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恵比寿の夜が幸福感に包まれた夜。 清春、「ツアーが終わっても幸せは続く。僕らはこれを成功と呼びます!」

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5月2日、東京・恵比寿ガーデンホールを埋め尽くしたオーディエンスは孤高のソロイスト、清春の歌声に酔いしれた。この夜のライヴは昨年末から去る3月にかけて全国展開された3年ぶりのソロ・ツアー、「TOUR天使の詩21」の追加公演にあたるもの。そして同時に、このツアーにおける軸となっていた最新ソロ・アルバム、『SOLOIST』発売後初のステージでもあった。

その最新アルバムでも1曲目に収められていた「ナザリー」で幕を開け、同作序盤の曲順通りに「夢心地メロディー」「EDEN」と続いていく流れは、約40日前に終了に至っていたツアーの際の流れを汲むもの。それに限らず、演奏プログラム的には新しい何かが導入されているわけでは決してなかった。が、明らかに『SOLOIST』からの楽曲たちが育っているのが伝わってきた。それは、ツアーの過程を通じて清春自身や彼を取り巻くメンバーたちのなかで楽曲が咀嚼されてきたのみならず、足繁くライヴ会場に通い詰めてきた多くのファンが、アルバム発売前からこれらの楽曲群が演奏されるさまを、全神経を集中させるようにしながら見守り続けてきたからこそでもあるはずだ。しかも、そうして新曲たちが熟成されてくると、今度は長年ライヴの定番であり続けてきた旧楽曲たちの響きまでもが違ってくる。こうした現象は清春自身にとっても刺激的なものだったのではないだろうか。

唯一、とても具体的な差異としては、アルバムにもツアーにも全面参加していた沖山優司(b)が、日程上の理由によりこの公演に不参加だったこと。しかし今回起用された蛇石徹(b)は、この夜が初めての公演参加とは思えぬ演奏ぶりでサポート。三代堅、中村佳嗣というお馴染みのギター・チームも、楠瀬拓哉(ds)も、単なる安定にとどまることのない、深い味わいと躍動感を兼ね備えた演奏を聴かせた。

結果、この夜の演奏は3時間10分にも及び、清春は三度にわたるアンコールに応えながら、全13曲の『SOLOIST』収録曲を含むトータル25曲を熱唱した。終演が近付くにつれ、彼の口からは「もうすぐ終わっちゃう」といった言葉がこぼれ、客席からは条件反射的に「え~っ!?」という声が渦巻いていた。が、それはしばらく彼のライヴに触れることができない悲しみや寂しさを訴えるものではなく、限られた時間を目いっぱい楽しもうとする叫びに聞こえた。「いつか辞めちゃう」などと言いながら“いずれ訪れる終焉”を匂わせつつ、「死んでも憶えてて! 死んでも一緒です!」と清春は叫んでいたが、それもまた筆者にはむしろ歓喜の叫びに聞こえた。自分たちが望む限り、最後の瞬間まで愛し続けられるものがあり、しかもそれを共有する人たちが同じ場所に集っているという喜び。この夜のガーデンホールに充満していたのは、まさにそうした幸福な空気だった。

清春は「ツアーは終わっても、幸福は続きます」とも語っていた。そして「何が成功で何が失敗かはわからないけど、僕らはこれを成功と呼びます」とも。これは、間違いなく成功に終わったツアーから40日を経ての、そこに満ちていた幸福感をいっそう色濃いものとして上塗りすることに成功した追加公演だった。この先、sadsのライヴ活動については告知されているものの、ソロイストとしての清春の活動予定については何ひとつ公にされていない。しかし、だからこそ逆に、これから先の清春にはどんな動き方も可能なのだ。確かにこの夜をもって、時間の流れにひとつの区切りがついたことは間違いない。が、次の新たな幸福な瞬間は、もしかすると思いがけないほど早く到来することになるかもしれない。それを信じて、聴き手ひとりひとりのなかで『SOLOIST』を熟成させ続けておいて欲しいものである。
Text:増田勇一

Photo:横井明彦


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