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自家製にこだわる隠れ家カフェ 「2-3 Cafe」オーナー 小林敦司さん【男の野球メシ #05】

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代官山駅から歩いて数分。オシャレなショップや高級ブランドの路面店が建ちならぶ目抜き通りから1本入ったビルの一角に、そのカフェ「2-3 Cafe」はある。

オーナーは、かつて広島カープでセットアッパーを務めた小林敦司さん。過去15年ほどのプロ野球をそこそこフォローしている人なら、目下、時の人となっている巨人時代のあの人に頭部デッドボールをぶつけてブチギレられた右のサイドハンド──と言ったら、「あぁ、あの小林か」となる人も、少なくないに違いない。

高卒で入ったプロの世界では結局芽が出ず、28歳という若さで引退を余儀なくされた小林さん。飲食の世界に単身飛びこみ、10年という歳月をかけて、自分の店を持つまでになった彼の、“自家製”にこだわる、そのセカンドキャリアをうかがった──。

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▲少し奥まった場所にあるため、駅近なのに喧騒とは無縁。まさに隠れ家!!

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▲食事もゆっくりできる落ち着いた雰囲気の店内。小林さん自身が厨房に立つ

野球以上に苦労したすべてイチからのカフェ修行

現役中に考えたことはなかったんですけど、もともと父親が赤坂で割烹をやっていたこともあって「辞めたら父親の跡を継ごう」っていうのは漠然とあったんです。だけど、いざ入ってみたら、ついつい親子の甘えみたいなものが出ちゃってね。料理人の世界ではペーペーのド素人のくせに、息子の立場でいろいろ言っちゃったんですね。で、自分でも「これはマズい」と思っているときに、ちょうど母親が「カフェをやりたい」と言いだして。それで本格的にそっちを手伝うために、カフェの勉強をするようになったんです。

’01年にロッテで2度目の戦力外通告を受けた直後は、現役を続ける道も模索した。だが、同年初めて開催されたトライアウト直前の自主練習で肩を痛めて、本番まではノースロー調整。ぶっつけだった当日は、ウォーミングアップのキャッチボールですら、投げたボールが相手に届かず「これはダメだ」と辞退した。

なんで、そこで「野球はもう終わり」っていう踏んぎりは意外とすんなりついたんです。でも、ヘタに父親の跡を継いで30年以上も続くお店を、2代目でダメにしてしまうわけにも行かなかった。だから、自分からあえて距離を取って、「カフェをやるならまずケーキを覚えよう」ってことで、ケーキの有名店に自分で電話をかけて、アルバイトとして入れてもらったんですね。

アルバイト先は、全国に11店舗を展開する洋菓子専門店『キルフェボン』。自身の希望どおりに配属された“アトリエ”(製造工場)では、右も左も分からないまま、いきなり最前線へと投入され、20代前半の“先輩”女性従業員に厳しい指導も受けた。

最初は雑用からと思ってたら、入ってすぐからタルト生地の流しこみなんかの実戦が待っていた。結局5年弱いたんですけど、最初の2年間ぐらいは毎日怒られっぱなしで、帰りの電車のなかでよく泣いてましたね。だって、30歳もすぎたオッサンが、コワい顔をしたハタチそこそこの女の子に「さっきも言ったよね?」とかって吐き捨てられるんですよ。そりゃあ、心も折れるでしょ?(笑)。

いまはこうして笑い話にもできますけど、野球とバイト、どっちがツラかったかって言ったら、当時は断然、後者でしたしね。

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▲定番のベイクドチーズケーキ(700円)。これだけのために通いたくなるほど絶品!!

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▲ふわふわ卵のオムライスプレート(1500円)。ランチは同じ値段でドリンクつき

目的はあくまでカフェを自分で開くこと。ケーキはもちろん、パスタをはじめとしたフードメニューを幅広く習得するため、どんなにキツかろうと、かけ持ちができて、辞めたいときに辞められるアルバイトという立場に自ら進んで甘んじた。修行に明け暮れ、ヒマさえあれば、一流のケーキ屋、レストランに足を運んで、研究する日々。先の見えない“下積み期間”は、野球で培ってきた根性と忍耐力で乗りきった。

野球選手のなかにも、経営者として飲食店を開く人は多いですし、実務的なことを優先すれば、間違いなくそっちのほうが手っとり早いとは思います。でも、自分自身が料理の作り手に回れば、かかるコストは格段に抑えられるし、後々のことまで考えれば、多少時間はかかっても人任せにせずに自分で現場を把握できるようになったほうが絶対いい。

それに、僕自身は「元野球選手」ってだけで、実力や成績はないに等しいレベル。いま一生懸命にならなきゃ、この先、自分には何にもないままだって気持ちもありましたしね。

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▲スタミナたっぷりなアグー豚のトマト鍋(1人前1,800円/2人前から要予約)

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▲その色味から通称は“カープ鍋”。シメはスープパスタor別料金でリゾットにも!!

引退から10年を経て念願のカフェオーナーに

現在のお店の最大の売りは、ほぼすべてのフードメニューが、チェーン展開のカフェにはマネのできない「自家製」であること。それでいて、食材のランクや産地にはとくにこだわりを持たず、「むしろどんな食材を使っても、同じ味を出せるようにするのが、自分なりのこだわり」だと、小林さんは言う。

実はこの店がオープンしたのは東日本大震災の直後。「食材にはこだわらない」っていうのは、もしああいう出来事がまた起こって、流通がストップしたときでも困らないようにしてしおきたいっていう意図もあるんです。

実際、いまウチのビールはハイネケンですけど、それも当初扱う予定だった銘柄の工場が被災して入荷がストップした結果。食材を厳選すれば、確かにより美味しいものはできるかもしれない。でも、いちばん大事なのはそこじゃないんじゃないかな、と思うんです。ちょっと生意気かもしれないですけどね(笑)

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▲よく見ると、カウント表示になっている衝立。さりげない遊び心が素敵!!

メディアでは、「パティシエ」だと紹介されることもしばしば。だが、小林さん自身が腕をふるう店のメニューには、看板でもあるベイクドチーズケーキから、シメの生パスタもおいしいガッツリ系の特製トマト鍋(通称は、その赤さからカープ鍋!)まで、実にバラエティ豊かな料理が並んでいる。

「野球選手から料理人」って言うより、「野球選手からパティシエ」のほうがなんかカッコいいんで、わざわざ訂正したりはしないんですけど、正確にはカフェのマスター。お店に来て、普通にご飯も食べられることに驚かれるお客さんも多いです(笑)。いっさい宣伝費をかけてないんで、僕が野球選手だったことをいまだに知らない常連さんもいるくらいですからね。

“元野球選手”という看板にあぐらをかくことなく「自分の作る料理でこそ勝負をしたい」と語る小林さん。夢だという「好きなハワイでのカフェ経営」を実現できるその日まで、未完のセットアッパーは、お客さんからの「おいしい」のひと言のため、今日も変わらず厨房に立つ──。

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【小林敦司(こばやし・あつし)】

1972年、東京都生まれ。千葉・拓大紅陵高から’90年のドラフト5位で広島に入団。プロ3年目でサイドスローに転向し、’95年に1軍デビュー。自己最多の30試合に登板して、防御率2.20と活躍した’99年には、同姓のクローザー・小林幹英につなぐ“あつかんリレー”が脚光を浴びた。’00年オフに戦力外通告を受けてロッテに移籍するも、翌シーズンかぎりで現役を引退。その後は様々な飲食店で経験を積み、’11年に念願だったカフェオーナーとして独立した。生涯成績は、59試合/1勝1敗/防御率4.40

お店情報

2-3 Café Dining

住所:東京都渋谷区猿楽町24-1 ROOB2 1F

電話:03-3464-8023

営業時間:11:45〜20:00(ランチタイム11:45〜16:00) 予約があった場合のみ23:00まで営業

定休日:無休

ウェブサイト:http://nwnjq747.wix.com/2-3cafe

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▲東横線・代官山駅の正面口から徒歩約3分

撮影:石川真魚

鈴木長月(すずきちょうげつ)

書いた人:

鈴木長月(すずきちょうげつ)

1979年、大阪府生まれ。関西学院大学卒。実話誌の編集を経て、ライターとして独立。現在は、スポーツや映画をはじめ、サブカルチャー的なあらゆる分野で雑文・駄文を書き散らす日々。野球は大の千葉ロッテファン Twitter:@chogetsu_suzuki note:chogetsu_suzuki

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