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現役介護士が語る!楽しい認知症介護のススメ

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日々流れてくる介護のニュース。「虐待」や「事故」など、暗い内容ばかりで目を覆いたくなります。また、介護に関する暗いニュースが流れる度に、「介護職はきつい・給料が安い・汚い」という印象を与えてしまっているのではと懸念しております。本当に介護は辛く大変なだけなのか?介護が楽しくなるとしたらそのポイントは何なのか?私の経験から「楽しく介護する」ということについて考えてみました。

人生における介護の意味

生きている限り、人は老いに向かって進んでいきます。医学の進歩により、病気になっても、体が不自由になっても生命は続いていく時代です。そう考えると、人生の通過点として、誰しもが介護を経験する可能性があるのではないでしょうか。

介護に悪いイメージがつくと、介護に関わる多くの方の人生の質までも落としかねないのでは?と私は考えています。年を重ねれば多くの人が利用する介護サービス。介護職員のちょっとしたお手伝いがあれば、自立した生活を送ることができるかもしれないのに、悪いイメージからか、介護サービスを利用せず、そのまま動かない生活を送ってしまう。または、お年寄りが大好きで介護職に就いた方に対して偏見を持ち、厳しい言葉を投げかけてしまうなどです。

在宅でも、介護施設でも、一つの事件が起こると加害者の異常性や悲壮感だけを大きく取り上げ、その背景に隠れているだろう事柄は明確にならないことが多いように思います。そうするとまた、介護に対する暗いイメージだけが独り歩きしていきます。

あなたが介護に関わる日がきたら、もしくは介護が必要となった時に、「介護は楽しい」という考え方が広まっていて、今よりも笑顔になれる人が増え、介護のしやすい社会が待っているとしたらどう思いますか?

人生の質を落とさないための楽しむ介護は可能なの?

介護の仕事を通して、たくさんの方とお会いしてきました。施設に入所されている方とそのご家族、在宅介護を受けている方とそのご家族、高齢者二人暮らしの世帯、そしてそこに関わる人々。もともとの人間関係や介護に関する知識など、介護の質に関わる要因は様々ですが、「介護を楽しむ」ことを考える場合、一番重要なのはやはり介護者の心の状態だと思います。

私が仕事をするときに意識していることをお話させてください。相手への怒りや憎しみ、自分への無力感や自責の念を持ったままでは、お互いにとって気持ちの良い環境を作ることは難しくなってきます。介護者の性格を変えることは難しいと思いますが、考え方や感じ方は変えられると思います。介護の経験を通して身に着けた、私が良い環境を作るためにやっていることを挙げてみますね。
信頼すること
認知症高齢者、そして自分に対して「ここにいていい存在」「何かあってもきっと大丈夫」だと思うようにしています。ポイントは、「私は自分のことをきちんと信頼しているんだ」と思うことです。無力感や自責の念は、あなたの優しさから溢れ出る感情ですからね。
よく見て、よく聞いて、よく感じる
人間は、話し相手の目線・声色・表情から相手の気持ちを汲み取ることができます。つまり、人間が持つ能力を十分に活用することが、介護なのではと思います。

常に前向きにポジティブ思考でいる必要はありません。完璧にこなす必要もありません。介護者も人間です。イライラしたり、時には憎しみの感情を抱くこともあるでしょう。まずは、こんな方法、考え方があるということだけ知っていただければ嬉しいです。

できそうな時に少しずつ試していき、小さな積み重ねが、いずれ大きな変化となって感じることができるはずです。何度も言いますが「やらなければいけない」と思う必要はありません。

私の体験談

今の職場で服薬を拒否するおじいさんがいました。手で渡してもポケットに入れてしまう。お口に入れようとしてもかたく口を閉ざす。「まあええ!!」と大声で叫ぶ。口に入れたとしても吐き出してしまう。薬を潰して服薬ゼリーなどと混ぜても飲んでいただけない。「何度チャレンジしても飲んでいただけない…」とイライラは増大し、イライラする自分にも腹が立ち、無力感でいっぱいになっていました。

ある時、気持ちを切り替えるようにしてみました。服薬介助をするときにまず一呼吸。「何がなんでも飲んでもらわなきゃ」という想いは捨て「飲んでくれるといいな~。」「今飲めなくてもいいや」「きっと大丈夫」と思うようにしました。そして、「いいよ~。大丈夫だよ」という雰囲気を含んだ状態をイメージして隣に座り、錠剤を少しずつ自分の手に乗せて本人の前に出す。

「これは○○の薬ですよ~」と自分も会話を楽しみながら差し出してみると、おじいさん自ら薬をつまんで口に入れてくださるようになりました。薬の量が多いと途中で嫌になってしまう時もありますが、その時はすぐにその場から離れます。いったんあきらめます。あきらめても大丈夫。なぜなら、おじいさんの様子を見ながら時間をあけて再チャレンジするから!「もし、自分ができない時は他の職員に頼もう!」と思っていますが、この方法をとるようにしてから服薬を拒否されることはなくなりました。

気分は「ひとり」から「大所帯」へ


「介護は特別なこと」という認識が浸透しているため、「私が頑張らなきゃ」「周りの人に迷惑かけないようにしなきゃ」とひとりで抱え込んでしまいがちです。そのため、いざという時に「助けて」の一言が言いにくくなってしまいます。頭の片隅にいれておいていただきたいのでは、「人に頼るのは、楽しく介護するための大切なポイント」ということです。

頼る相手は、家族や親族とは限りません。近所の人、スーパーのおばちゃん、郵便配達のおじちゃん、犬の散歩で家の前を通る人、介護サービスの職員、職場の同僚、あなたが読んでくださっているこの認知症オンラインのようなサイトも。あなたが本当に困った時、声を出せば届くところに人はいるのです。そして、あなたもいつの間にかに誰かの頼りになっていることでしょう。

さいごに

「楽しい介護」は、毎日笑顔で過ごすことを心がけるよりも、困ったときや落ち込んでいるときに、「自分はひとりではない」と知ることから始まるのだと思います。「助けて」の一言は、あなたとあなたがケアしている高齢者の方が楽しく生きるための魔法の言葉です。ぜひ、あなたの宝物(できること、使えるもの、近くにいる人など)をみつけてみてください。きっとたくさんみつかりますよ。

この記事を書いた人

石川深雪

大学卒業後、特別養護老人ホームに勤務。その後出産を機にグループホームへ転職し、認知症の人と関わる仕事が自分の天職だと気づき始める。約13年の経験の中で得た学びをもとに、ブログにて、認知症介護の素晴らしさや、そこからたどり着く自分自身の幸せな生き方について発信中。現在は仕事をしながら、介護現場で働く人のサポートに役立てるため、コーチング、各種セラピーを勉強中。【保有資格】社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、介護事務、認知症介護実践者研修修了、保育士ほか

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
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