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東京・神田の2.2坪の異色店が挑む「焼肉革命」

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 狭い店内で見知らぬ客同士が七輪をシェアして食べる、異色の立ち食い焼肉店が話題だという。仕掛け人は、常識にとらわれない店作りで注目される“焼肉界の風雲児”森田隼人氏。焼肉好きな本誌記者が同店に潜入した。

「ジ、ジ、ジュ~」

 炭火が焚かれた七輪の上で、新鮮な肉が炭火で炙られ旨そうな音を立てる。まずは赤身。箸で取って口にほおばると見た目のさっぱりした色合いからは想像できない濃厚な味わい。お次はホルモン。しっかり焼いてとろける食感だが、こちらはさっぱりしていて後味が良い。部位がごちゃまぜに載せられた皿はたった500円。人が集うのもうなずける。

 店の名前は六花界。神田駅のすぐ近くにその店はある。スナックのような妖しげな雰囲気を漂わせる店内からは笑い声が漏れ聞こえる。おずおずと店に入るとわずか2.2坪の狭い店内はサラリーマンや女性たちでごった返していた。中央のテーブルを取り囲むようにして客が並び、2つの七輪を全員でシェアする。

 みんなで1升の日本酒を分け合い、肩寄せ合って肉をつつく。店員を座頭にみんなが団体客のように盛り上がり、妙な一体感が漂う。この独特な店が誕生した裏には森田店長の“異色の経歴”が影響している。

◆素人が一念発起でオープン

 同店のオープンは2009年。都庁の職員だった森田氏は、建築士として2008年に独立。ところがリーマンショックで事業は頓挫してしまう。その窮地を救ったのが、かつて目をかけてくれたボクシングジムの会長だった。実は森田氏はライセンスを持つ元プロボクサー。

「毎日毎日、かつてお世話になったジムの会長が金のない僕にごはんを食べさせてくれた。そんな会長に恩返しがしたい。そう考えた時に、ボクサーのごちそうといえば肉だ!と思った。旨い肉なら、支えてくれたジムのみんなにも還元できると思って一念発起した」

 だが素人の森田氏はなかなか受け入れられなかった。

「市場に足を運んでも毎日門前払いです。舟和の芋ようかんを手に通い続けて1か月、どうにか中へ入れてもらって、休憩中の関係者に片っ端から声をかけた。肉を卸してもらえるまで、ひたすら熱意を訴えるしかなかった」

 やっとの思いで開いた同店は独自の店作りにこだわった。

 開店当初、世の中はハイボール全盛期。だが狭い店内には製氷機やサーバーが置けない。日本酒ならどうにか置けるという理由で、当時は非常識だった「肉と日本酒」を打ち出した。とはいえ、最初は試行錯誤の連続だった。

「最初はホルモンと日本酒を合わせることから始めました。まだ体温が残るホクホクのレバーをドライアイスに近い氷水でギューッと〆ると、水の中で踊るんです。その最高な状態を刺身にしてフルーティな日本酒を持ってくると、これがよく合った。段々と工夫を重ねるうちに、『肉と日本酒のパイオニア』と呼ばれるようになりました」

 そして最近では、「日本酒で肉を熟成させる」という発想にたどり着いた。

「日本酒で熟成させれば麹菌のふくよかな香りを肉がまとう。熟成が進むとチーズのような風味が出て、味わったことのないような肉の旨みが引き出される。『日本酒吟醸熟成肉』として、研究を進めています」

 焼肉店は肉をただ切って出す時代は終わった──そう語る森田氏の次なる一手に注目だ。

■取材・文/渡部美也 ■撮影/小松潤

※週刊ポスト2016年4月22日号

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