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介護家族が知っておきたい認知症の要介護認定の基礎知識と対応方法

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理学療法士の中村です。みなさんは要介護認定の結果について疑問を持たれたことはありますか? 要介護認定を知ることは、ケアを行うにあたりとても重要です。要介護度が下がると、「介護福祉レンタルサービスが受けられない」「介護保険限度額が下がって家計を圧迫してしまう」などの可能性があり、認知症高齢者の自立度を下げることにもなりかねないからです。今回は筆者の市役所勤務や介護認定審査委員の経験を踏まえて、要介護認定についてのお話をさせて頂きます。

そもそも要介護認定って何?

現在の要介護度は「非該当、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5」とあり、申請者がどれだけ介護サービスを必要としているのか、または申請者に介護サービスを行う必要があるのか要介護度別に分ける制度を、要介護認定といいます。つまりは、申請者の症状の重さと要介護度は必ずしも一致するとは限らないということになります。

「どう考えても歩けないし、自分で食事も摂れないけど要介護4なのよね…5ぐらいが妥当じゃない?」「うちのお爺ちゃんは、認知症があってよく徘徊するから目が離せないのに要支援…?」など、良く耳にする話ですね。特に認知症高齢者については、要介護度と現実がかけ離れてしまっている場合をよくみかけます。

要介護認定はどのように行われるの?

まずは要介護認定の流れについて説明いたします。

要介護認定は、一次判定ソフトによる判定から介護保険審査会における認定まで、要介護認定等基準時間と呼ばれる「介護の手間の判断」によって審査が行われます。申請者の状態を数値で表し、この値と1分間タイムスタディデータ(※)との関連性から「介護の手間度(時間)」を測り、要介護度が認定されます。しかし、申請者固有の手間が発生しており、認定調査員が記す特記事項や、主治医意見書の記載内容からこれら介護の手間が具体的に認められる場合は、一次判定の結果に縛られずに要介護認定の変更ができます。
※1分間タイムスタディデータとは
要介護度の判定を正確に行うため、施設や事業所に入所・入院されている高齢者約3,500人を対象とし、48時間にわたりどのような介護サービスがどれ位の時間行われたかを調べて算出したデータ

認知症の要介護認定で必要なのは、介護の手間

寝たきりの方よりも、徘徊の症状が出てしまっている認知症高齢者のほうが、介護にかかる手間度(時間)は高いですよね。認定調査員に対し、家族も職員も症状の重さを一生懸命説明していますが、それよりもその人の介護にどれだけの手間(時間)がかかっているのかを説明することをオススメします。

調査項目について

介護認定調査項目は62種類74項目と多岐に渡り、大きく分けると下記3つに分類されます。
能力で評価する項目
介助の方法で評価する項目
有無及び頻度で評価する項目

介護認定審査委員は、議論の中で着目した特記事項と、認定調査員による評価のうち、どの基準によって調査されているかを審議し、より適切な認定度を判定しています。

要介護認定時の対応方法

認知症により徘徊がある高齢者を遠くから監視するのと、転倒の危険性があるのでその都度、側に寄り沿い軽く手を添えて一緒に歩くのとでは介護にかかる手間度が全く違います。また、普段は認知症により計算もできない、日付も分からないはずが、調査時は上手く答えられたりする事も多々あります。

普段の生活状況を伝えるとともに、できない事だけを調査員に伝えるのではなく、できない事によって日常生活でどのような支障があるのか、またどのような方法を用いて介助を行っているのか伝えて下さい。

例えば何度も同じ話を繰り返す事によって、どのような介助が行われているかを具体的に説明する事で、介護調査員は実際の介助の状況と手間度(介護にかかる時間)が正確に把握できます。そのため、以下例にならって、具体的な説明をするように心がけてください。


毎日、昼夜を問わず何度も辻褄の合わない同じ話を繰り返しているため、職員はその都度落ち着くまで1時間程度は側に寄り添い傾聴しているんです。


夜間に5~6回以上は排泄を訴えるため、その都度手引き介助でトイレへ誘導し、臀部を拭きとる等の後始末を行っています。

日常生活自立度も要介護認定の判断基準です

障害高齢者の日常生活自立度及び認知高齢者の日常生活自立度というものがあります。日常生活に支障をきたす症状が「家庭内」で見られるのか、「家庭外」で見られるのか、介助が必要な行為が「日中」に多いのか「夜間」に多いのかを基準に判断します。普段から行動を良く観察し、調査員へ正確に伝えることが重要になります。

日常生活自立度のランク

ランクは、「自立、Ⅰ、Ⅱa、Ⅱb、Ⅲa、Ⅲb、Ⅳ、M」とあり、認定調査員は聞き取り調査の中から、自立度のどのランクに当てはまるかを判断しています。
ランク
判断基準

何らかの認知症を有するが、家庭内外で自立し日常生活を送ることが可能な状態
Ⅱa
家庭外で日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる状態
Ⅱb
家庭内で日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる状態
Ⅲa
主に日中を中心に日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする状態
Ⅲb
主に夜間を中心に日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする状態

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状態
M
著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状態

各ランクの判断基準例

日常生活自立度Ⅰ
軽度の物忘れがありますが、家族やケアをする人がいれば日常で困る事はほとんど無い状態です。 認知症ではない、年相応の物忘れの方もこのランクに分類されます。ただ、軽度認知障害(MCI)の場合もありますので、物忘れの症状が見られましたら、専門医を受診されることをお勧めします。
Ⅰの例:昨晩食べたメニューが思い出せなかったりする
日常生活自立度Ⅱ
日常生活を送る上で、さまざまな行動に支障がある場合のランクです。aとbに分かれているのは、「家庭外」と「家庭内」、どちらに支障があるのかで判断が変わってくるからです。つまり、普段生活している「家庭内」での行動に支障があるほうが、認知機能が低下していると判断できるのです。また、診断医の判断基準として、「内服管理が自分でできるかどうか」が「Ⅱb」の分岐点となることが多く、服薬管理ができる場合は「Ⅱb」以上、できない場合は「Ⅱb」以下となるようです。
Ⅱaの例:同じものを何個も買ってきてしまったり、道に迷ったりする
Ⅱbの例:自分が飲むべき薬を把握できなかったり、家電製品の使い方が分からなくなったりする
日常生活自立度Ⅲ
日常生活を介助なしで送ることができず、食事や排泄介助が必要、且つ、在宅での生活が難しくなってきている状態です。aとbに分かれているのは、介助が必要な時間帯が「日中」なのか「夜間」なのかの違いによるものです。夜間の介助は介護側の負担が多く、介護の度合いがより重くなります。また、昼夜逆転した生活を送ることにより、本人の症状悪化が懸念されます。
Ⅲaの例:日中は食事・排泄介助が必要だが、夜は良眠のため見守り程度でよい
Ⅲbの例:日中は軽い介助のみだが、夜は不穏や徘徊により監視が必要になる
日常生活自立度Ⅳ
ランクⅢの状態が日中・夜間関係なく続き、目が離せない状態です。介護者の負担や疲労はピークに達し、在宅での生活はとても難しくなります。デイサービスやショートステイなどの介護サービスを利用し、本人はもちろん介護者に対しても目を向けることが重要です。
Ⅳの例:日中・夜間関係なく徘徊し、食事・排泄の介助は必要
日常生活自立度M
これまでのランクⅠ~Ⅲまでとは異なる判断基準で、せん妄や不穏など、一時的な精神状態の悪化が原因で、専門医を受診する必要がある状態を指します。どのランクからでも「M」になる可能性がありますし、症状が治まったら元のランクに戻ることも十分に考えられます。
Mの例:奇声をあげたり、ケア提供者に対して暴力をふるう

まとめ

認知症高齢者の要介護認定については、実際に行われている介助の状況を適切に伝えることが大切です。日付や場所の理解(見当識)、物忘れ等の認知症症状によりどのような介護が実際に行われているか(手間が発生しているのか)、その介護にかかる時間はどれくらいかをご家族や介護施設の職員が伝える事で、より正確な要介護度判定が行われます。

この記事を参考にしていただき、より正確な要介護認定が行われればと思います。もちろん、要介護認定に不服がある場合は各都道府県が設置する介護保険審査会が受け付けております。しかし、再度認定が下りるまでは更に時間が掛かることとなりますので、できる限り適切な介護判定ができるように、普段の介助の状況を伝えるようにして下さい。

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この記事を書いた人

中村洋文

介護福祉士 / 理学療法士 / 実務者研修教員
病院、知的障害者施設、デイサービス管理者、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム等の医療・福祉施設にて勤務。現場だけではなく、行政側の立場としても市役所勤務の中で介護保険にも携わる。介護保険認定審査委員も歴任。現在、福祉系専門学校での講師及びクリニックでの理学療法士として活動中。介護医療現場、また行政側の様々な経験をもとに認知症高齢者本人とその家族の想いを教育現場や全国各地での講演会等で発信しています。

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