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テレビと携帯。それぞれの緊急地震速報の『音』に秘められた技(ワザ)

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テレビ、携帯電話から響いてくる緊急地震速報。この2種類の緊急地震速報の音は誰がどんなふうに作ったのだろう。

NHKの緊急地震速報チャイム

♪トゥルルトーン トゥルルトーン…

(緊急地震速報チャイム)

このNHKで流れる緊急地震速報チャイムを作曲したのは、東京大学の名誉教授で音響学・電子工学・医療工学の研究者伊福部 達氏(いふくべ とおる=1946年生)だ。“伊福部”という名前を聞いてピンとくる人も多いかもしれない。実は、映画ゴジラの音楽を担当した伊福部昭氏が叔父にあたる。
NHKから作成依頼を受けたのは東日本大震災が発生する前の2007年。チャイムの制作にあたりいくつかポイントがあった。

緊急性を感じさせつつ、不安感・不快感を与えない

騒音の下でもお年寄りや難聴者にも聞き取りやすい

どこかで聞いた音に似ない
など

ゴジラの曲をアレンジすることも考えた?

最初はゴジラの曲の一部を抜粋しようと考えたらしい。しかし、あまりにも有名な曲なので辞めたそうだ。(曲の冒頭を聴くと少し似ている気もする)

(ゴジラのテーマ)

そこで、これまた叔父の昭氏が作曲した交響曲『シンフォニア・タプカーラ』第3楽章Vivaceの冒頭部分を参考に。(聴いてみるとなんとなく伝わる気もする)

(交響曲「シンフォニア・タプカーラ」第3楽章Vivace)

この曲から、人が聴き取りやすい音域の5つの音を抜き出し、曲調やスピードを変えて30曲程制作。それをスタッフと吟味して7曲程に絞り、今度は難聴者を含む、子供からお年寄りまで数十名を集め、日常を想定した様々な状況で視聴テストを行った結果、最終的に決定したのがあのチャイムだ。
誰にでも聴こえる音でなければならず、例えば、年齢が高くなると聴き取れなくなる『モスキート音』のような音は使わないなど、たった数秒のチャイムは実に緻密に作られている。


ゴジラ音楽と緊急地震速報~あの警報チャイムに込められた福祉工学のメッセージ~筒井 信介 (著), 伊福部 達 (監修) 出典amazon

携帯電話の緊急地震速報警報音

♪ウィ!ウィ!ウィ!

携帯電話 緊急地震速報警報音
気象庁が配信する携帯電話の緊急地震速報『エリアメール』の警報音。誰が聴いても緊張感が走る音、と言えるのではないだろうか。
制作者は、小久保 隆氏(こくぼたかし =1956年生)。主にシンセサイザーと電子音を扱う音楽家で、ヒーリングミュージックのCDを数多くリリースし、六本木ヒルズアリーナや、東京ディズニーリゾート・エクスピアリなどの空間音楽を手掛ける『音環境デザイナー』として活躍する大御所だ。

ちなみにドコモでは、電子マネーのiD決済時に鳴る《♪タラントロン》という音やメロディコールの呼出音《プルルル》などを作った人でもある。

警報音を聴きまくって研究

小久保さんがNTTドコモから警報音の依頼を受けたのも2007年のこと。「絶対に、誰でも気付く音にして欲しい」と発注されたので、それならば「誰も聴いたことのない音」にしようと決めた。
そこで最初にしたことは、日本国内のあらゆる警報音を聴くこと。踏切の警報音、パトカーや救急車のサイレン…注意喚起を促す音を片っ端から聞くこと三ヶ月。地震の機能・効能の定義を探り、ポイントを2つ絞った。

1)低音から高音へ急に変化する音を3回リピートすること

2)不自然な音の密度

繰り返し3回鳴らすと、最も注意喚起する力が強いこと。また、人の耳に残りやすい音は3キロヘルツ前後であり、3キロヘルツ周辺の狭い範囲の音を密集させ、低音から高音への変化をつけるなどの工夫が施されている。このアラーム音の不自然さを物語るに、音階にはできない“音”だそうだ。
更に、ケータイのスピーカーは高価なオーディオ機器とは違う特徴があること、消費電力も少なめにする。などの様々な問題を考慮し完成させた。
《ウィ!ウィ!ウィ!》という1秒弱の3つの音には、緻密な計算のもと作られていたのだ。

嫌われるのは成功の証

この2つの警報音、鳴れば不快にさせてしまうため、決して好まれる音ではない。しかし、脳のモードを一瞬にして【注意】に切り替えるのが目的なのだから、裏を返せば良くできた“音”ということだ。
東日本大震災をきっかけに多くの人に知られることになり、そして今回の熊本地震で頻繁に鳴り響いた緊急地震速報の警報音。
熊本地震は、今だ油断を許さない状態であり4月25日現在、熊本・大分を中心に震度1以上の地震が800回以上起きている。できれば、不快なアラーム音に怯えず、緊急地震速報が起動することのない平穏無事な日々が戻ることを願う。

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