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第45回 <怪獣ブーム50周年企画 PART-3> 『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』

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●「怪獣ブーム」とは
 今から50年前の1966年1月2日、記念すべきウルトラシリーズの第1作目『ウルトラQ』が放送を開始した。『鉄腕アトム』や『鉄人28号』などのアニメを見ていた子供達は、一斉に怪獣の虜となった。すでにゴジラ映画は6本を数え、前年の1965年にはガメラがデビューした。『ウルトラQ』終了後、これに拍車を掛けたのが同時期に始まった『ウルトラマン』と『マグマ大使』。見た事もない巨人が大怪獣を退治していく雄姿に、日本中の子供達のパッションがマックスで弾けた。
 これに触発された東映も『キャプテンウルトラ』『ジャイアントロボ』『仮面の忍者赤影』と次々に怪獣の登場する番組を制作。大映はガメラのシリーズ化に併せて『大魔神』を発表し、日活と松竹も大手の意地を見せて参戦した。そして少年誌はこぞって怪獣特集記事を組み、怪獣関連の出版物や玩具が記録的セールスを計上した。これは「怪獣ブーム」と呼ばれる社会現象となり、『ウルトラセブン』が終了する1968年まで続いた。
 ちなみに『帰ってきたウルトラマン』『仮面ライダー』が始まる1971年から1974年にかけて再ブームを起こすが、これは「第二次怪獣ブーム」(「変身ブーム」ともいう)と呼ばれ、最初のブームは「第一次怪獣ブーム」として厳密に区別されている。

♦♦♦

『大魔神』
1966年4月17日封切り(大映京都・84分)
監督/安田公義
特撮監督/黒田義之
脚本/吉田哲郎
出演/高田美和、藤巻潤、青山良彦、五味龍太郎、遠藤辰雄ほか

『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(コラム第43回)と同時上映された『大魔神』もまた、怪獣ブームを支えた名作だ。ゴジラに対抗心を燃やす大映は、今まで東宝がやっていなかった「怪獣映画2本立て」という、子供達にとっては夢のような興行に打って出た。監督は「座頭市シリーズ」などで知られる安田公義。続編が8月『大魔神怒る』(監督・三隈研次)、12月『大魔神逆襲』(監督・森一生)と、シリーズは1年で3本も制作された。ユダヤ民族を迫害から救うため巨像が動き出す1936年のチェコスロバキア・フランス合作映画『巨人ゴーレム』(37年日本公開)に着想を得た大魔神を目の当たりにした観客は、今まで見たことのない映像マジックに度肝を抜かれたのだ。

 戦国時代、丹波の国(現・京都亀岡市周辺)で家老・大舘左馬之助(名悪役・五味龍太郎)が謀叛を起こす。10年後、暗殺された城主の遺児、忠文(青山良彦)と小笹(高田美和)の兄妹は、忠臣・小源太(藤巻潤)と共に魔神が封印されている山で生き延びていた。圧政に苦しむ領地に潜入した忠文と小源太は、左馬之助に捕らわれてしまう。

 さて、ここまで延々と単なる時代劇を見せられた劇場の子供達が「大魔神いつ出るの?」と退屈してきた1時間過ぎ、ようやく怪異が起こる。神をも恐れぬ左馬之助は、民衆が崇める偶像の破壊を腹心(遠藤辰雄)に命じる。魔神の山に登った左馬之助の配下達は、埴輪の顔をした武神像の額に「コンコン」と大きなクサビを打ち込む。するとその額から血がポタリ、ポタリ。雷鳴轟き、悪人共は一人残らず土石流や地割れに飲み込まれてしまう。

 そして「この身を捧げますから兄と小源太を助けてください」と願う小笹の祈りに魔神が応える。武神像の左腕がギギギと動き出し、その腕が下方から顔の前を通り過ぎると、優しかった埴輪の顔は恐ろしい憤怒の形相に変貌! 魔神の封印が解かれ、石像に憑依したのだ。ここは名場面として、学校で「大魔神変身ごっこ」が流行った。特に、両手の拳を胸の前で合わせてから上に移動させるという、続編以降の変身ポーズが人気だった。

「大魔神や怪獣も愛読している少年誌」と謳った『週刊少年キング』1966年11月13日号。(筆者私物)

 大魔神は「ズーン! ズーン!」と地響きを立てて城郭に接近する。ここからのラスト10分間は、子供達の退屈を一気に晴らすように、瞬き一つ許さない怒涛のミラクル映像が展開する。「ゴジラシリーズ」で有名な伊福部昭の痺れる音楽に乗って、ある者は踏み潰され、ある者は握られたまま城壁の中にグイグイめり込まされ、城郭は破壊されていく。弓矢も鉄砲も城兵のあらゆる武器が大魔神には通用しない。ヤグラに上がる城兵を、同じ目線の高さでギロッと睨みつけるシーン(スーツ演者の生の目を使用)は、これぞ「進撃の魔神」! そう、大魔神の身長は『進撃の巨人』でいう「4メートル級」の4.5メートル。何十メートルもある巨大怪獣物に比べて、建物のミニチュアが実物の2.5分の1というスケールで作ってあり、これが実物大の作り物(魔神の手足、建物)と併用され効果を高めた。

 さて、ついに左馬之助を掴まえた大魔神は、自分の額からタガネを抜き心臓を一突き! やられたら、やり返す魔神様。だが、まだ怒りが収まらない大魔神は、罪のない村人も追いかけ回し「ズーン! ズーン!」と再び進撃開始。忠文が「止まって~」と大魔神にすがりつくも無視され、ここで小笹が大魔神の前に出て「どうかお怒りをお鎮めください」とひざまずく。彼女の涙が大魔神の足に落ちると、怒りの形相は元の優しい埴輪顔に戻り、その体はボロボロと土くれになって崩れていく。魔神様は若い娘に弱かった!

 大魔神は不思議とプロ野球選手と縁があり、かつては日本で一番多くヒットを打った張本勲(東映、巨人など)が似ていると言われ、日本最高級の救援投手・佐々木主浩(横浜、マリナーズ)は「大魔神」というニックネームで呼ばれていた。そして大魔神を演じた橋本力(ちから)は、元プロ野球選手(毎日オリオンズ=現ロッテ)だ。生涯打率は.224と低いが、合計604打席で12本のホームラン、盗塁30個と、ポテンシャルを秘めた成績を残した。『ウルトラマン』などの怪獣スーツで定評ある高山良策が造形した魔神スーツを、橋本が着た事で命が吹き込まれたのだ。どんな困難な状況でも役者魂で瞬きを我慢しカッと目を見開き、夏に撮影された『大魔神怒る』では、蒸れたスーツによる汗疹とインキンに耐えながら頑張った橋本力にMVPを贈りたい! ちなみに、橋本は『ドラゴン怒りの鉄拳』(72年)でブルース・リーと共演したが、彼がリーのキックで吹っ飛ぶ場面は無名時代のジャッキー・チェンがスタントをしていた。

 蛇足だが、大魔神にまつわる当時の子供向け記事が面白い。まず、パンフレットに掲載された、ガメラ・バルゴン・大魔神による「三大怪物座談会 誰が強いか」が傑作だ。大魔神は司会なのに、ガメラが「僕はマッハ3で飛ぶ」と自慢すれば「僕は山育ちだから、亀といやぁ石ころみたいに思っていた」と小バカにする。最後は「表へ出ろ!」とガメラもバルゴンもキレるが、大魔神は「あ、時間だ。ここらでどーも」と勝手に締めてしまう(笑)。

当時のパンフレット表紙。(筆者私物)

パンフレットに掲載された、子ども向けの特集記事。(筆者私物)

 また『怪獣大全集2 最新怪獣のすべて』(ノーベル書房、1967年発行)の「精密 25大怪獣解剖図」という章で、レッドキングやガメラなどの人気怪獣の体内をイラストで解説しているのだが、その中に大魔神も混ざっていて、人間の心臓に当たる部分に「火焔臓」という臓器があり、それが「火焔腺」という器官を通じて殺人火焔を発すると描かれている。大魔神は神様が石の体を借りているだけなので内臓なんてあるはずないのだが……。

怪獣図鑑『最新怪獣のすべて』(ノーベル書房、1967年発行)。(筆者私物)

怪獣図鑑『最新怪獣のすべて』より、大魔神の解剖イラスト。(筆者私物)

 ともかく、『大魔神』はアナログ特撮の頂点を極めた、もはや芸術作品。デジタル慣れした若い人にも、是非シリーズ通して(3作ともイイ!)観てもらいたい。

(文/天野ミチヒロ)

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