セブンイレブン勤務時間切り捨て問題  労働基準法違反?

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セブンイレブン勤務時間切り捨て問題  労働基準法違反?

国会で告発された勤務時間切り捨て問題

参院予算委員会で、日本共産党の辰巳孝太郎議員が、コンビニ業界最大手のセブンイレブン本社が、独自の勤務管理システム「ストアコンピュータ(SC)」を用いて、労働者の勤務時間を違法に切り捨てている実態を告発しました。
どこに問題があったのでしょうか?

労働時間の適正な管理

会社には労働時間を適正に把握する責務があります。
労働時間の適正な把握を行うためには、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があります。

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法があります。
(1)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
(2)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

労働時間は1分単位

「毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理といえます。
従って、15分未満を繰り上げた「始業時刻」や「終業時刻」の15分未満を切り捨てるのは、違法となります。

冒頭のセブンイレブンは、1分単位の正確な時刻が表示されるのに、15分未満を繰り上げた「始業時刻」が自動的に記録され、逆に「終業時刻」は15分未満が切り捨てられる独自の勤務管理システムを用いて、労働者の勤務時間を違法に切り捨てているということが問題にされ、労働基準法違反を国会で追及されました。

始業・終業時刻の確認・記録

中小企業の中には、出勤簿やタイムレコーダー等がなく、労働時間が全く管理されていない会社もあります。また、下記のような労働時間の適正な把握が不十分な会社は、使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する必要があります。

出勤簿に押印し、出勤の確認のみ
始業、終業時間の確認、記録をしていないため、特に早出や残業、深夜業の管理が不十分です。
時間外労働の申請許可制度のような時間外労働を確認する仕組みが必要です。
タイムレカードで出勤、退勤時刻を管理しているが、始業、終業の管理が不十分
タイムカードの打刻時間は通常、出勤時刻と退社時刻の記録であって、業務の始業・終業時刻の確認が必要です。

タイムレコーダーの設定等の注意点

(例1)出勤時間と始業時間の区別が明確な場合
例えば、会社に到着して、8時45分にタイムカードを打ちます。通常、朝9時0分の始業時刻まで業務をしないのであれば、出勤から始業までの15分は労働時間にはあたりません。

このように出勤時刻と始業時刻が区別されていれば、労働時間管理の利便性を考えて、「始業前の時間を切り捨てる」といったタイムレコーダーの設定をしても問題がないと考えます。

終業時刻についても、業務の終了後、残業する場合は残業命令書または残業申請許可書を発行し、15分程度の休憩後に残業を開始する制度をつくり、終業時刻と残業開始時刻を明確にするといった方法が考えられます。

従業員が自主的に早出をする場合は、始業時刻までは一切業務はしないように厳重に注意をしなければなりません。
黙認をしていればタイムカードの時間が労働時間とみなされます。
早出や残業が必要なときは、事前の申請許可を徹底しなければなりません。

(例2)出勤時刻と始業時刻の区別が不明確な場合
コンビニなどのように常時お客がいて、出勤と同時に業務を開始なければならない職場では、上記コンビ二大手のように15分未満が切り捨てるタイムレコーダーの設定をすると労働時間が切り捨てられ、賃金や割増賃金の不払いが発生するおそれがあります。

以前、M社が労働基準監督署から「毎日の時間外労働を30分未満で切り捨てる処理は不適切だ」と是正勧告を受け、10万人の過去2年分の未払賃金を支給しました。

労働時間の適正な把握は大変難しい問題ですが、自社の現状を把握し、きちんとした取組みを行う必要があります。

(宮地 義孝/特定社会保険労務士)

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