鯖江市の「ゆるい移住」、終了! やってみてどうだった?

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10月からはじまった福井県・鯖江市の移住施策「ゆるい移住」。2015年10月~2016年3月の期間中、家賃無料で住む場所を提供するから鯖江で好きなことしていいよ、というゆるいこの取り組み。3月末でおわるとのことなので、「ゆるい移住」をやってみてどうだったのか、鯖江市とゆるい移住体験者に聞きました。

まずは鯖江市の存在を知ってもらう、興味を持ってもらうことを重視

以前当サイトでも紹介した鯖江市の「ゆるい移住」。キャッチーなネーミングもあいまって移住に関する関係者の間で話題になりました。鯖江市は国勢調査で12回連続人口が増えていて、人口密度も福井県内で断然トップ。そんな鯖江市がそもそもどうして移住施策を?と鯖江市政策経営部 地方創生戦略室の齋藤室長と法水さんに聞いてみると

「全体でみると人口は増加していますが、30歳以下の若い層の県外転出が顕著でした。長期的にみると若い人を市に増やしていきたい。まずは知名度の低い鯖江に興味を持ってもらうことから始めようということで、考えたのがゆるいというキーワードのお試し移住『ゆるい移住』です。

もちろん、最終的な目的は鯖江に定住してもらうことですが、まずはどうなるのか、社会実験的な意味も含めてやってみようと。“例え定住に結びつかなくても、そこから学ぶことができる”という市長のスタンスもあり実施することになりました」(齋藤さん)

とのことでした。【画像1】法水さん(左)と齋藤さん(右)。とてもフレンドリーなおふたりでした。法水さんはゆるい移住参加者のお父さんのような存在です(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】法水さん(左)と齋藤さん(右)。とてもフレンドリーなおふたりでした。法水さんはゆるい移住参加者のお父さんのような存在です(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

ゆるい移住者によるゆるいシェア生活

では、実際にゆるい移住の参加者はゆるい移住をやってみてどうだったのでしょうか? 参加者が暮らす団地にお邪魔してお話を聞いてみました。

取材に伺った3月末の時点で、団地に“滞在”していたのは男性4名と女性1名の計5名。ゆるい移住は滞在期間や日数もゆるいので、「1カ月だけ」「週末だけ」など鯖江にいる期間もひとによってばらばらです。【画像2】住宅は「男子部屋」と「女子部屋」の2物件用意されていて、滞在中は共同生活。今回は「男子部屋」に集合してもらいました。リラックスして家族のような雰囲気(このときはまだ硬いです)。ゆるい移住に関わる大事なことを話す場を“家族会議”と呼ぶそう(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】住宅は「男子部屋」と「女子部屋」の2物件用意されていて、滞在中は共同生活。今回は「男子部屋」に集合してもらいました。リラックスして家族のような雰囲気(このときはまだ硬いです)。ゆるい移住に関わる大事なことを話す場を“家族会議”と呼ぶそう(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

どのように暮らしていくかは参加者同士で話し合って決めるルール。家賃以外の生活費(光熱費と食費)は滞在日数で日割り計算して徴収するそうで、常駐していても多くて一人当たり月1万4000円くらいだったとか(安い!)。鯖江で人脈をつくり、アルバイトをしている方もいますが基本的にはみんな貯金から切り崩しているとのことでした。

ごはんも「みんなで食べる」といったルールはなく適当。取材中もおもむろに菜の花とごま油の和え物(おいしい!)が出てきましたが、“こんな感じ”みたいです。

人数が多い男子部屋の部屋割りも「なんとなく」。物件は3LDKで、部屋が決まっているひともいれば、気分によって好きなところに寝るひとも。基本的に部屋にこもることは少ないそうで、リビングが生活の中心。「リビングがうるさくて寝れないときは布団を車に持ち込んで寝ています」という方がいたので「うるさいって言わないんですか?」と聞いてみると「車で寝るの好きだし、僕が移動すればいいだけなので嫌だと思ったことはありません」だそう。“そんな感じ”でうまくやっている様子。

ゆるい移住を通して、変化があったりなかったりの参加者たち

参加者は月1回の市主催のワークショップを除き、なにをするかは本当に自由です。自分から興味のある団体に話を聞きに行ったりなど、各々が独立して活動をしてきたそう。みんなで一緒にしたことは毎月この部屋で行われるパーティーで、団地のご近所さんも含め、それぞれのつながりのある人たち総勢30名くらいがあつまって団らんするとか。

ゆるい移住をする前と後とでなにか変化はあったか聞いてみると、「う~ん…」と悩む人多数(笑)。ゆるい、ゆるいぞ。

ですが、「ここに来るまでニートとフリーターを繰り返してきて、働きたいと思ったことがなかった。でも、たまたま出会った藤井さん(地元ではちょっと有名なワイルドじいさん)に誘われて、限界集落の山の手入れを手伝うようになってから、生き抜くスキルや知恵を身に付けたいと思うようになった。働きたくないというのは変わっていないが、今後この人たちと「稼ぐ」という経験をしたいと思っている」(兵庫から来た久森さん、26歳男性)と、ここでの出会いで心境に変化が表れた方や、

「コンサルの仕事をやめてゆるい移住に来たけど、田舎のひとは仕事のオンオフがなくておもしろいと思った。車屋さんにプライベートで会っているときに冬用タイヤの話をちらっとしたら『いま変えてきてやる!』ってすぐ仕事を始めちゃったり。逆もありますが(笑)。そういうところがおもしろいな、いいなと思いました」(東京から来た森さん、24歳男性)東京と鯖江の働き方の違いを発見したりなど、鯖江に来たことによって気持ちや意識の変化があった方もいたようです。

移住施策に「これ!」というのはない。やっぱりひととの繋がり

ゆるい移住参加者がゆるい移住でいちばんよかったことは「家賃が無料なところ(笑)。タダで住めるところがあったから来てみた。家賃無料じゃなかったら来てなかった」。正直でよろしい!「移住」という意識は全くといっていいほどなかった様子です。

ですが、男性6名はゆるい移住が終わった後も、市内にある民間企業の元社宅を1年間の契約で1棟提供してもらうことが決まり、そこに暮らしながらなにかおもしろいことやビジネスをやっていきたいそう。その後のことは考えていないとのことなので「定住」といえるのかは微妙なところですが、鯖江での生活は続きます。「コミュニティができてくると、離れがたくなる」という言葉が印象的でした。

「ゆるい移住」担当の齋藤さんと法水さんに今回の取り組みを通して、市としてどんなことが得られたのか聞いてみると「移住定住を間違いなく促進できる施策はないということが分かってきました。土地との相性もあるし、人との出会いも大事になってくる。行政としてできるのは『きっかけ』をつくることだと思いました」(齋藤さん)

「あとは、このような変わった施策に参加しようと思うのはスキルがあるひとなんだなと感じました。最初の定例ワークショップを市内で活動している団体やサークルとの顔合わせの場にしたのですが、そのあとは市のサポートもなしに直接人脈をつくりに行ったりなど、かなり行動力もあるなと感心しました。メンバーが毎日更新しているブログでも、住んでいると気付かない鯖江の魅力に気付かされたりしましたね」(法水さん)

今後、第2期も考えているそうですが、住宅の確保の問題ですぐには難しいそうです。

「ゆるい移住は本当にゆるかった!」というのが筆者の感想。あともうひとつ。「移住には必ず“キーパーソン”がいる」という筆者が各地での取材を通して得た定説があるのですが、鯖江にもいました。それは移住者の世話係もしていた市役所の法水さん。

ゆるい移住メンバーが「自分たちが自由に活動できるように、いい距離感でサポートしてくれた。ゆるい移住は法水さんがいなかったら成立しなかったと思う」と口をそろえて言っていました。さらに上司である齋藤さんも「メンバーからすごく信頼されているし、手厚くサポートしている」とこっそり話してくれました。

ゆるい移住が終わり、男性6名、女性1名の計7名が鯖江に残るそう。法水さんとメンバーとの繋がりをつくった「ゆるい移住」は、移住定住の取り組みとしてとても意味のある取り組みだったのではないかなと感じました。【画像3】法水さん(左)とゆるい移住メンバー、最終日の1枚(画像提供:鯖江市役所)

【画像3】法水さん(左)とゆるい移住メンバー、最終日の1枚(画像提供:鯖江市役所)●参考

・鯖江市/ゆるい移住

・福井県・鯖江市の「ゆるい移住」 どんな人が興味あるの?
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