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2度目のリコールに2つの壁 名古屋市報酬引き上げ問題

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河村市長、名古屋市議会の解散請求準備

 名古屋市議の報酬の引き上げを巡り、引き上げに反対する河村たかし市長が議会の解散請求(リコール)に向けた署名活動の準備を始めた。実現すれば5年ぶり2度目となるが、今回は2つの壁が待ち受ける。河村市長は報酬の引き上げを実力阻止できるだろうか。

 名古屋市議の報酬は本来、年間1600万円だが、「議員のボランティア化」を持論とする河村市長が主導して2011年4月から800万円に半減させた。

自民、民主、公明3党は当時、「報酬の半減は当面の間の暫定措置」とする妥協案をのんで賛成票を投じたが、2015年4月の市議選で勢力を盛り返すと態度を急変。2月定例議会に年間報酬を約650万円増額する条例案を提出し、3月8日の本会議で可決させた。

河村市長は審議のやり直しを求める「再議」に付したが、全議席のうち3分の2を占める主要3党は再可決を実行。条例の可決が決定し、実際に4月1日から報酬が引き上げられた。

約2割の署名(今回は32万人の署名→住民投票へ)

対抗手段のなくなった河村市長は「奥の手」であるリコールの準備を始めた。リコールとは有権者が地方自治体の首長や議員の解職、議会の解散を請求できる権利のこと。自治体の規模によって異なるが、名古屋市の場合は約2割の署名が集まれば解散の是非を問う住民投票が行われる。

実際に河村氏は2011年に減税や議会改革などを巡って議会と激しく対立した際、リコールに向けた署名活動を仕掛けて成功。住民投票で議会解散を実現し、出直し市議選で自らの設立した「減税日本」から議員を大量当選させたという成功体験がある。

しかも、その後の地方自治法改正でリコールに必要な署名の数が引き下げられ、署名期間も1か月から2か月に延長された。2011年の時は36万余必要だったが、今回は32万余でいいため「余裕で集まる」(減税日本関係者)との声が漏れる。

一方で、今回の署名活動には前回とは違う2つの壁が立ちはだかる。一つは市民団体の「分裂」、もう一つは参院選による署名活動の「禁止期間」だ。

すでに河村氏の周辺や減税日本関係者は署名集めの先頭に立つ「請求代表者」の募集を始めているが、内部には市政の停滞を避けるため、条例の廃止を求める直接請求を目指すべきだとの声もある。

直接請求は有権者数の50分の1、3万6000人ほどの署名で可能だが、議会に提出しても主要3党の反対で認められない公算が大きい。だが、実際に報酬引き上げに反対する市民団体の一部はこの直接請求を目指して動き出しており、報酬引き上げ反対運動は分裂含みなのだ。度重なる減税日本議員の不祥事で市長の下を離れた支持者も少なくない。

2つ目の壁は夏に参院選が行われるため、署名集めを中断しなければならないことだ。

参院選任期満了の60日前からは署名活動が禁止になります。

名古屋市では前回市議選の1年後である4月13日から請求代表者の証明書の交付を申請することができ、約1週間で証明書が交付されると署名活動を開始できる。しかし、地方自治法の規定で参院選の任期満了の60日前からは署名活動が禁止のため、4月下旬から署名集めを始めても5月26日から7月に参院選が終わるまでは中断しなければならない。

中断期間があれば活動の熱は冷めるだろうし、ルールに疎い市民によって中断期間中も署名活動が継続される可能性がある。法律違反が発覚すれば関わった市民が告発されたり、署名の有効性に疑義が付されたりする可能性がある。こうしたことから報酬引き上げを決めた主要3党の関係者は「リコールの成立はないだろう」とみる。

一番の問題は、市民の関心が盛り上がるかどうかだ。5年前は「河村節」がさく裂し、多くの市民が河村流政治を支持してリコール成立、出直し選での減税日本躍進につながった。

今回は今のところ、市民の関心が当時ほど盛り上がっている様子はない。河村市長がこれからどう動くか。注目が高まりそうだ。

(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

PHOTO:DJ Quletstorm  https://www.flickr.com/photos/djquietstorm/

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