう。2015年度の調査事例では、東京、神奈川、愛知、京都、沖縄で計8件の分譲があった。このうち東京の「Brillia(ブリリア)大井町 ザ・レジデンス」(総戸数36戸)を例に見ると、2015年4月~2016年3月に販売されたのは25戸。ただし、調査結果には販売価格などの記載がないので、SUUMOに掲載されている(2016年5月3日時点)この物件の最終販売期(3戸)の概要で詳しく見ていこう。

それによると、定期借地権の存続期間は70年、羽田空港にも近いJR 京浜東北線「大井町」駅徒歩5分に位置し、専有面積は58.51m2・70.41m2、価格は5990万円~7490万円(※権利金含む)、定借ならではの初期費用として、敷金(保証金)が10万2996円・12万3936円かかる。ほか、毎月のランニングコストは所有権同様に管理費や修繕積立金を払うことに加え、別に地代8583円・1万328円/月、解体積立金3548円・4269円/月などが必要となる。

一方、土地を貸す側も、土地を手放さずにまとまった資金を得られるというメリットがある。最近では寺社が伝統建築物の大改修の費用を捻出するために、土地を定期借地権で貸す事例が複数見られた。2015年度の事例では、京都で販売された「イーグルコート京都御所東 梨木の杜」がその一例だ。

なお、定借マンションは売買も可能だ。ただし、借地権でかつ残存期間が減るにつれて資産価値が減ることもあって、売却価格については所有権の場合よりも想定しづらい側面もある。

分譲価格が割安かどうかも、その時点の新築マンションや中古マンションの相場、そのマンションの希少性などを判断したうえで判断する必要がある。トータルコストなども考慮して、自分のライフスタイルに合うかどうかを検討し、納得がいけば選択肢になるだろう。●参考

・買うよりおトク? 借地権付き住宅のメリットと注意点(SUUMOジャーナル)
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/05/110549_main.jpg
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