【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー/第6回「僕はテロリストじゃない」
ニューヨーク在住、TABIZINEライターの青山沙羅です。あらゆる国から人が集まっている、ニューヨーク。この街には集まった人の数だけ、異なる人生があります。世界の大都会を輝かせているのは、この街を目指した人々の希望、絶望、涙、吐息。筆者の心に残る、忘れられないニューヨーカーたちとの出逢いを語ってみましょう。絵空事ではない、あなたが知らないリアルなニューヨーカーとは。
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【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカー
第1回「グアテマラから歩いてきた彼」
第2回「子どもとはスカイプで繋がっている」
第3回「出逢いと別れを繰り返す街」
第4回「ゲイカップルのデザイナー・ベイビー」
第5回「NYCの食は僕たちが支えている」
NYで生きていければ、世界中のどこででも生きていける
アラブというと、何を思い出すでしょうか。私の頭に浮かんだのは、砂漠と駱駝(らくだ)でした。広大な砂漠を行く駱駝と、ターバンを巻いた人々。そんな程度の知識しかなく、アラビアの人と話したのは、ニューヨークが初めてでした。
アラブの国の人
アラビア半島のひとつであるその国の人は、週末のクラスには多かったのです。
地図上では西アジアに分類され、日本人とは一応アジア人同士なのですが、彼らの浅黒い肌、彫りの深い顔は、東アジアの私たちとは似ても似つかぬ容貌でした。その中で、モハメット(アラブ人に多い名前)24歳は際立ってハンサムで、俳優にでもなれそうなほどでした。
オーバータイムは、タイムカードを押させてから
ニューヨークの飲食業は、移民で支えられているといっても過言ではないでしょう。彼もレストランで働いていました。
「マンハッタンのレストランで働くのに、通勤時間は2時間。僕の住むブルックリンのブライトンビーチ(ブルックリンの最南端)は家賃が安いけど、何しろ遠いんだ。でも、これ以上の家賃は払えないよ」
「飲食業は、労働時間が長いよ。店側はNY州の規定労働時間をオーバーすると、タイムカードを退勤で押させて働かせるんだ。酷いよ。僕たちが永住権を持っていないと思って、足元を見ているのさ」
Brooklyn区の Atlantic Aveには、多くのアラブ系が住み、コミュニティがあるようでした。
僕はテロリストじゃない
ニューヨークは過去に911がありました。この悲劇の後、アラブ系に対するヘイトクライム(人種、宗教、嗜好に対する偏見で起こる憎悪犯罪)が急増、モスリムの衣装、名前でアラブ系と分かるため、マークされやすいようでした。
「アラブ人は、すべてテロリストだと思われる」
「女の子たちは皆怖がって、ニューヨークでガールフレンドなんて出来ないよ」
彼のようなハンサムな人にガールフレンドがいないなんて、男性不足のニューヨークで信じられない話でした。
ドバイは架空の街
ドバイは人気があるけれど、あそこでは仕事があるんじゃないの?
「ドバイは、砂漠に建てられた架空の街だ。ラスベガスと同じさ。住んでいるほとんどが外国人。もう先が見えているよ。あそこで働きたいとは思わないね」
ニューヨークでも未来が見えない
ニューヨークはどう?
「マンハッタンは仕事をするには良いかもしれない。でも、家賃が高すぎて住むところじゃない。何もかも高すぎるし、うるさくて落ち着かない」
ニューヨークにはずっと住むつもり?
「わからない。住居から仕事場まで遠すぎる。気持ちが落ち着かない街だね」
(C) Hideyuki Tatebayashi
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僕の国に未来はない
家族とは?
「家族とは仲が良いよ。毎日連絡を取り合っているし、なんでも話し合っている。ただ、彼らの問題も全部抱え込まなきゃいけなくなるんだ」
国に帰る?
「自分の国には帰らない。家族が政府関係でもなければ、自分の国では未来はない」
20代半ばにして「自分の国に未来がない」とは、なんと悲しいことをいうのだろうと胸を突かれました。その時の彼は妙に饒舌で、誰かに何かを語りたかったのか、1時間ほども話に付き合った記憶があります。あの時のモハメットに何を言ったのか、今では記憶が不確かです。「大丈夫、あなたはきっと幸せになれる」と言ってあげられたのでしょうか。
彼のことを思い出すと、砂漠を駱駝で行く旅人のイメージが浮かびます。平坦ではない人生を旅する、彼の無事を願わずにはいられません。
【連載】あなたの知らないリアルなニューヨーカーは、今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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[Photos by Shutterstock.com]
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