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認知症高齢者とそのご家族に効果がある音楽療法の基礎知識

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皆さま、初めまして!介護福祉士として音楽療法士として家族として、認知症の方との時間を過ごしているあきちゃんと申します。今年で97歳になる私の祖母は、アルツハイマー型認知症を患っています。「高齢だから仕方がないね」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、当事者にとっては、わからなくなることはものすごく悲しく辛いことだと思います。第一回目は、認知症の方に効果的であると考えられている音楽療法についての基礎知識をお話しさせていただきたいと思います。
大好きな祖母と

音楽療法って何?

音楽療法とは、身体の機能や、心理状態、精神状態の維持・改善を目的に音楽を意図的に活用することです。「療法」ということで、きちんと訓練を受けた音楽療法士によって行われる治療の一つと言われています。

音楽療法の歴史はとても古く、古代エジプトや紀元前といったかなり古い時代までさかのぼります。人間の中に悪魔が住み着くことが病気の原因だと思われていた時代は、シャーマンと呼ばれる呪術師が、音楽を使って体内に住む悪魔を追い払っていたと語り継がれています。

その後、さまざまな時代を経て現在の形になったのですが、音楽そのものを治療に使うという考え方は、古代エジプトの頃から変わっていないと考えられます。

音楽療法が認知症の方にとってなぜ効果的なのか?

誰しも、音楽を聴いて安心したり、感動したり、癒されたりした経験があると思います。ここではもう少し掘り下げて、なぜ認知症の方に音楽療法が効果的なのかお話します。

誰しも無意識に感じているリズム

音楽は、リズム・メロディー・ハーモニーの3つの要素から成り立っています。そのうちの一つであるリズムですが、人間の体に深く関わっているのです!それは、心拍や脈拍です!!

生きているかぎり、心臓・脈は止まることがないと思います。その心拍や脈拍のスピードは、運動をした時、体の不調、病気などいろいろな理由で変化すると思います。また、緊張した時に楽器の演奏が早くなるのは、ノルアドレナリンの分泌が活発になり、交感神経を活性化させるからだと考えられています。

交感神経が刺激されると、心拍数があがるので無意識に身体の中の拍子で演奏してしまうため、演奏の速度も速くなるのです。このことから、身体に存在しているリズムを無意識に感じて表現していると考えられます。

たとえ、音楽の教育を受けていなくても、耳が聞こえにくくても、認知症でも、自分の体の拍子を無意識に感じ取り、太鼓をたたいてくださったり、楽器を鳴らしてくださいます。一見バラバラに聞こえても、少しずつ音が集まってタイミングが合ってみたり、もしくは違ってみたり…という経験が振動として身体に伝わり、心臓や脈拍と合わさり、心地の良い音楽につながることがあります。

民謡や歌謡曲などを一緒に演奏することで、安心できる音楽、なじみのある音楽に結びつき、自分の発した音やリズムが一体感を生み出します!その経験を共有することが、音楽療法の効果に結びつくのです!

認知症の方の昔の記憶(長期記憶)に働きかけることができる

認知症の方は、ご飯を食べたことやトイレに行ったこと、どこかに外出したことなど、ちょっと前のことを忘れてしまうことが多いと言われていますよね?それに対して、昔の記憶はしっかりと残っていることが多いと思います。ちょっと前の記憶を短期記憶と呼び、昔の記憶を長期記憶と呼ぶことは、皆さま、耳にしたことがあるかもしれません。
種別
短期記憶
長期記憶
症状


特徴
記憶が残りにくい
記憶が残っている

昔の記憶を引っ張り出すために、音楽を活用することがあります。楽しかったこと、ときには辛かったことも思い出してしまいますが、昔のことを話すきっかけになります。認知症の方は、病気になったことで自分自身ができないことの多い人間だと思ったり、今の状況がわからなく混乱していることが多いです。

しかし、昔のことを思い出すことで自分を取り戻すことができます。楽しい思い出はもちろん、辛い思い出を思い出してしまっても、一緒に悲しみ、一緒に向き合い、共有してくれる人がいれば効果的な役割を生むことがあるのです。懐かしい曲を演奏すること、聞くことは心の安定につながります。

「感情は残る」という特性にうまくアピールできること

皆さま、感情残存の法則はご存知でしょうか。出来事自体忘れてしまっても、「楽しかった」「悲しかった」という感情は覚えている認知症の特性のことです。

例えば、攻撃的な口調で接する人がいるとします。そうすると、認知症の方はその人に対して怖いという感情が残るため、警戒をするなどの例がございます。逆に優しい人に対しては、笑顔が見られたり心を許していらっしゃる印象を受けます。音楽療法はこの特性に対して働きかけることができます。
いつもニコニコ優しく接している職員

音楽を体験中に、「楽しい」「さみしくない」という感情を抱いてくだされば、音楽の時間は認知症の方にとって落ち着ける時間になります。音楽療法の時間では、認知症の方でも積極的に音楽療法に参加してくださったり、発言してくださる様子を比較的多く見ることができています。また、ニコニコとした笑顔を向けてくださる方がとても多いです。

音楽療法を通して見えてくる姿

音楽療法を通して、私はその方自身の本来の姿を見ているような気がします。ご家族の方にとっては、「そういえば、お父さんは音楽が好きだったんだ」「よくこの歌を歌っていた」という思い出から、コミュニケーションのきっかけになることもあります。

また、「おばあちゃんがこんなことをできるなんて」とご家族には見せていない姿を見られて驚かれる方もいます。「認知症だから」と思っていても、音楽という手段をひとつ介入させるだけで、ご本人も家族も新たな発見ができ、その発見や感じたことが安心や自信につながるのです。

さいごに

いかがでしたか?長くなりましたが、次回以降は、ゆっくりとひとつずつ音楽が効果的な理由、また、どうやって日常のケアに音楽を取り入れることができるのか、ちょっと関わり方に工夫するだけでスムーズに行くケアの方法、BPSD(周辺症状)に対する音楽療法の効果などについての情報を発信していきたいと思っております。

この記事を書いた人

あきちゃん

大学、大学院と音楽療法について学んだ後、認知症対応型グループホームに勤務。認知症の方とのコミュニケーションの取り方や終末期について多くのことを学び、音楽が様々な記憶と結びついていること、気持ちを落ち着かせるために有効であることを実感。認知症介護実践者研修を修了。現在、介護老人保健施設で介護業務に携わりながら、音楽療法の効果をケアに結びつける具体的な手段を模索中。同居しているアルツハイマー型認知症の祖母(96歳)と出かけることが日課。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
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