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認知症の方に運転をやめてもらうための5つのタイミング

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前回は運転をやめてもらうために家族がやっておきたいことについて書きました。「もうそろそろ運転をやめないといけないな~」と思いつつも、なかなか手放すことが出来ない運転免許と愛車。おさらばするのは容易なことではありません。今回は運転をやめてもらう絶妙なタイミングと、卒業の舞台の設け方をご紹介します。

前回記事:運転をやめてもらうために家族がやっておきたい4つのこと

認知症になるとどんな運転になってしまうの?

「運転はまだまだ大丈夫!」誰しもがそう思い込みたいもの。しかし、現実は危険運転の連続です。よくある事例を挙げてみますね。
左端や中央線に寄ったりして、フラフラ運転をする


時速30キロで走行し大渋滞をつくっても我が物顔で運転する


後続車に道を譲ろうと、方向指示器を出さず、危険な場所でも突然止まる

あなたのご家族はいかがでしょうか?この段階になると、空間認知機能も衰えていますので、車のあちこちをぶつけ始めます。本来であれば、危険運転の前に運転を卒業してもらうのがベストなのですが、なかなかそうもいきません。では、運転をやめてもらうタイミングはどこにあるのでしょうか。

ぶつけた時がチャンス!皆が心配しているメッセージを

「バックで失敗し、車のリアが凹んでしまった」「壁をこすって車を傷つけてしまった」など、ぶつけたときがチャンスです。「お宅のお父さんの運転が危なくてたまらないと、近所の方が心配して電話をかけてきましたよ…地域の皆も心配しているみたいですよ…」と折を見て話をします。

ここで、「危ないからやめてください!」「ぶつけた程度でよかったけれど、大きな事故だったらどうするつもりですか!?」と、非難して怒らせるのは逆効果。「事故に遭わないか、家族も周囲の人も心配している」という愛のメッセージから入っていくと効果的です。

運転の限界時期が来たことを、医師から告げてもらう

事前に医師に相談し、診察の度に運転をあきらめるよう告げてもらうことも効果があります。

「視力が落ちているので、そろそろ運転を卒業する時期ですね」「判断する力が落ちていますから、事故を避けることが難しい時期にきていますね」等と、プライドを傷つけないよう年齢や病気のせいにすることで、受け入れられるように説得してもらいましょう。

または、段階的に限界を告げてもらうのも効果的です

本当はもうやめた方がいいのだけれど、近場だけにしてくださいね

車は必要でしょうが、運転はやめた方がいいですね

このまま運転を続けられると、医師の私も家族も責任を問われます。残念でしょうが、もう運転してはいけません

免許更新は関所と同じ。更新許可が下りない裏技を使う

運転免許の更新時に、講習予備検査(認知機能検査)が始まりました。義父のように他所ではスイッチが入り、違反もないため、検査をスルーしてしまう方にとっても、免許更新は運転卒業の絶好のチャンスです。

家族が事前に警察に届け出ることによって、検査時に綿密にチェックしてもらうことができます。一番大事なのは警察官(正確には交通安全協会なのですが、区別はつかなくなっている時期です)に免許更新が許可されないという事実を突き付けてもらう、この終焉の舞台を作ることが、認知症の本人に運転をあきらめさせる関所となります。

免許更新時の講習予備検査(認知機能検査)について

運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上のドライバーは、高齢者講習の前に講習予備検査を受けなければなりません。講習予備検査の通知は、運転免許証の更新期間が満了する日の6ヵ月前までに高齢者講習の通知とともに警察から届きます。

講習予備検査とは

車の運転には道路標識や交通ルールなどの記憶力、車線変更や右折時に直進車との距離を確認して動作をおこす判断力が必要です。この記憶力と判断力を測定する検査を、講習予備検査と言います。

検査場所

警察から委託された指定自動車教習所等で受けることができます。

検査方法

下記3項目について検査を行います。回答は検査用紙に記入して行います。
見当識
検査時の年月日、曜日及び時間を回答する
手がかり再生
まず、一定のイラストを記憶する。採点に関係しない課題を行った後、記憶しているイラストをヒントなし、もしくはヒントをもとに回答する
時計描画
時計の文字盤を描き、さらに、その文字盤に指定された時刻を表す針を描く

検査結果

検査終了後に採点が行い、その点数に応じて3つの段階で判定が行われます。検査結果は、その場で書面で通知されます。
記憶力・判断力が低くなっている
記憶力・判断力が少し低くなっている
記憶力・判断力に心配のない

注意事項

判定の結果、「記憶力・判断力が低くなっている方」であっても、運転免許証の更新はできます。しかし、特定の交通違反(※)を免許証の更新期間満了日1年前の日~更新申請日の前日、または免許更新後に行った場合は、警察から連絡があり、専門医の診断を受けるか主治医の診断書を提出することになります。そこで、認知症であると診断された場合には、免許が取り消されます。

※特定の交通違反とは
○信号無視   ○通行禁止違反    ○通行区分違反(右側通行等)
○通行帯違反  ○進路変更禁止違反  ○転回・後退等禁止違反
○踏切不停止  ○しゃ断踏切立入り  ○指定通行区分違反
○一時不停止  ○交差点優先車妨害  ○優先道路通行車妨害
○徐行場所違反 ○横断歩行者等妨害  ○交差点安全進行義務違反

参照元:警視庁 講習予備検査(認知機能)について

申し立てにより、運転免許の取消し処分を受けることもできる

認知症と診断され、自他ともに危険があると認識している場合は、家族が最寄りの警察署に申請すると免許を取り消せることがあります。
最寄りの警察に相談する
介護者が家族の認知症の状況について相談する
医師の診断書(様式は警察署にあるものがよい)をもらい、警察に提出する
免許取り消し決定後、家族と認知症の本人が警察に呼ばれ、免許返納を求められる
返納により取り消し処分成立

ただし、家族が勝手に免許取り消しを申し立てたと知れば激怒するのは当然です。「危険運転で事故の可能性が高いため、警察が取り消しの判断をした」と、警察から直接説明してもらえるように、事前に依頼しておくことがポイントです。

最終手段は目の前から愛車を消してしまう

車を処分するのは車検や修理のタイミングが狙い目です。

まず、車屋さんにお願いしてみる


事情を説明し、車検等に出した車が仕上がらない状態を長く維持してもらいます。そのうち、車屋さんに問い合わせをするでしょう。そうしたら「この車はもう寿命だって。車検を受けるのに数十万円もかかってしまう。年金では払えないし、新しい車はもう年齢制限を超えて購入できないみたい…」など、認知症本人が納得できる最もらしい理由を説明してもらえるように、車屋さんに依頼しておきましょう。

代車や家族の車は指紋認証でしか動かないと言う


家族の車や代車に乗ろうとする場合は、「この代車は○山△子(介護者)専用車とします。他の者が運転するのを禁じます。○○警察所長」という張り紙を運転席に貼ります。鍵は目につかないようにし、「この車は△子の指紋認証でしか動かない」と言い続けます。おかしいなーと思いながらも、毎回指紋認証でしか動かないよう、鍵で運転席をあけていることを見られなければ、なんとなくそんな気にもなってくるようです。

最後の最後は車を動かないようにしてもらう


認知症の進行の段階によっては、車屋さんへのお願いも指紋認証作戦も効果がない場合があります。私が経験したことなのですが、レビー小体型認知症のお金持ちの方への対応を、車屋さんに依頼したところ断られてしまいました。「あの方だったら車検がとおらないといえば、新車をもってこい!と怒鳴り込んでくるでしょう。」って。このケースでは本人不在の間に車が動かないように細工してもらって、乗れない状態にしてもらいました。

運転をやめてもらうためのポイント

私が義父に実践したことを含め、運転をやめてもらうためには4つのポイントがあります。
運転卒業の最終通告のタイミングを念頭に、段階的に取り組む
受け入れやすい最終通告の場面設定
最終通告の協力者を見定め、事前に依頼する
運転卒業を告げるタイミング

車が生活の一部である認知症の男性に対しては、頭ごなしに運転を禁止しないよう注意してください。というのも、運転を急に禁止された結果、うつ病を発症した方をたくさん見てきたからです。認知症の進行の度合いに応じて、どの人のどんな言葉なら耳を傾け、運転を止める気持ちになるかをつかむことが成功の秘訣です。

次回は義父が運転を卒業する過程を通して感じた認知症と運転について掲載します。

この記事を書いた人

中嶋 保恵

山間部の兼業農家に嫁ぎ、介護支援専門員や介護職として従事し20数年。家族皆で義父の認知症予防・介護に取り組みながら、愉快な、時として大変な毎日を送っている。福祉専門職としてこうすればいいとわかっていても、笑顔で優しくできないこともある嫁の私。そんな毎日の中から見つけた認知症介護の細やかなヒントがどなたかの参考になれば幸いです。社会福祉士。精神保健福祉士。主任介護支援専門員。認知症ケア専門士。

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