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囲碁七冠の井山裕太 「戦う碁」は国際戦強い中韓の影響大

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 囲碁界で前人未踏の七冠制覇を成し遂げた井山裕太(26)は「なぜそんなに強いのか?」という素朴な問いに、「自分が強いと思うことはあまりないけれど」と前置きし、「碁でまずい手を打つのは、実力が足りないのだから仕方ない。棋士はある意味、負け慣れていますから。その都度うまく切り替えていくことが僕は得意なのかもしれません」と自らを分析してみせた。

 タイトル戦18連勝を含む圧倒的な強さで棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段の七大タイトルを独占した井山が「負け慣れている」という囲碁の世界とは──。

 偉業達成から3日後、井山は本誌に囲碁への思い、未来の夢、そして26歳の意外な素顔を披露してくれた。

「技術的には、誰にも負けないというものは持っているつもりです」

 七冠達成直後の共同記者会見で井山が漏らした言葉が気になった。「負けないもの」とは何なのか? 井山の答えは、囲碁では必要不可欠とされる読みの力ではなく「感性」だった。

「勝負が揺れて時間が切迫している時は、とくに自分の感性を信じて打つことにしています。そういうことには自信を持ってやってきたつもりです」

 言葉は強いが、表情は実に穏やか。聞く者をどこかホッとさせるのは井山の人柄だろう。時々出る関西弁が人なつっこさを感じさせる。

 井山の信条は「自分の打ちたい手を打つ」ことだ。なんだ、誰にでもできるじゃないか。そう思う人も多いだろう。井山にとって「打ちたい手」とは過去に例をみない斬新な着想であり、それには常に大きなリスクがともなう。

「価値があると思う手は試してみたい。それでたとえ負けても、試したことでわかることがあればそれでいいかな、と。僕は常識や先入観で捨てている手が、人より少ないのかもしれません」

「打ちたい手を打つ」ことと並んで、井山の代名詞となっているのが「戦う碁」だ。井山とここ2年続けて王座戦を戦った村川大介八段(25)はいう。

「井山さんは常々、若手棋士に『碁は戦いだ。戦わないで勝てるほど、碁は甘くない』と話しています」

「戦う碁」は国際戦で圧倒的な強さを見せる中国、韓国の影響が強い。井山の国際戦での優勝は過去わずか1回。ハードな国内対局に追われて、世界に打って出る機会は年2回程度と限られているのが現状だ。

「中国・韓国の棋士には『どうして国際棋戦に出てこないの?』と言われますが、少ないとはいえチャンスがなかったわけではないですし……。日本碁界のためにも頑張りたいですね」

◆いやま・ゆうた:1989年5月24日生まれ、大阪府出身。5歳でテレビゲームをきっかけに囲碁を始め、6歳で石井邦生九段に弟子入り。師匠との約1000局に及ぶネット対局と実戦で才能を開花させ、中学入学と同時にプロ入り。20歳4か月で史上最年少名人の記録を更新し、4月20日に史上初の七冠を獲得した。趣味はスポーツ観戦、好きな漫画は『名探偵コナン』、好きな芸人はダウンタウン。

取材・文■甘竹潤二 撮影■田中智久

※週刊ポスト2016年5月20日号

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