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ハイム3姉妹やスカイ・フェレイラらを招き、キラキラとフレッシュなエレポップ作『カオスモシス』が、それでも“ロック”になる理由(Album Review)

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 リリースのたびに大きく変貌を遂げるバンドなので、所謂ベテランらしい風格とはかけ離れたところにいるイメージを持ってしまうのだが、レコード・デビューからは既に30年のキャリアを誇り、今回の『Chaosmosis』が通算11作目のオリジナル・アルバムとなるプライマル・スクリーム。本作は、カラフルで瑞々しいエレポップ、それもラヴ・ソング集となっているのだが、決してウキウキワクワクとした恋の歌にはならないところが、このバンドのロックなバランス感覚と言える。

 まず、サウンド・プロデュースには、バンドとビヨーン・イットリングがクレジットされている。ビヨーン・イットリングは、スウェーデンのバンドであるピーター・ビヨーン&ジョンのメンバーであり、プライマル・スクリームの『Beautiful Future』(2008年)にも参加していた。現代的なスウェディッシュ・ポップ・サウンドを担うキーマンといったところだが、シンセ・サウンドを大胆にフィーチャーした『Chaosmosis』では、バンドを若返らせるような勢いでキラキラとフレッシュなサウンドを持ち込んでいる。

 もうひとつ重要なのは、ハイム3姉妹、スカイ・フェレイラ、レイチェル・ゼルフィア(キャッツ・アイズ)といった、若い女性ヴォーカリストたちをゲストに招いている点だ。彼女たちがボビー・ギレスピーと繰り広げる絶妙なハーモニーやスイッチング・ヴォーカルは、アルバム全編を通してサウンドの色彩をグッと豊かにしている。エレポップやハウスの流れを汲む『Chaosmosis』の中で、何よりも重要なのは、彼女たちの参加を決断したバンドの舵取りと言えるかもしれない。

 オープニングの「Trippin’ On Your Love」こそ往年の「Loaded」を彷彿とさせる陶酔感たっぷりのアシッドなダンスロック作だが、以降は嫉妬心に苛まれたり、孤独感を抱えたり、憤りに震えたりと、恋心に身を焦がすエモーショナルなナンバーが並んでいる。このエモーションが、カラフルで華やいだポップ・サウンドの中でも、ギリギリでプライマル・スクリームのロック・ソングとして成立する根拠を成しているというわけだ。音の響きそのものはとても軽やかなのに、実はベテラン・バンドたる絶妙なバランス感覚が活かされた作風である。

 レイチェルとのデュエット曲となった、悲しげでフォーキーな「Private Wars」。そしてミニマル&サイケデリックなロック「Golden Rope」といったナンバーは、エレポップ色豊かな作風において、良いアクセントになっている。バンドはこの3月からUK~EU諸地域でのライヴ・ツアーに乗り出したところだが、この最新モードのプライマル・スクリームをいつか日本で観ることは出来るだろうか。楽しみに待っていたい。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『カオスモシス』
2016/03/16 RELEASE
SICX-39 2,592円(tax in.)

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