ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

保釈

DATE:
  • ガジェット通信を≫

保釈

 今回は保釈のことを書こうと思う。
 本題に入る前に、ちょっと触れておくと、元プロ野球選手の覚せい剤事件で3月17日に保釈決定がなされた。同月15日に使用罪で起訴され、16日に弁護人が保釈請求をなし、17日に東京地裁が保釈許可決定を出したという流れである。

 ところが、保釈が未定である16日の夜のニュースを見ていたら(TBS)、アナウンサーが「保釈されることになりました」と発言した。実際は保釈請求をした段階にすぎない。
 確かに、この事案では保釈が許可される可能性が高かったのであるが、一部には入手先を供述していないことや身元引受人の存在についての疑問から不許可もあり得るとの指摘もあった。
 マスコミのミスリードにはつくづく嫌になる。ニュースでは正確性が求められるのではないか。

 刑事訴訟法上、保釈には「必要的保釈」と「裁量的保釈」の二種類があって、原則は「必要的保釈」となっていて、その要件を具備しない場合に「裁量的保釈」が機能するという構造になっている。
 必要的保釈は、弁護人らからの請求があった場合には、これを許可しなければならないのだが、例外的に一定の場合には許可されず、裁量保釈となる。
 ところで、公判前整理手続が導入されたことから、その手続を円滑に進めるために、被告人が裁量保釈されることが多くなったようである。

 さて、弁護人は、必要的保釈の不許可条項のうち、もっとも多く活用されるのが「罪証を隠滅する疑いの存在」であることから、保釈請求にあたっては、その疑いがないことを力説することとなる。
 これがけっこう大変である。抽象的に記載しても一顧だにされないだろうから、被告人に即して具体的に書いていくのである。

 さらに不許可となっても、被告人は幾度でも保釈請求を出してくれと頼んでくる。
 しかし、これがかなりしんどい。というのも、前の請求と同じ内容であれば、不許可となることは明らかであるから、それに付加して、仕事の状況等々を書き足して、保釈獲得のための書面を作成しなければならないからである。

 保釈金の用意も被告人にとっては大変である。現行制度は、貧乏人には保釈を許可しないという結果となっており、被告人は予想される保釈金を準備しなければならないのである。
 この保釈金については、弁護人が保証書を差し出すとの方法もある。その結果、被告人が逃亡するなどして、万が一保釈が取り消された場合、保証書を差し出した弁護人が裁判所に没収されるべき保釈金を支払うこととなる(現在では弁護士会の保証もある)。

 東京では、リスクが高いことから、裁判官自体が弁護人による保証書をほとんど認めていない。
 かつて、許永中事件があったが、保釈金没収額では過去最高記録を有している。保釈金6億円が、許永中の逃亡によって、没収されたのである。ところが、このうち半額の3億円について、複数の弁護人が保証していたため、裁判所は、弁護人に弁済を求めたということがあった。
 弁護人はかなり抵抗したようであるが(法的根拠に乏しい抵抗であったと思う)、私の記憶によれば、弁済期限を延期してもらって、納めたのではないだろうか。

 確かに、弁護人は被告人を信用しやすいし、まさか逃亡するなんてことは、ほとんど考えていないのが実情である。しかし、最も裏切る者は依頼者であることを再確認させられた事件である。

元記事

保釈

関連情報

障碍者施設で子どもが急死。弁護士に依頼したほうがよいでしょうか?(なっとく法律相談)
相手方からの直接の連絡を止めさせることはできますか?(なっとく法律相談)
第47回 接見をめぐる問題(その2)(ある弁護士の獄中体験記)

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。