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熊本復興 「飲む」「行く」「買う」のが最高の支援だ

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 熊本地震発生から1か月が過ぎようとしている。今我々ができることはなにか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が考える。

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 熊本、大分を中心とした九州地方を大地震が襲ってから1か月が経とうとしている。余震が続くなか、いまなお車中泊を余儀なくされる人々もいる。本来なら暮らしに衣食住は欠かせないが、それだけでは「いつもの暮らし」には戻れない。衣食住以外にも、生きるためのよすがは必要なのだ。

 5年前の東日本大震災のあと、避難所生活を送っていた飲食店店主から「やるべきことが見つからない時期が一番つらかった」と聞いた。その店主は避難所で調理を担当するようになって「むしろ自分が救われた」と言っていた。暗闇に差すわずかな光に力を与えられることがある。そしてそのわずかな光を引き込む奉仕のようにも思える行為自体が、自らのよりどころになる。

 生産者農家や飲食店といった、小規模事業者や個人事業主の場合はなおさらだ。目の前にある「やるべきこと」が何重もの意味で救いになる。「よりどころ」のほかにも、仕事が減ればその分だけ生鮮品や育てた作物がロスとなる。ただ売上が下がるだけではない。小規模事業者にとって、ロスという永遠の不良在庫が与える打撃は大きい。

 例年なら、観光客でにぎわう熊本の黒川温泉や大分の由布院なども地震直後からキャンセルが相次いだ。徐々に客足は戻ってきているというが、地震以前にはまだほど遠い客入りだという。それでも現地は次々に平常営業に戻りつつある。熊本の黒川温泉では29軒中25軒が営業中。由布院でも温泉観光協会加盟店の9割以上にあたる168軒、宿泊施設も91軒中77軒が営業を行っているという。

 交通機関もGWを前に続々復旧した。一部区間が不通となっていた九州新幹線は27日に全線開通。一部通行止めとなっていた九州自動車道も、GW初日の午前9時に全線が開通した。現在、復旧していない主要路線は、震源に近いJR豊肥線の肥後大津(熊本)と豊後萩(大分)間、ローカル鉄道の南阿蘇鉄道、それに大分自動車道の由布院ICと日出JCT間の17kmという3路線のみ。

 熊本と大分の行き来の便はよくないが、福岡などを起点とした縦断ルートは開通した。大分道もGW明けの応急復旧に向けて、急ピッチで作業が進んでいるという。

 折しも熊本は名産品であるスイカの出荷の最盛期。だが、地震のせいで売り物にならなくなったスイカも多いという。愛知県の大村秀章知事が「熊本の酒で宴会を」と呼びかけたが、酒にしても工場損壊や在庫破損など大きな被害を受けた蔵元もある。それでも予震や本震発生後に比べれば、物流も戻りつつある。

 もちろん義援金や寄付金もいい。だが、いま現実に苦境に立たされている生産者や事業者の背中を支えたいと考えるなら、まず彼らが手塩にかけた商品やサービスを存分に味わい、その対価をきっちり支払うことだ。そうした行動は、遠隔地からでも現地にまっすぐ届く。

 例えばGW明け、九州に本拠を置くソラシドエアで熊本空港や大分空港へと飛び、週末の一泊旅行を楽しむ。現地に行けずとも九州料理を供する居酒屋で熊本や大分の酒を呑み、ネット通販の「熊本・大分特集」の商品を買う。マーケット自体を支えることが、現地の力になる。

 東日本大震災からは5年が経った。避難指示が解除された地域に住む住民の口からは「震災の記憶が薄れれば、観光客増につながるのかもしれない。でも忘れられることって、見捨てられるこわさとも背中合わせなんです」という声も聞かれた。

「忘れる」「見捨てる」のは誰か。ほかならぬ、“安全圏”に暮らす我々である。「飲む」「行く」「買う」は現地の背中を押すというだけでなく、起きた事象を自分自身に刻む行為でもある。「明日は我が身」。この国で起きる震災が、他人事であろうはずがない。

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