地震に備えて今からできることは? 耐震基準から防災グッズまで

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地震に備えて今からできることは? 耐震基準から防災グッズまで

4月14日午後9時26分ごろ、熊本県で震度7の地震が発生しました。「平成28年熊本地震」により被災されたすべての方に心よりお見舞い申し上げます。

これまでSUUMOジャーナルでは住宅の地震対策や、災害時の街・地域の取り組みなどを伝えてきました。日本は地震大国です。残念ながら地震の発生を未然に防ぐことはできません。しかし、その被害を最小限に食い止めることは可能です。今回は過去に掲載した記事のなかから、日本の耐震基準や、耐震診断・耐震工事はどんなことができるのか、地震に備えて準備しておきたいグッズや対策などについての記事をまとめました。

日本の耐震基準・地震に対する建築技術をおさらい

【図1】主な大地震と耐震基準の変遷(SUUMOジャーナル編集部作成)

【図1】主な大地震と耐震基準の変遷(SUUMOジャーナル編集部作成)

地震のたびに強くなってきた耐震基準。旧耐震と新耐震をおさらい

(2016年3月11日掲載)

“耐震設計法が抜本的に見直されたのは1978年の宮城県沖地震後。1981年に施行された「新耐震設計基準」(新耐震)だ。現在では1981年以前の基準を「旧耐震」、以後の設計法を「新耐震」と呼んでいる。それまでの「旧耐震」では、震度5程度の地震に耐えられることが基準。しかし、「新耐震」では、建物の倒壊を回避するだけでなく、建物内にいる人の命を守ることに主眼がおかれ、比較的よく起きる中程度の地震では軽度なひび割れ程度、まれに起きる震度6〜7程度の地震では崩壊・倒壊しない耐震性を求めている。”

“しかし、新耐震基準だから100%大丈夫というわけではない。”

“地震に強いか弱いかは、さまざまな要因が影響するからだ。では、どんな家が地震に強いのだろう。”

“まずは「建物の形」。地震に強いのは上から見たときに正方形や長方形のシンプルな形の建物。”

“また、建物だけでなく地盤も耐震性に影響する。弱い地盤の場合、同じ震度でも建物に伝わる揺れが大きくなる。”

◎「免震」「耐震」「制震」…大地震に強いのはどれ?

(2013年1月25日掲載)

“<耐震構造>

壁や柱を強化したり、補強材を入れることで建物自体を堅くして振動に対抗する。

<制震構造>

建物内にダンパーと呼ばれる振動軽減装置を設置し、地震のエネルギーを吸収。建物に粘りをもたせて振動を抑える。

<免震構造>

建物と地面の間に免震装置を設置。建物を地面から絶縁して、振動を伝えない。”

“いずれも、建物自体の損壊を防ぐという点では優れた工法ですが、「免震」の場合はさらに「建物内の揺れを軽減する」という利点があります。基礎部分に埋め込まれた免震装置が「激しい地震エネルギーを吸収」→「ゆるやかな横揺れに変え、家具の転倒などの被害を最小限に食い止める」というもので、耐震・制震に比べ揺れを三分の一程度に抑えられるそう。”

◎「耐震等級」だけじゃない? 耐震の性能を表す数値

(2016年3月22日掲載)

“日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)の調査※1では、2000年の建築基準法改正以前の1981年〜2000年5月の新耐震基準で建てられた木造在来工法の住宅で、耐震診断を受けたうちの86.2%が現行の耐震性を満たしていなかった。”

“中古住宅の場合、建築当時の建築基準法を守って建てられていても、家の形や地盤の強度、施工状態などが家の強さに影響する。中古住宅購入の場合や、現在の住まいの耐震性について不安がある場合は、耐震性を客観的に確認できる「住宅性能表示制度」や「耐震診断」の利用を考えてみるといいだろう。”

“建物の地震への強さの目安になる指標にはいくつかあるが、そのなかでよく目にするのが「等級1」などの「耐震等級」だ。これは、2000年に施行された「住宅品質確保促進法(品確法)」の住宅性能表示制度にあるもの。「地震に対する強さ」が壁の量や配置などによって評価され、3段階で示される。”【図2】耐震等級(構造躯体の倒壊・崩壊・損傷等防止)

【図2】耐震等級(構造躯体の倒壊・崩壊・損傷等防止)

耐震診断・補強にはいくらかかる? どんなことができる?

◎「私の家は大丈夫?」地震が来る前に知っておきたい耐震診断

(2015年5月29日掲載)

“地震が引き起こす被害のうち、特に大きいのは「家の倒壊などによる圧死」と日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(以下:木耐協)の関さん。「柱や梁、天井の下敷きになると、救助なしでの脱出は難しくなります」”

“「自分の家は地震が来た場合大丈夫なのか?」と不安に思うならば、まずはきちんと耐震診断を受けることが重要。自分の家が倒壊する可能性はどれくらいなのかを調べておくにこしたことはないといえそうだ。”

“耐震診断は自治体や民間の団体、リフォーム会社に依頼できる。無料のところも15万〜20万円ほどかかるところもあるが、診断内容を確認して依頼しよう。補強工事にかかる費用は、建物の状態などにより異なるが、100万円未満で行うケースも少なくない。

また、一定条件をクリアすると、国や自治体の減税や補助金が受けられることも。「補強レベルを高めて補助金を受けるか、簡易補強にして工事費を抑えるかは考え方次第。家族やリフォーム会社とよく相談して決めましょう」(関さん)”

◎耐震補強工事の平均額は約152万円、倒壊する木造住宅の共通点とは

(2015年9月16日掲載)

“平成18年4月~27年6月に耐震診断した2階建て以下の木造住宅2万2626棟を分析したところ、現行の耐震性を満たしている住宅(「倒壊しない」「一応倒壊しない」)は7.9%で、耐震性を満たしていない住宅(「倒壊する可能性がある」16.2%「倒壊する可能性が高い」75.9%)は92.1%に達した。平均築年数は、約34年だった。”

“このうち、耐震補強工事の金額について回答があったものの平均施工金額は、約152万円(中央値128万円)だった。”

“木耐協によると、倒壊する木造住宅には、共通の弱点があるという。

(1)壁の量が少ない

(2)壁の入れ方のバランスが悪い

(3)柱のホゾ抜け対策がされていない

(4)腐朽や蟻害で弱くなっていた

このうちホゾ抜け対策とは、土台と柱を接合する際に、片側に突起(ホゾ)、もう片側に穴を開けて継ぐのだが、地震の揺れで柱が抜けないように接合金物を取り付けることだ。

ただし、すべてを補強しようとすると費用がかかってしまうため、費用対効果の高い補強工事から進めていくことが重要だと、木耐協では指摘している。”【図3】耐震補強工事の種類と優先順位(出典:木耐協 監修・発行「木造住宅 耐震百科」より)

【図3】耐震補強工事の種類と優先順位(出典:木耐協 監修・発行「木造住宅 耐震百科」より)

地震に備えて準備しておきたいグッズと家具の転倒防止対策

◎マンションの防災力を格段に高める、意外に身近な「7つ道具」とは

(2014年12月9日掲載)

“災害時の考え方としての3つの「助」、「自助」「共助」「公助」があるのをご存じだろうか?

「自助」は自分と自分の家族は自分で守ること、「共助」はマンションや地域の人と相互に助け合うこと、「公助」は区や警察・消防・ライフラインなどの機関による対応活動などを指す。金さんによれば、「一般的に自助:共助:公助の割合は、7:2:1などと言われたりするが、災害が起きた直後数日間においては、実に9:1:0になる」という。”

“自助力を高める第一歩は水の用意。1人当たりに必要な水は1日3リットルだという。まずは3リットル×家族分×数日分を用意しよう。

次に自宅の家具・家電の転倒防止策も大事だ。ただ、マンション高層階では地震の揺れで突っ張り棒が外れてしまったケースなどもあるそうだ。転倒防止グッズをしているからと安心せず、寝室には高い家具を置かない、などの対策も考えてほしい。”

“金さんがオススメするマンションに備えておきたい道具を紹介しよう。

●マンション(管理組合)で備えておきたい「7つ道具」

1.バール・ハンマー

2.プラベニヤ

3.南京錠・クサリ

4.ホワイトボード

5.テレビの室内アンテナと発電機

6.キーボックス

7.防災マニュアル”

“金さんいわく、備えと同様に必要なのは、人と人とのつながり、コミュニティだという。都会のマンションでは隣の人は何する人ぞ? というところも多い。そんなときでも「挨拶」、これだけはぜひやってほしいという。普段から挨拶をしている関係なら非常時の声掛けもよりスムーズになるはずだ。”

◎地震に備えて…カンタン&壁を傷つけない家具の転倒防止策

(2015年1月16日掲載)【画像1】(写真撮影:玉置豊)

【画像1】(写真撮影:玉置豊)

“地震に対する備えといえば、水や食料の備蓄や避難場所の確認などを真っ先にイメージしますが、東京消防庁の「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」によると、まずは震災時に怪我をしないための対策が大切なようです。”

“近年発生した地震で、怪我をした原因の約3割~5割は、家具類の転倒・落下・移動によるもの。”

“ホームセンターの防災グッズコーナーへ行ってみると、壁にも家具にも傷をつけることがなく、設置も簡単な転倒防止器具が多数販売されていました。突っ張って支える転倒防止自在ポールは、家具から天井までの距離さえ測って購入すれば、設置はとても簡単です。また家具の下に挟むストッパー式の器具と合わせることで、ネジで固定するタイプの器具と同等の耐震効果が期待できるそうです。”【画像2】家具の転倒を防止するストッパー式器具(写真撮影:玉置豊)

【画像2】家具の転倒を防止するストッパー式器具(写真撮影:玉置豊)

“もっと簡単な転倒防止対策としては、家具の下に振動を吸収するゲル状のマットを敷くという方法もあります。これなら補強したい箇所に挟むだけで設置が可能なので、固定が難しいテレビやパソコン、あるいは花瓶などにも応用が利きそうです。”

地震の被害を最小限に食い止めるために今からできることは、建物というハードについて把握や対策をすること、そして家の中でソフトとしての備えをすることの両方があります。自分が住んでいる家がどんな耐震基準で建てられているのかを知らなかったり、地震時に倒れてきそうな大きな家具を固定していなかったり、水や食料などを用意していないなど、意外とできていないことがあるかもしれません。

地震への備えは耐震工事に防災グッズなど多くの選択肢があります。そのなかで、自宅で地震に備えてなにをするのかを考えるキッカケとなれば幸いです。
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