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裏カジノ事件

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 バトミントン選手による裏カジノ事件で思い出した事件がある。
 まだ、弁護士になって間もない時期だったような記憶であり、どこからかの紹介で、ある繁華街で裏カジノを経営していた男性が賭博開帳図利罪で逮捕された事件を受任した。女性を含む従業員4人ほども逮捕されていた事件である。

 当初は、経営者を含む5人全員の弁護をしてもらいたいと依頼されたのだが、5人は共犯関係にあり、ときに共犯関係では利害が対立することがあるので、いずれかの一人しか受任できないことを告げ、結局経営者の弁護を担当することとなった。

 経営者と接見をすると、これまで前科はなく開店まもない時期での逮捕ということもあって、高額な不法利益をあげていたわけでもなさそうであった。
 彼との接見で、他の従業員とも接見をしてもらいたい旨の申し出があったが、先に書いたように、共犯関係を受任することはできない旨を説明して納得してもらった。

 まず、私の考えであったが、裏カジノであること、繁華街での経営であることからして、背後には暴力団関係者がいることは明らかと思っていた。
 ところが、経営者は、裏カジノを開業する2か月程前に関西から東京に出てきて、仕事を探していたが、仕事にありつけず、裏カジノを開業するようになったのであって、暴力団関係者が背後にいることはないと言い張った。

 もっと詳しく言えば、仕事にありつけず、繁華街をぶらぶらしていた頃に、ある暴力団の組員と知り合った、名前はAというが、本名であるかどうかは分からない。関西にいるときに、裏カジノは稼げるということを聞き、その組員にルーレット台を購入できないかを聞いたところ、格安で購入できるとのことで、あるだけの金をもって、ルーレット台を購入し、またとあるビルの1室を賃借する費用に充当したと説明をする。

 その後、その組員とはまったく会っていないし、その暴力団が背後にいるわけでもないと言う。ほとんど信用することはできなかったが、そこが刑事弁護の辛いところである。
 裁判官があなたの言い分を信用するとは思えないこと、したがって、このまま言い分を維持すれば裁判官に対する印象は悪いことを説明したが、それ以上のことは言えなかった。

 ここに及んで私は、おそらく経営者が言う暴力団はまったく関係がないであろうし、Aという組員も存在しないだろうし、別の暴力団が背後にいて、その名前を出さないための方便だろうと確信した。
 さらに、その経営者は前科もないことから、暴力団によって、万が一の場合でも、執行猶予となるなどと言われ、本当の経営者を隠しているのだろうと考えた。
 経営者を紹介した人は、特段暴力団関係者というわけではなく、彼に聞いてみても今一つ要領を得なかった。

 裁判は、共犯者全員が併合されて行われ、他の従業員にも私選弁護人が付いていた。彼らは、単に従業員にすぎず、執行猶予は目に見えている。
 経営者はというと、検察官や裁判官からの質問に対しても、私に説明をしたのと同様の供述をしている(もちろん、捜査段階での供述調書も同じ内容である)。ただ、経営者が嘘を言っているとの確証があるわけではなく、結局全員が執行猶予となった。

 私としては、先にも書いたように、経営者の供述内容はほとんど信用できないと考えていたから、釈然としない気持ちであったが、刑事弁護人との立場からしたら、執行猶予が付いたことを良としなければならないのだろうから、これまた複雑な気分であったことを思い出す次第である。

元記事

裏カジノ事件

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