障害者雇用の成功のカギ「外部との連携」

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障害者雇用の成功のカギ「外部との連携」

就労移行支援事業所との連携

障害者雇用に取り組む企業が抱える悩みの中で、よく耳にすることが二つあります。
一つ目は、募集・採用段階において、自社が望む人材をどう採用するかというマッチングの問題。
二つ目は、どうすれば長く働き続けることができるかという職場定着の問題です。
このマッチングの精度を高め、職場への定着を図るためのポイントとしては、就労移行支援事業所との連携が挙げられます。

就労移行支援事業所は、一般就労を目指す障害者を対象として、就労に必要な知識やビジネスマナー、PCスキル等を習得するための職業指導を行う施設です。
また、求職活動や就労開始後の職場定着の支援も行っており、精神障害、発達障害の方々が多く利用しています。

就労移行支援事業所の職員は、支援している障害者の障害特性や職業的適性などを把握していますので、連携できる関係を構築しておけば、企業側が望む人材を伝えることにより採用候補者の絞り込みが可能となります。
複数の就労移行支援事業所と関係を築き、出来るだけ多くの募集経路を確保しておくことは、企業と求職者とのアンマッチを防ぐための方法の一つとなり得ます。
 
また、就労移行支援事業所を利用する障害者が就職した場合は、本人と企業の両者に対し、職場に定着できるよう就職後も継続的に支援をしています。
本人に対しては、職場ルールの理解や職場におけるコミュニケーションに関する助言、職務遂行に関する相談支援等が行われます。
一方、事業主に対する支援としては、本人に対する配慮や関わり方、作業指導の方法についての助言等がなされています。

精神障害者や発達障害者の就職者数は伸びていますが、残念ながら離職率が高いのが現状です。
就労移行支援事業所との適切な情報交換やその支援の活用は、職場定着を進める上で有効に作用するでしょう。

精神科産業医との連携

労働安全衛生法の改正により、2015年12月から労働者に対するストレスチェックの実施が企業に義務付けられています。
このストレスチェック制度においては、受検により高ストレス者とされた労働者が申し出た場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。
また、その結果に基づき企業は医師の意見を聴取し、必要性が認められる場合、その労働者に対して時間外労働の制限など何らかの就業上の措置を講じることとされています。

この「高ストレス者に対する面接指導」、「医師からの意見聴取」、「就業上の措置」という一連の流れが適切に実施されるためには、精神科医療機関や精神科・心療内科を専門診療とする産業医の役割が非常に大きくなると思われます。
ことさら企業組織やマネジメントに精通した精神科産業医への要請は高まり、連携を模索している企業もあると思います。

ストレスチェックの実施を機に精神科産業医との関係が構築できれば、今後増えるであろう精神障害者や発達障害者の雇用に関して、医療の立場からの指導や支援を受けることも可能となります。
このように、企業と精神科産業医との連携は、企業が今まさに直面するストレスチェックと障害者雇用、この二つの課題に取り組むカギとなると言えるでしょう。

(佐々木 淳行/社会保険労務士)

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