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第53回 所内生活の心得(その2)

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 「所内生活の心得(未決収容者用)」の「第1. 裁判について (4)出廷(検事調べを含む)。」では民事裁判の出廷にまで触れている。そこに「できるだけ代理人制度を活用してください。」とある。
 巷間、拘置所や刑務所は被疑者・被告人あるいは受刑者が民事裁判に当事者として出廷することを、護送が大変だからとの理由で嫌がると言われている。しかし、代理人をつけることのできる者は、金銭的な面も含めてそんなにいるものではない。
 それでも、「護送が大変だから代理人をつけてくれ」と言っているようで面白く、巷間の噂は本当なのかもしれないと思わせてくれる。おそらく本当なのだろう。

 同じく「(4)出廷」に「傍聴人や傍らに近づいてきた人に合図をしたり、話をしたり、物のやり取りをすることは、禁止されています。」と当たり前のような規則が置かれている(相変わらず変な日本語ではあるが)。しかし、簡単な話をしたり、また合図をしたりする人は私の経験からしてもけっこういる。

 被告人は、偉い裁判官よりも先に法廷に入っているのが普通で、裁判官が登場するまでの間、「元気だよ」というように、傍聴人に笑顔を向けて頷いたりして合図をしている。これは許される限度であろうか、刑務官もあまり注意しない。
 また、実刑判決となったときには、裁判官が退廷したことをきちんと見届けた傍聴人から「頑張れよ、心配するな」といった、俗にいう声掛けが行われ(ほとんどが暴力団関係者であるが)、それに被告人が応えながら刑務官に引きずられていくなんてこともあった。
 若干のことは刑務官も大目に見ているようだ。

 無罪や執行猶予付きの判決を受けた場合には、その法廷の場で即刻釈放される。
 警察の留置場から来た場合、ケースによっては所持品すべてを持参の上での出廷もあるようだ。
 というのも、某警察署から荷物持参での被告人を一度だけ経験したことがあるのだ。これは、執行猶予が見込まれていたからだろうか?今思っても不思議である。
 その場合には警察に戻る必要がないから、そのまま「さようなら」となる。ただし、金銭を含む貴重品までは持たせないので、そのような貴重品を有しない人だけである。貴重品のある者は、嫌でも警察に戻る必要がある。

 しかし、拘置所の場合はそのようなことはない。荷物持参での出廷はない。だから、必ず荷物を取りに戻る必要がある(不要であれば所有権放棄をすればよいが、貴重品もあるだろう)。
 そこで、所内生活の心得には、「(無罪・執行猶予付きの場合)出所の手続をしたり、領置金品を渡す必要がありますので、特に支障がなければ当所まで来てください」との規定が設けられている。

 拘置所の押送バスで拘置所に戻りたい場合には、仮監(裁判所などで出廷等のため身柄拘束をしておく仮の監獄・まぁ拘置所の出張所のようなもので、大体は裁判所の地下にある)で待ってもよい。仮監から拘置所行きの押送バスが出るからである。
 当然手錠腰縄はない。一番最初にバスに乗るか、又は一番最後にバスに乗り、他の同乗者(被告人)とカーテンで仕切られて、拘置所へ連れて行ってもらうのである。
 もちろん、そんな車に乗りたくないという人は、自腹で拘置所に行ってもよいが、金銭を持参していないのだから、傍聴人に知り合いがいなければ無理なことである。

 かなり昔の話であるが、とある国選弁護事件で、訴訟費用負担の有無を確認するため、裁判官が被告人に所持金の有無を尋ねていた。被告人の所持金は0であった。
 執行猶予付判決を言い渡した裁判官は「それでは拘置所にも戻れないですね。交通費をどうするかこの後弁護人ともよく相談してください」と言って、控訴権の告知を失念して退廷していった。
 書記官に言うと、告知をしたことにしておいてくださいと言われた。やむなく彼と接見をして押送バスで拘置所まで帰るように指示したが、「そこから実家まで1000円くらいかかります」と図々しいことを言う。
 本来仮監では接見はもちろんできるが、物の授受はできない。同情した刑務官が特別に差入れを認めてくれたので、1000円を差し入れた。私の自腹である。(つづく)

元記事

第53回 所内生活の心得(その2)

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