待機児童問題 安倍政権が打ち出す解決策の弱点

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待機児童問題 安倍政権が打ち出す解決策の弱点

待機児童問題の解消に向けて、政府が打ち出した施策の一つに「小規模認可保育所」というものがある。待機児童の85%が0歳〜2歳児であることに着目し、0〜2歳児を預かる小規模保育を増やすことで根本的な解決につなげようというものだ。

ただ、これだけではこの制度が子を持つ親や保育園運営者にとってどんな意味を持つのかわかりにくい。

そこで今回は『ど素人でもできる! 口コミで評判の保育園をつくって成功する方法』(TAC出版刊)の著者で、豊富な保育園運営経験を持つ若林雅樹さんに聞いた。

――本書では「これから保育業界に参入するなら、小規模保育所で開園したほうがいい」と書かれていますが、これはどのようなものなのですか。

若林: 待機児童の中心である0歳〜2歳までのお子さんを預かる定員19名の小規模な保育施設のことです。この制度は、2012年8月に施行された『子ども・子育て支援新制度』の目玉といえるもので、待機児童解消の切り札といっていいものでしょう。

――この制度は運営側にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。

若林:一般の認可保育園に比べ定員数が少ないため、狭いスペースで始められる。新規の参入者にとっては、それだけハードルが下がるというのがメリットでしょう。

それと、最低限、自治体が定めている基準を満たした上で認可を受託できれば、園児も行政が集めてくれますし、保育園設置にかかる工事費用や運営費用に対しても補助金が出ます。

これらのことから、経済的に安定した事業運営が可能になるというのが最大のメリットでしょう。助成金が出るということは、もちろん利用者にとっての負担も少なくて済みます。

――補助金まで出してもらえるんですね。

若林:はい。ただ厳密にいうと、行政に開園を申請するにあたって2パターンあり、注意が必要です。自主整備型と補助金型です。

後者の場合、内装工事費の約3分の2を補助してもらえるというメリットがある反面、厳しい審査に合格する必要があります。それなりの実績がなければ審査に通りません。

なので、まだ保育園事業でまったく実績がない場合、まずは認可外保育園からスタートしたり、自主整備型で申請して実績を作り、さらに別の園を開くとなった段階で補助金型を使うのがいいでしょう。

――ここでいう「実績」とは、どのようなものでしょうか。

若林:すでに認可保育園、もしくは小規模認可保育園を運営していれば、「実績あり」と見なされます。

ものすごく極端な話をすると、認可外の保育園を複数園運営したことがある人と、認可保育園あるいは小規模認可保育園を1園だけ運営したことがある人とを比べたとき、行政は後者のほうを「実績あり」と見るのではないでしょうか。

その意味では、まず認可外保育園からスタートして保育園運営の実績を積み、とにかく
小規模認可保育園を1園でも良いので運営出来るように努力する事が大事です。

――なるほど。逆に利用者側にとって、デメリットはないのでしょうか。

若林: 一般の認可保育園であれば小学校就学前まで通園可能ですが、小規模認可保育園の場合、子どもが3歳になると卒園しなければなりません。親にとっても、子どもにとっても、このタイミングでの転園というのは結構な負担になりますので、これがデメリットでしょう。

また、さらにいえば、転園できればまだいいほうで、転園できない可能性すらある。

「連携施設」といって、小規模認可保育園の事業者は、行政に設置申請をする際、卒園後の子どもを受け入れてくれる認可保育園と交渉して連携してもらう必要があります。このように義務付けることで、制度設計者はデメリットを減らそうとしているわけです。

ただ、待機児童の多いエリアであれば、3歳児、4歳児でも枠がすぐ埋まってしまう。つまり、転園するつもりが転園できないリスクがあるわけです。これは今後の課題でしょうね。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

若林:保育園の経営は、社会的意義のある事業です。『子ども・子育て支援新制度』により小規模認可保育園と言う新しいタイプの認可保育園も導入され、これまで認可保育園に採択される事が難しかった事業者にも政府の後押しもあり、今、強い追い風が吹いています。

この本では、机上の空論ではなく、実際にここ数年私の会社で実践してきた経験と実績をそのまま書かせていただきました。

既に保育園を経営されていらっしゃる方はもちろん、これから保育園経営を検討している方も、ぜひ今後3年から5年間の保育園経営のための羅針盤として経営戦略の参考にしていただければと思います。
(新刊JP編集部)

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